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女騎士「特別損失について説明するには、損益計算書(PL)の読み方から解説する必要があるのだが…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「ちょうどいいじゃないか。ぜひあたしらに教えてくれよ」
女騎士「海賊が会計に興味を持つとは、少し意外なのだ」
朱眼船長「なに言ってんだ。あたしらは利益追求集団だよ?」
女騎士「複式簿記のPLを大雑把に書けばこうなる」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「これなら私も見たことがあります。収益を貸方に、費用を借方に並べる書き方ですね」
女騎士「うむ。基本なのだ」
衛兵長「何が複式簿記だ。魔族の知識など」
剣衛兵「知識など…」 pic.twitter.com/NfnEZOEBTc
女騎士「は、話を続けるぞ…。じつは大きな企業では、この形ではPLを作らないのだ。読みにくいからな」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「読みにくい?」
女騎士「売上だけが収益ではないし、仕入だけが費用ではない。収益や費用には色々な種類がある。それを詳しく表示しようとすると、この形では限界があるのだ」
女騎士「売上とは、本業から得た収益のことだ。たとえば銀行預金に利子が付いたとして、普通の企業ではそれを売上には含めない」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「本業で得た収益ではないからですね」
女騎士「そうだ。だから受取利息は『営業外収益』として計上する」 pic.twitter.com/gUmJ3SlQZC
女騎士「そして、費用のほうはもっと複雑だ。仕入のように『商材の準備にかかった費用』のことを原価と呼ぶが…。原価のほかにも、費用にはこれだけの種類がある」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「う…目がチカチカします…」
女騎士「さらに『利益』にも種類がある」 pic.twitter.com/WzOBmQV9dR
衛兵長「利益に種類があるだと?収益から費用を引けば、それが利益だろう」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「ひとことで『利益』と言っても、少なくとも5種類あるのだ。収益と費用にそれぞれ種類があるのだから、どの収益を足して、どの費用を引くかによって、計算結果の利益の金額も変わる」
衛兵長「なんと非効率な…」
女騎士「非効率とも言い切れんぞ。5種類の『利益』の特徴を知れば、企業の経営状態をより正確に知ることができるようになるのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
槍衛兵「そうは言っても、このごちゃごちゃした表から何が分かるっていうんだ?へへ…」
女騎士「そこで、だ。大きな企業では、数字を縦一列に並べたPLを作るのだ」
ぴらっ
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「たとえばこれは先月の港街貿易株式会社のPLだ。1ヶ月分の収益だ」
銀鱗航海士「読みやすくなるどころか…数字だらけで、ますます目がチカチカします」
女騎士「なに、そんなに難しくはない。私でも理解できるほどだ」ドヤッ pic.twitter.com/iCrzCzAGQj
女騎士「まずは売上総利益から説明しよう。粗利と呼ぶこともある。売上高から、売上原価を引いた金額だ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「売上高ってのは、本業から得た収益のことだったね」
女騎士「うむ」
銀鱗航海士「そして原価は、商材の準備に要した費用ですね」 pic.twitter.com/gWGAzNXcQk
女騎士「売上総利益を──とくに、その利益率を見れば、『どれほど儲かる商材を扱っているのか』が分かる。たとえば娯楽産業は、この率が大きくなりやすい。詩集を作るのにそれほど原価はかからないが、ベストセラーになれば莫大な売上をもたらす」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「逆にこの利益率が低い産業もあんのかい」
女騎士「そうだな…。たとえば建設業では、売上総利益率が低くなりがちだと聞いている。建物は顧客ごとに注文されるから、大量生産によるコストダウンが難しい。さらに、たくさんの人手が必要だ。いわゆる『労働集約的な産業』だから売上総利益率が伸びにくい…と、ダークエルフは言っていた」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「売上総利益から、販売費および一般管理費を引くと、営業利益が計算できる。これは企業の『本業』が儲かっているかどうかを示した数字だ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「販売費および一般管理費ってのは、具体的には何のことだ?」 pic.twitter.com/CsH2CAp20j
女騎士「たとえば広告宣伝費や光熱費、従業員の給料のように、『商材の準備には直接関係ない』けれど『売上を出すには必要不可欠』な出費がある。そういう費用のことだ。略して『販管費』と呼ぶこともあるぞ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「企業の経営状態を計るうえで、営業利益はとくに重要だ…とダークエルフは言っていたのだ。最終的な当期純利益が赤字でも、営業利益が黒字なら、将来的に業績が回復する可能性が高いそうだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「突発的な事故で赤字が出ても、本業が儲かっていれば平気ってわけだ」
女騎士「すでに述べたとおり、受取利息は営業外収益だ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「お金を借りていれば、逆に利子を支払いますよね?」
女騎士「支払利息だな。そちらは営業外費用だ。営業利益に、営業外収益を足して営業外費用を引いたものを、経常利益と呼ぶ」 pic.twitter.com/wzNUc0LLTV
女騎士「経常利益は、経営の安定感を知るための指標だ。本業以外の部分も含めて、その企業が安定して利益を出せているかどうかが分かる」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「本業以外の部分まで含めた、総合的な実力が分かるわけだ」
女騎士「うむ。この経常利益をもっとも重要視する経営者も多いと聞いている」
銀鱗航海士「そして経常利益に、突発的な損益まで加味すると、『税引前当期純利益』になるんですね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「ここでようやく、『特別損失』と『特別利益』の話ができるのだ。普通の企業なら固定資産の売買はそれほど頻繁ではない…」 pic.twitter.com/EfxTc8aqDs
女騎士「…だから固定資産売却益は『特別利益』に計上する。さきほど説明したとおりだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「逆に、資産を売却して損失が出た場合は…」
女騎士「その時は固定資産売却損を計上する。こちらは『特別損失』になる」
銀鱗航海士「では、ダークエルフさんの『特損を出すな』というセリフは…?」
女騎士「たとえば災害や事故で突発的な損失が生じた場合も、特別損失を計上するのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「つまり、この船が沈んだら…」
女騎士「…港街貿易株式会社では、特損を計上することになる。ダークエルフなりに、航海の無事を祈ると言いたかったのだろう」
銀鱗航海士「なるほど…」
女騎士「税引前当期純利益をもとに色々な計算をすると、法人税の金額が決まる」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「で、法人税を引いたあとに残った金額が…」
女騎士「…当期純利益だ。その会社の、その期間における純利益ということになる」 pic.twitter.com/fFH7Xx81lS
女騎士「法人税は、税金の仕組みとしてはわりと先進的なもののようだ。じつを言えば、人間国に法人税はない」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「では、このPLの数字は…?」
女騎士「魔国の制度に基づいて、試しに計算してみたのだ。私は魔国で複式簿記を学んだからな」
朱眼船長「しかし、法人税がないとなると…」
朱眼船長「…人間国では、いったいどうやって企業から税金を取っているんだ?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
女騎士「資産に対する課税だな。建物の窓の数に対する『窓税』や、間口の広さに対する『間口税』、それに土地への課税などだ。複式簿記のない人間国では、税引前当期純利益を計算できず、法人税を求めることもできない」
女騎士「ちなみに、こういう資産に対する課税は、たいていの場合は『販売費および一般管理費』になるぞ。『租税公課』という勘定科目を使うのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
銀鱗航海士「なるほど…」
朱眼船長「ともあれ、話の要点は『利益には5種類ある』ってことだな」
女騎士「うむ。当期純利益だけが利益ではないのだ」
女騎士「ニュースやうわさで、ある企業が赤字だと聞くことがあるだろう。そういうときは、どの部分の『利益』で赤字なのかに注目するといい」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「営業利益が黒字なら、当期純利益が赤字でも大丈夫な場合が多い…って話だったな」
銀鱗航海士「では、もしも営業利益まで大赤字だったら…」
女騎士「その場合は、事業内容そのものを見直したほうがいいかもしれん」
— Rootport (@rootport) 2016年9月4日
朱眼船長「本業が儲からなくなっているということだもんねえ…」
コンコン…ガチャッ
盾衛兵「み、みなさん!大変です!!」
槍衛兵「なんだぁ?お前は当直中のはずだろう。持ち場を離れるのは許さないぞ。へへへ…」
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