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ショタ王「その女騎士は、ぼくの知り合いだよ。いつも面白い話をする人だ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
裁判官「そ、そうとは知らず失礼を…」
ショタ王「引き裂き刑は海賊行為に対しては重すぎるし、女子供にこの刑を処すことはできない…。これは本当かな、書記官?」
色白青年「え?ええ、そのはずですが…」
ショタ王「それから、ぼくの12歳の誕生日のときの恩赦がまだだったはずだ。そうだよね、大臣?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
財務大臣「は?さようでございますが…」
裁判官「しかし、この海賊たちのやってきたことを考えれば、無罪放免というわけにはいきません!下々の者を納得させられません!」
ショタ王「いかにも」
ショタ王「そこで女騎士に尋ねたい。お前はこの海賊たちの命を助けたいと見えるが、理由(わけ)を聞かせろ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「はい…。この者たちは命乞いをすることも、狼狽えることもなく、処罰を受け入れようとしています。長年、海上で培った操船技術もあります。殺すには惜しい者たちだと思うのです」
ショタ王「腕のいい船乗りなら他にもいる。それだけでは海賊行為を許す理由にはならないよ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「おっしゃるとおりです。とはいえ、先ほど裁判官が言ったように、この者たちは農園の厳しい労働から逃げ出してきた奴隷です。海賊をする以外に、生きる道がなかったのではないでしょうか」
ショタ王「つまり、同情すべき点があると言いたいのだな。…だが、この者たちは魔族だ。逃げるのなら魔国に帰ればよかったのでは?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「海と魔国との間には、私たち人間国の広大な領土があります。身分を隠したままそこを通り抜けるのは、簡単ではないでしょう」
ショタ王「ふむ…」
女騎士「どんなに大人しく、しつけが行き届いた犬でも、追い詰められれば牙を剥きます。…どうか、ご寛大なお裁きを」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
ショタ王「言いたいことは分かった。だが、この海賊たちが犯した罪は消えないし、ましてや魔族だ。おいそれと恩赦を与えるわけにはいかない。裁判官の言うとおり、民が納得しない」
群衆(そうだそうだ!)
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
群衆(魔族に厳罰を!)
ショタ王「そこで、だ…。ここに集まった者たちに、ぼくから提案がある。1つ賭けをしないか?」
女騎士「賭け?」
ショタ王「もし本当に、この海賊たちが殺すには惜しい腕の持ち主だとしたら、きっと誰よりも速く船を走らせることができるだろう」
ショタ王「女騎士には、海賊たちを乗せた船でレースに参加することを許す。奴隷ではなく、正規の船員として雇うといいだろう」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
群衆 ザワザワ…
ショタ王「もちろん、船には見張りの者を同乗させる。海賊たちが逃亡しようとしたらその場で斬り伏せて、女騎士の会社はレースからリタイアさせる」
ショタ王「そして、もしも女騎士たちがレースに勝ち、真鱈岬にいちばん乗りしたら…。その時は、この者たちの実力を認めて恩赦を与える。どうだ?この賭けに乗るか?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
金髪船員「はーっ!面白そうじゃねえか!」
黒髪船員「その賭け乗ったぜ、王さま!」
衛兵長「こら!口を慎め!」
ショタ王「今回のレースは過去に例がなく、将来また開催される予定もない。一度きりの勝負だ。そして、海賊たちの命は、ここに集まったみんなの腕次第…。どうだろう、レースに余興を1つ添えることにならないか」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
金髪船員「いいぜ!」
黒髪船員「海賊なんかにゃ負けない!」
群衆 ワーッ!!
ショタ王「これでよいか?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「は、はい!異存ありません!」
財務大臣「ただし、もう1つ条件がある」ズイッ
ショタ王「…大臣?」
財務大臣「陛下、あの海賊たちは魔族です。もしも女騎士がレースに敗れたら、その会社の者たちにも相応の処罰が必要でしょう」
ショタ王「だけど…」
財務大臣「陛下!この国は魔族の国と戦争をしているのですよ?…もしも海賊たちがレースに勝てなかったら、女騎士はただ魔族に味方しただけの嘘つきということになります」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
ショタ王「ぼくは女騎士をそんなふうに思わないよ…」
財務大臣「陛下が思わなくても、民がそう思うのです」
財務大臣「もしもレースで負けたら、女騎士の会社を取り潰すべきでしょう。魔国のスパイだったとして」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
ショタ王「えっと…書記官?」
色白青年「残念ながら…民を納得させるには、そうせざるをえないでしょう」
女騎士「ふふふ、望むところだ。勝てばいいのだろう!」
ショタ王「そうか…」
ショタ王「…では、諸君の健闘を祈る!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
群衆(国王陛下ばんざーい!)
群衆(ばんざーい!)
黒エルフ「…何よ、これ」
司祭補「ダークエルフさん?」
黒エルフ「あたし、宿に帰る。つき合いきれないわ」
司祭補「お待ちに──」
黒エルフ「ついてこないで!!」タタッ
司祭補「…」
▼夕刻、西岸港の宿──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「…ううむ。海賊の身柄引き渡しの手続きに、思いのほか手間取ったのだ。こんな時間になってしまうとは」
かがり火 パチ…パチ…
女騎士「おや、あれは…?」
黒エルフ「…ま、待って!」
眼鏡航海士「いいえ、もうお話しすることはございません」
眼鏡航海士「何度も言わせないでくれますかな。私は海賊と同じ船に乗るつもりはありません」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
黒エルフ「あれは何かの間違いで…」
眼鏡航海士「間違い?国王陛下ご自身がおっしゃったのですよ」
黒エルフ「それは、えっと…」
眼鏡航海士「では失礼」スタスタ
黒エルフ「そんな…」ヘナヘナ
女騎士「どうした?地べたに座りこんで…尻が汚れるぞ?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
黒エルフ「あんたねえっ!」ドンッ
女騎士「わわっ!」
黒エルフ「自分が何したか分かってるの?あんたのせいで、もうめちゃくちゃよ!まともな船員は雇えない。レースで負ければ会社は潰される。海賊なんかのために…!!」
女騎士「悪かったと思っている。だが、あの場ではああするよりほかなかったのだ。正義が曲げられるところを放っておけない」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
黒エルフ「悪人を守るための正義なんて──!」
女騎士「相手が誰であろうと正義は正義だ」
黒エルフ「そんな正義、1Gの得にもならないわ!」
女騎士「損得ではない!」
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