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朱眼船長「いいかい、お前たち!1日の配給はパン半切れに塩漬けの肉かニシンを1枚。ジャム小さじ1杯と干しぶどう3粒だ。腹が減るだろうが、耐えてくれ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
海賊たち「「「ァーィ」」」ションボリ…
朱眼船長「水の配給は1日2回。1回にコップ半分だ。いいね?」
海賊たち「「「ァーィ」」」
銀鱗航海士「私たちリザードマンは乾きに強いので、もう少し水を減らしても──」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「それこそ水くさい話ってもんだ。ここは平等に行こう、余計な諍いを避けるためにね。…雨が上がったら、魚が獲れるか試してみよう。生魚を食べれば、多少は壊血病の予防になる」
女騎士「生魚だと?…うげ」
朱眼船長「そんな顔をするな。とくに女騎士さんと衛兵さんがたは率先して食べたほうがいい。どうやら人間は、あたしらコボルトよりも壊血病になりやすいらしいからね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
片耳ゴブリン「生魚、慣れればオイシイです。オススメです。はらわたの苦さがたまらんです!」キラキラ
女騎士「う、ううむ…」
元・槍衛兵「チッ、汲み出しても次から次に波しぶきが吹き込んでくる…。ほんとついてねえ…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・盾衛兵「まさかシーサーペントと出くわすなんて…」
女騎士「たしか、海鳥のウワサを聞いて来たと言っていたな?」
銀鱗航海士「シーサーペントは海の生き物の言葉がある程度分かるようですね」
衛兵長「シーサーペントは北限の海で捕鯨船を襲っていると聞いていたのに…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・剣衛兵「のに…」
女騎士「西岸港に船が集まって、一斉に新大陸を目指そうとしていた…。その様子を海鳥たちがウワサしあっていて、シーサーペントまで伝わってしまったのだろう」
元・槍衛兵「ついてねえ…」
衛兵長「しかし、女騎士さんはやつの片眼を潰したのでしょう?軍艦を送って、もう片方の眼を潰すことができれば…やつを駆除できるのでは!?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「いいや。海の魔族は、大抵、高い再生能力を持っているのだ」
朱眼船長「目玉の1つくらい、1ヶ月もあれば元通りだろうね」
衛兵長「そんな…」
朱眼船長「両眼を潰されるような危険を、やつが冒すとは思えない。眼が再生するまでは軍艦の前には現れないだろうね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・盾衛兵「女騎士さんでも片眼を潰すのが精一杯で、倒すことができないなんて…」
女騎士「…じつは、それについてずっと考えていた。私はあそこで、やつを倒せるはずだった」
元・槍衛兵「…はずだった?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「どういうことでしょう?」
元・剣衛兵「…でしょう?」
女騎士「あのとき私は、雷属性の全力攻撃をクリティカル・ヒットさせた。並みの水属性の魔族なら、灰になってもおかしくないのだ」
朱眼船長「にもかかわらず、やつは元気に逃げていったわけだ」
女騎士「さしてダメージを受けた様子もなかった。あと一歩で深海に引きずり込まれるところだったのだ。…で、考えた結果、分かった」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「やつは水属性ではなかった…?」
朱眼船長「バカ言っちゃいけないよ。どう見ても水棲の魔族だっただろう」
女騎士「うむ、やつが水属性なのは間違いない」
女騎士「分かったのは、やつの使う魔法だ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・槍衛兵「へへへ…。嵐を呼べるんでしょう?このひどい揺れも、もとはといえばやつのせいだ…うぷ…」
女騎士「それだけではない。やつが出現する直前、青っぽく光る霧が出ていただろう?あの霧は、おそらく、やつが使えるもう1つの魔法なのだ」
女騎士「あの霧には、あらゆるバフ・デバフ効果と属性効果を無効化する魔力が備わっている…。私はそう睨んでいる」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「なるほど…。そう考えれば辻褄があうね」
銀鱗航海士「どういうことですか?」
女騎士「船長は気づいていたようだな。…やつの攻撃が単調すぎると思わなかったか?」
衛兵長「単調と言ったって…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・剣衛兵「そんなことを考える余裕はありませんでしたよ」
女騎士「やつの攻撃手段は、物理的なものだけだった。体当たり、のしかかり、噛みつきなんかだ」
朱眼船長「あのレベルのドラゴンにしては、攻撃手段が少なすぎるんだよ」
元・盾衛兵「言われてみれば…」
女騎士「やつは攻撃手段が少ないのではない。余計な攻撃手段が、そもそも必要ないのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
銀鱗航海士「あらゆる効果を無効化できるからですね」
女騎士「うむ。水属性の魔族は、飛び抜けてHPが高い。あの魔法の霧で小細工を封じれば、あとは物理攻撃だけで相手を圧殺できる」
衛兵長「一筋縄ではいかない相手なのですね。まさかシーサーペントがそれほど手強いとは…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・剣衛兵「とは…」
元・槍衛兵「へへっ…だ、だけど、そんな敵…」
元・盾衛兵「…いったい、どうやって倒せばいいんですか!?」
女騎士「…」フルフル
元・盾衛兵「そんな…」
銀鱗航海士「分からないことはまだあります。あのシーサーペント、どうして黒鳥号を襲わなかったのでしょう?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「魔族の気まぐれなど分かるものか」
朱眼船長「おっと、まるで魔族が考える頭を持たないみたいな言い方じゃないか。あたしらは行き当たりばったりで行動しているわけじゃないよ」
元・盾衛兵「それは僕も気になっていました。飛魚丸を沈めたあと、やつは一度は黒鳥号に向かっていたんです」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「大きな船だ。目に付いたのだろうな」
元・盾衛兵「ところが攻撃しようと鎌首をもたげたところで、やつはフッと向きを変えました」
朱眼船長「で、銀鮭号を沈めに向かった、と」
衛兵長「やはり行き当たりばったりではないか!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・剣衛兵「…ないか!」
女騎士「うーむ」
銀鱗航海士「そうとも限りませんよ。黒鳥号を攻撃できない理由があったのかも」
朱眼船長「あるいは、銀鮭号を率先して沈めるべき理由がね」
元・槍衛兵「へへっ…ただの気まぐれかもしれないぜ…」
女騎士「ダメだ。どれだけ考えても謎は深まるばかりなのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
元・盾衛兵「ですね…」
女騎士「せめて、もう一度やつに会うことができれば、問いただせるのだが…」
一同「「「「冗談じゃない!!」」」」
▼西岸港、仮設教会──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
司祭補「…」
ガチャ
侍女「司祭補さま、まだ起きておいでだったのですか?」
司祭補「ええ、海を見ていました」
侍女「明日の朝、帝都へと出発します。もうお休みになられては…」
司祭補「うふふ、ありがとう。けれど、目が冴えてしまって眠れそうにないのです」
侍女「…やはり、女騎士さんのことが気がかりなのですね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
司祭補「北限の海からシーサーペントが出なくなったという知らせを聞いてしまったせいですわ。レースが始まった後になって知らせが届くなんて…」
侍女「北限の海からこの町まで数日かかります。知らせが行き違いになってしまったのですね」
侍女「ですが、シーサーペントが姿を消したのなら、喜んでもいいはずでは?女騎士さんたちの航路に出現するとはかぎりません」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
司祭補「おっしゃるとおりですわ。…ここから見る海は平穏そのもの。悪い想像をするのはやめにします」
侍女「司祭補さまご自身のためにも、そのほうがよろしいかと…」
司祭補「きっと、この月明かりのせいですわ。いつもより月を大きく感じます。この冷たい光のせいで、悪い想像が膨らんでしまったのです」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
侍女「明日は満月です。この明るさも、目が冴えてしまう原因のお1つでしょう」
司祭補「この光の下で、女騎士さんは今ごろどうしているのかしら──」
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