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剣衛兵「だいいち、我々は食事中で──」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
衛兵長「いいや、かまわん。魔族どもの話にうんざりしていたところだ。…いったいどうした?」
盾衛兵「えっと…り、りり、りく…り、り…」
女騎士「落ち着け」
盾衛兵「と、とにかく、甲板に来てください!大変なんです!!」
ギッ…ギッ…がたんっ
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
衛兵長「なんだ?とくに変わりはないようだが?」
剣衛兵「…ようだが?」
ワイワイ…
ザワザワ…
槍衛兵「海賊どもは何を騒いでいるんだ?」
銀鱗航海士「月明かりで霧が青っぽく見えますね」
槍衛兵「強いて言えば、さっきよりも青さが濃くなったか…?」
ゾクッ
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「いいや、違う。…デュランダルを、いつになく重たく感じる…。よく見ろ、霧そのものが青く光っているのだ!」
朱眼船長「こいつはちょっとマズいね…」
盾衛兵「あれです!あれを見てください!」
衛兵長「黒鳥号に飛魚丸…。他の商船が浮かんでいるだけではないか」
盾衛兵「その向こうです!陸地が見えるでしょう?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
槍衛兵「西の大海の真ん中には、昇天諸島があると聞いているぜ。そこに到着したんじゃないのか?」
朱眼船長「いや、昇天諸島まであと1週間はかかるはず…」
銀鱗航海士「海図と私の計測が間違っていなければ…あんな場所に、陸はありません!」
朱眼船長「…取り舵いっぱい!全力でここから離れるぞ!!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
海賊たち「「「アーイ!!」」」
衛兵長「何をしている!真鱈岬にいちばん乗りせねば、お前たちの命はないのだぞ?」
剣衛兵「そうだ!勝手に進路を変えるとは──」
ピカッ ゴロゴロ…
槍衛兵「な、何だ?急に空が暗く…」
ザアーッ
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「うわ!雨まで降ってきたのだ」
盾衛兵「う…船が揺れて…うぷ…」
朱眼船長「チッ、間に合わないようだね…。砲門開け!大砲に弾を込めな!」
海賊たち「「「アーイ!!」」」
衛兵長「何を勝手な!武器の使用には我々の命令が必要だと言ったはずだ!」
剣衛兵「はずだ!」
朱眼船長「あんたらが命令を出さないから、あたしが命じるしかないんだよ!自分の仕事くらい、きちんとやっておくれ!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
槍衛兵「へへへ…。島が見えたくらいで、何を大騒ぎしてるんだ。進路を変えたばかりか、大砲の使用まで…」
衛兵長「もういい!お前たち海賊が反乱を起こしたと見なす!」チャッ
女騎士「わわっ!剣を収めてほしいのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
衛兵長「たとえ女騎士さんに止められても、もはや見過ごせません!さあ、今すぐ船尾楼(プープデッキ)から降りろ!あの島に上陸して、じっくりとお前たちに裁きを下してやる!」
朱眼船長「島だと?…あんたには、あれが島に見えるのか?」
衛兵長「は?」
女騎士「言われてみれば、あの島の稜線…妙に規則的だ。たとえるなら、魚の背びれのような…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
盾衛兵「し、しかも…動いています!!」
朱眼船長「そうさ。あれは島なんかじゃない…」
グォォォォオオオ!!
朱眼船長「…シーサーペントだよ」
女騎士「…!!」
衛兵長「なっ…」
ザアーッ
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
ピカッ ゴロゴロ…
シーサーペント『海鳥のうわさを聞いて来てみたが…まさか本当だったとは!!』
女騎士「ぐっ…なんて大きな声だ…耳がキーンとする」
衛兵長「あ…あ…」
盾衛兵「し、しっかりしてください!」
槍衛兵「いやだーっ!死にたくなーい!!」
シーサーペント『これほどたくさんの人間を一度に相手にするのは初めてだが…まとめて魚のエサにしてくれる』
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
カーン…カーン…
ワーワー
ギャーギャー
女騎士「鐘がしきりに打ち鳴らされている。あれは戦闘準備の鐘か…?」
朱眼船長「他の船もようやく事態が飲み込めたようだね」
盾衛兵「あっ!シーサーペントが飛魚丸に向かっていきます!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「あの船もかなりの数の大砲を積んでいるはずだが…」
ドンッ…ドンドンッ…!!
朱眼船長「ダメだ、点火が早すぎるね。あの射程じゃダメージが入らない」
シーサーペント『がはは!くすぐったいぞ、人間ども!』
▼飛魚丸、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
船長「…次弾、装填!早く!」
ワーワー!!
ヤーヤー!!
船長「撃て!号令を待たなくていい、撃ちまくれ!」
金髪船員「くそっ!こんなとこで…こんなとこで…」
シーサーペント グォォォオオ!!
金髪船員「こんな──」
ズシンッ!!
グシャァ!!
▼羚羊号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「ああっ、飛魚丸が!」
盾衛兵「あの大きさのガレオン船が、一瞬で海の底に…」
衛兵長「沈むというより、引きずり込まれた…?」
剣衛兵「はい…私にもそう見えました…」ボウゼン
槍衛兵「ひぃ~!もう嫌だぁ~」
朱眼船長「お前たち、覚悟はいいね!」
海賊たち「「「アーイ!」」」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「もちろんです!たとえ魔国を敵に回しても、船長についていきます!」
朱眼船長「それでこそ『死者の銃爪(デッドマンズ・トリガー)』だ!あの海蛇野郎に、あたしらの力を見せてやりな!」
海賊たち オォー!!
衛兵長「…た、戦うのか?あれと?」
盾衛兵「みなさんは魔族ですよね?あのシーサーペントと同じ…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「同じだと?バカを言っちゃいけない。コボルトにリザードマン、ゴブリン…。あたしらは魔族のなかでも卑しい身分の者だ。対する向こうは、畏れ多くもドラゴンさまだ。あたしらを同じ魔族だなんて思っちゃいないよ」
女騎士「では…?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「ああ。人間側に寝返った魔族として、ためらわずに攻撃してくるだろう。この船もろとも海に沈めようとするはずだ」
剣衛兵「くそっ、なんてことだ」
槍衛兵「うう…。西岸港に残れば、こんなことには…」
盾衛兵「見てください!今度は黒鳥号に向かっていきます!」
▼銀鮭号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
船長「帆から風を抜け!速度を落として照準を定めるんだ!」
航海士「やつが黒鳥号に向かっている今がチャンスだ!攻撃に備えろ!!」
船長「おい、そこ!早く転桁索(ブレース)を緩めろ!」
黒髪船員「うるせえ!こっちだって必死でやってるよ!」グググ…
黒髪船員「くそっ…風が強くて…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
ポタ…ポタ…
黒髪船員「なんだ?急に雨風が弱まったような…」
シーサーペント『ふふふ、私が雨風を遮っているからな』
黒髪船員「そ、そんな…。黒鳥号に向かったはずじゃ…」
船長「撃て撃てーッ!」
砲手「だ、ダメです!火薬が湿気っていて…」
黒髪船員「はは…ははは…。これは夢だ…。悪い夢を見ているんだ。だって、俺は…このレースに勝つはずで──」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
バキッ!!
メキメキッ!!
グシャァ!!
▼羚羊号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
盾衛兵「…ぎ、銀鮭号も沈みました」
衛兵長「というか、今度はこっちに向かってきていないか!?」
剣衛兵「はい!向かってきています!!」
朱眼船長「まっすぐに突っ込んでくるようだね…」
槍衛兵「ううっ…うっ…うっ…」
女騎士「かくなるうえは…」シャキン!!
女騎士「…マストの上から飛びかかれば、やつの頭に一撃をお見舞いできるはずだ!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「待ちな!マストに登っている時間はなさそうだ」
女騎士「だが──」
朱眼船長「衝撃でふり落とされないよう、どこかに掴まってるんだね。…お前たち、準備はいいね?」
海賊たち「「「アーイ!!」」」
朱眼船長「焦っちゃいけないよ。充分に引きつけてから砲弾を叩き込むんだ…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
シーサーペント『ほう?コボルトが乗っているのか。魔法も使えぬくせに魔族を名乗る者どもが…』
朱眼船長「まだだ…まただよ…」
シーサーペント『魔法の代わりに人間どもの武器に頼るとは…魔族の面汚しめ!』
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