2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧
超知能AIの暴走リスク このブログではAIの歴史と現在、そして近未来について考察してきました。 今回の記事では、もう少し先の未来――AIが人間と同等かそれ以上の知能を身に着けて、「超知能」となった時代の話をしましょう。 超知能AIの暴走は、サイ…
ジョン・ヘンリーの教訓 19世紀の都市伝説に「ジョン・ヘンリー」という人物がいます[1]。 彼は屈強な肉体労働者で、ハンマーを振るって岩に穴を開ける達人でした。ところが蒸気機関で動くドリルの登場により、彼は失業の危機に瀕します。そこで彼は、人間…
インターネット時代 ネットスケープが株式上場し、『Windows 95』が発売されてから、約30年が経ちました。この30年間は、まだ歴史を語れる状況ではないと思います。時代が最近すぎて、何が重要なできごとなのか取捨選択できないからです。 たとえば1999…
徒歩よりも遅かった ローマ帝国時代後期、ローマ支配下のエジプトの法的文書には、暦日と在位中の皇帝の名前が記載されていました。当時はローマで新しい皇帝が即位しても、それがエジプトに伝わって法的文書に反映されるまでにタイムラグがありました。この…
コンピューターの商業化 時代は少し前後します。1946年3月31日、ジョン・プレスパー・エッカートとジョン・W・モークリーはムーア・スクールを退職しました[45]。知的財産権の放棄を迫られたからです。彼らの経歴なら、他の大学やIBMなど再就職先に…
どこで「現代」を線引きするか 前回までで、歴史紹介を終えてもいいと考えていました。 18世紀後半から始まった産業革命により、人類文明は「発明が発明を呼ぶ」という状態になりました。この発明の連鎖は、現在でも終わっていません。数万年〜数百万年とい…
出遅れた国々:インドの場合 京都大学の文化人類学者・梅棹忠夫は、1955年5月~11月にインド・パキスタン・アフガニスタンの調査旅行を行いました。このときに目撃した凄まじい貧困の様子を、彼は『文明の生態史観』のなかで次のように報告しています。…
鉄道はすべてを変えた 1836年10月、チャールズ・ダーウィンが5年におよぶ世界一周の旅から帰宅したとき、屋敷で彼を出迎える人はいませんでした。時刻はすでに深夜で、家族も使用人も寝静まっていたのです[1]。この時のダーウィンの移動手段は主に馬で…
⑤チャールズ・ダーウィン『種の起源』(1859年) 科学と宗教が未分化だった時代 17世紀、ニュートンもハレーも自分たちが(現代的な意味での)「科学」を研究しているという自覚はありませんでした。なぜなら、当時は科学と他の諸分野が分離していなかっ…
④サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い』(1740年) 死刑が大衆の娯楽だった時代 ヨーロッパの歴史における大きな謎の1つは、身体刑の消滅です[22]。 前近代の世界では、ヨーロッパに限らず世界のどこでも残虐な刑罰が当たり前に存…
アイザック・ニュートン『プリンキピア』(1687年) 回っているのは地球か、太陽か 印刷技術がなければ、「科学革命」も違った姿になっていたことでしょう。これは17世紀のヨーロッパで生じた科学知識の急速な発展のことです。中でも天動説から地動説へ…
印刷が世界を変えた 「世界を変えた印刷物」のリストを作るのは難題です。人文学が専門ではない私ですら、思いつく限りに書名を上げていけば数百~数千冊のリストになってしまうでしょう。私の本業である物語創作の観点でいえば、シェイクスピアやディケンズ…
国王から貧民まで 活版印刷は、まさしく「世界を変えた発明」でした。 火薬や羅針盤など、国々の趨勢を決め、歴史を変えた発明品はたくさんあります。しかし、戦場や航海に出ない人々がその威力を味わうことは難しかったでしょう。一方、印刷物は国王から貧…
⾒返りが労働と格差、そして戦争だとしたら、なぜ⼈々は狩猟採集から農業に乗り換えてしまったのだろう ⼤ヒットしたマンガ『ゴールデン・カムイ』(集英社)の功績は、(マンガとしての誇張はあるとはいえ)アイヌ⺠族を「豊かな⽂化を持つ⼈々」として描き…
⽂字の不思議 私は⼈の顔を覚えるのが苦⼿です。⼦供の頃からクラスメイトの名前と顔が⼀致するまでに時間がかかりました。⼤⼈になった今でも変わりません。初対⾯の編集者とたっぷり2時間の打ち合わせをして、帰りの電⾞の中ではすでにどんな顔だったか思…