デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(15)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼翌朝、西の大海・洋上──。 ピカッ…ゴロゴロ…銀鱗航海士「起きてください、朝食の時間です」女騎士「ん…む…まだ暗いではないか」朱眼船長「この天気のせいだよ。少しは眠れたかい?」女騎士「雨ざらしで眠るのは初…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(14)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 朱眼船長「いいかい、お前たち!1日の配給はパン半切れに塩漬けの肉かニシンを1枚。ジャム小さじ1杯と干しぶどう3粒だ。腹が減るだろうが、耐えてくれ」海賊たち「「「ァーィ」」」ションボリ…朱眼船長「水の配給は…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(13)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼港町銀行、執務室──。 薪 パチッ パチッ黒エルフ カキカキ…ペラッ…カキカキ…黒エルフ「…ふう」 薪 パチッ パチッ黒エルフ「さてと、あと一息。メイドのチョコレートが恋しいわね」ズズッ黒エルフ カキカキ…ペラッ…カキカキ…黒エルフ「…」 — …

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(12)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼羚羊号、士官室──。朱眼船長「先にボートに乗れと言ったはずだよ」女騎士「忘れものをするところだったのだ」 ガサガサ女騎士「…あった!」朱眼船長「それは?」女騎士「精霊教会の『暦表』だ。新大陸に運ぶよう…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(11)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── シーサーペント『海の藻屑と消えろぉ!』グォォォオオオ!!朱眼船長「…今だ!撃てぇーッ!!」ドンッ…ドンッ… ドンドンドンッ…!!シーサーペント『ぐわぁ!?な、生意気な…』ザブーン!!女騎士「やつが頭を水に沈めたのだ!」 — Rootpor…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(10)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 剣衛兵「だいいち、我々は食事中で──」衛兵長「いいや、かまわん。魔族どもの話にうんざりしていたところだ。…いったいどうした?」盾衛兵「えっと…り、りり、りく…り、り…」女騎士「落ち着け」盾衛兵「と、と…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(9)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 女騎士「特別損失について説明するには、損益計算書(PL)の読み方から解説する必要があるのだが…」朱眼船長「ちょうどいいじゃないか。ぜひあたしらに教えてくれよ」女騎士「海賊が会計に興味を持つとは、少し意…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(8)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 朱眼船長「あんたらは客じゃない。仕事で船に乗ってるんだ。乗組員の1人として協力してもらわないと困る」衛兵長「お前らのような卑しい者に、なぜ手を貸さねばならん」朱眼船長「他の船をご覧よ。ときには士官…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(7)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼数日後、羚羊号、甲板──。ミーミー ミーミー黒エルフ「見れば見るほど綺麗な船ね」女騎士「…船べりで何を眺めているのだ?」黒エルフ「ほら、あれ。黒鳥号よ」女騎士「帝都商船が入手したそうだな」黒エルフ「ええ。あ…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(6)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 女騎士「それに安心しろ。先ほど牢で少し話してきたが、あの海賊たちの腕はどうやら確からしい。羚羊号に移送する段取りや、見張りの衛兵の選定も済ませてある。問題なく船を出せるだろう」黒エルフ「船を出せ…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(5)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ショタ王「その女騎士は、ぼくの知り合いだよ。いつも面白い話をする人だ」裁判官「そ、そうとは知らず失礼を…」ショタ王「引き裂き刑は海賊行為に対しては重すぎるし、女子供にこの刑を処すことはできない…。…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(4)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 朱眼船長「この石、お前には重すぎるな…」漁民の幼女「お姉ちゃん、痛くないの?」朱眼船長「あたしは石を投げられて当然のことをしてきた。けどな、できればお前みたいな子供には石よりもペンを握ってほしい」…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(3)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼夕刻、西岸港の広場──。かがり火 パチ…パチ… ワイワイ… ガヤガヤ…黒エルフ「すごい人出ね」女騎士「ここにいるのはみんな船乗りか。探せば腕のいい航海士も見つかりそうだ」黒エルフ「そうね。でも、まず用事を済ませ…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(2)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼西岸港、執務室──。財務大臣「…というわけだ。申し訳ないが、頼まれてくれるか?」家臣「もちろんです。大臣さまの命ならば、火の海にも涼しい顔で飛び込みましょう」財務大臣「ふふふ、じつに頼もしい。では…

女騎士、経理になる。/第7話「ブラック・スワン」(1)

魔国で囚われの身になった女騎士。オークから経理の知識を教わった彼女は、人間国の小さな銀行で働き始めるのだった──。 ────────── ▼最初から読む▼前回:第6話▼次回 ▽プロローグ▽第1話「フライド・コカトリス」▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」▽…

大人なら知っておきたい「世界史」を映画で学ぶ

// 学校の歴史の授業がつまらないのは、2つの理由がある。 第一に、事実の羅列に終始しがちなこと。その時代を生きた人々のドラマを感じることはできないし、「人間社会はどのような仕組みで動くのか」という体系的なメカニズムを学ぶこともできない。 第二…

「自由」は少子化の原因か?

// 日本においては、結婚が遅くなったことが少子化に大きな影響を与えている。そして、結婚が遅くなった理由は「ライフスタイルが多様化したから」と説明されることがある。 論理的には、この命題は正しい。 しかし、少子化を解決するうえでは何の役にも立た…

「8時間労働」は適切な長さか

// 社畜のみなさん、お疲れさま。 今日のあなたの労働時間は何時間だっただろう? ある人は定時退社をキメたことを誇るかもしれない。またある人は、長時間労働を自慢げに語るかもしれない。私たちは、勤勉は美徳だと教え込まれて育つ。身を削って働いていれ…

『ファインディング・ニモ』でお話作りを学ぶ

// 『ファインディング・ニモ』は、脚本の教科書に必ず登場する映画の1つだ。安心・安定のディズニー&ピクサー映画。現代的な「お話作り」の基本がすべて詰め込まれているような作品だ。映画としても文句なしで面白いので、お話を書くことが好きな人は観て…

イギリスのEU離脱とグレート・リセット願望

// 1944年7月、アメリカ・ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズに連合国の代表が集まり、第二次大戦後の世界について議論した。米ドルが国際的な基軸通貨に選ばれたのはこの時だ。当時、偉大なる経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、米ドルではなく、…

ニッチを束ねて市場を作れ/Amazonに勝つ方法

今さらながらクリス・アンダーソン『ロングテール』を読んだ。正直なところ、あまり目新しさは感じなかった。内容が陳腐だからではない、本書の予言がほぼ的中したからだ。小売業界にとってAmazonの登場がいかに革新的だったか。そして、業界をどのように変…

本日発売!『女騎士、経理になる。』ができるまで

// イラストレーターたちの間では、作業工程を公開しあう文化があるらしい。 アマチュア同士はもちろん、プロの「神絵師」がノウハウを伝授してくれる場合もある。こういう協力・共創の関係が、日本の豊かな二次元イラスト文化の源泉かもしれない。 mazikano…

デキる人はみんな使ってる思考の枠組み/ティンバーゲンの4つの「なぜ?」

// 議論をしていて、「あれ?」と感じることはないだろうか。 たとえば「A説があるから、B説は間違いだ」と主張する人がいる。ところが、A説のどのような点がB説よりも優れているのか説明しようとしないし、そもそもA説とB説が同時に成立する可能性も…

ごはんに「ありがとう」と言うと腐らない、だって?

// なぜか科学と道徳は混同されがちだ。 先日、Facebookで「ごはんにありがとうと言う実験」がシェアされてきた。密閉容器2つにごはんを入れて、片方には毎日「ありがとう」と声をかけたそうだ。声をかけなかったごはんはドロドロに腐敗したが、声をかけたご…

ハリウッドのアクション映画と脚本革命

私は映画の感想を書き溜める習慣がある。 その中から、今回は5本の映画の感想をブログに転載したい。 『北北西に進路を取れ』 『リーサル・ウェポン』 『ビバリーヒルズ・コップ』 『クリムゾンタイド』 『ボーン・スプレマシー』 以上の5本だ。 北北西に進…

トークイベントやります。『女騎士、経理になる。』新刊同時発売!

コミックス『女騎士、経理になる。』第2巻、 ノベルス『女騎士、経理になる。』第1巻、 2016年6月24日(金)、同時発売です! 発売にともない、一部書店さまでは購入特典がもらえるフェアを実施! さらにトークイベント&サイン会も開催します! ※なお、最新情…

『アナと雪の女王』と『ベイマックス』と神話

先日、『アナ雪』を観た。 びっくりするほど面白かった。 白状すれば、あまり期待していなかったのだ。というのも、飲み友達の野郎どもがディスりまくっていたからだ。本当、いい意味で裏切られた。まあ、あの男どもが『アナ雪』をディスりつつ『ベイマック…

「心の理論」と物語の創作術

// 面白いお話を作るには、「心の理論」に精通している必要があるのではないかと最近よく考える。生得的なものであれ、後天的なものであれ、他人の外観から内面を推測する能力に優れていないと、お話作りは難しい。そういう能力をただ持っているだけでなく、…

なぜ賃金は上がらない?/人手不足倒産の原因

// 世の中には、人手不足と低賃金が両立してしまう分野がある。介護や警備、海運などだ。 なぜ労働の供給が足りないのに価格(=賃金)が上がらないかといえば、労働市場は「自由な市場」ではなく、需要と供給による価格調整のメカニズムが働かないからだ。…

ヒトに「本能」はあるのか?

ヒトに「本能」はあるのだろうか? たとえば「浮気は男の本能だ、だから浮気は許される」と主張する人がいる。たしかに、男性のほうが女性よりも浮気性な傾向があることは実験により確かめられている[1]。 だが、この主張は2つの点で間違っている。 まず第一…