デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

あの人がいつも間違ったことを言う理由。/ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』感想

まずは簡単な算数の問題を1つ。 チョコレートとガムは合わせて110円です。 チョコレートはガムよりも100円高いです。 ガムの値段はいくらでしょう? どうだろう、すぐに正解が分かっただろうか? 行動経済学者ダニエル・カーネマンは、これとよく似た問題を…

低所得化や教育費の高騰は少子化をもたらすか?/書籍『失敗すれば即終了』の補足(2)

「教育費の高騰は、少子化の原因ではない」 「若者の低所得化は、少子化の原因ではない」 私が黙らせたいのは、こういうアホなことを言う人々だ。 以前の記事で説明したとおり、少子化のメカニズムは上記の図1枚に要約できる。ヒトは親からの教育的投資が無…

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足

1.2人──。 これは2050年における老人と現役世代の比率だ。現在は老人1人に対して現役世代2.4人だが、30年少々でこれが半減してしまう[*1]。ホモ・サピエンスには20万年以上の歴史があるが、これほど苛烈な高齢化社会が出現したことはない。まるで〝サイエン…

政治ができるのはヒマなやつだけ/ブラック企業がのさばる理由

日本は国際的に見て失業率が低く[*1]、また平均的な労働時間は減少傾向にある[*2]。つまり日本の労働問題のキモは、他国のような失業率の高さではなく、ごく一部に劣悪な労働環境が存在することだ。一部の職場では「過労死」と「賃金の低下」という、一見す…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(8)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回:第7話────────── ▼銀行家の邸宅、馬具置き場──。 パタパタ…バタンッ 幼メイド「勇者さまぁ~!たいへんですぅ~!」 勇者「そんなに慌てて…何があったの?」 幼メイド「衛兵さんたちが、いーっぱい来たのです!たぶん、勇者…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(7)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 黒エルフ「…こっそり、見る…?」ブツブツ 司祭補「あらぁ、わたしには見せてくれませんの?」 女騎士「わ、悪く思わないで欲しいのだ…」 司祭補「わたしに読まれたら困るようなことが書いてあるのかしらぁ~?」 …

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(6)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 女騎士「…それは、儲けが出ないからか?」 黒エルフ「いいえ。そもそも、そんな額の現金が手元に無いからよ。あたしたち銀行のカネの大半は、取引先に貸し付けているわ」 司祭補「もしも航海に必要なお金を集め…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(5)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼西岸港──。 オーイ、オーイ… 海軍元帥「今回の航海も成功のようですね」 秘書「全隻が無事に戻ってきました。どの船も新大陸の商品を満載にしていますよ」 海軍元帥「たとえば、カカオのような?」 秘書「はい。カカ…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(4)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼翌日、銀行家の邸宅──。 銀行家「昨夜は『レモネード屋』からの利子回収を手伝ってくださりありがとうございました」 司祭補「いえいえ、できることをしたまでですわ♪」 黒エルフ「…もっとも、利子よりもやっ…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(3)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── ▼半刻後──。 司祭補「…お話は分かりました。要するに、この町の不景気がいちばんの問題なのですわね」 女騎士「そうだ!景気さえ良くなれば何の問題も起きなかったのだ!」 黒エルフ「簡単に言ってくれるわね。…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(2)

──────────▼最初から読む▼前回▼次回────────── 司祭補「この町を離れることになったのも、精霊のお導きかもしれません。引っ越した先でのご成功をお祈りいたしますわ」 毛皮商「ありがとうございます!では、家族が待っていますので…」 司祭補「ええ、お気を…

女騎士、経理になる。/第6話「エクイティ」(1)

魔国で囚われの身になった女騎士。オークから経理の知識を教わった彼女は、人間国の小さな銀行で働き始めるのだった──。 ────────── ▼最初から読む▼前回:第5話▼次回 ▽プロローグ▽第1話「フライド・コカトリス」▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」▽…

「日本人は働き過ぎ」って本当? 調べてみた。

// 豊かさとは何か? 科学ジャーナリストのマット・リドレーは、豊かさとはより単純な生産活動で、より多様な消費活動ができるようになることだと定義した[*1]。「よりわずかな生産活動」と言い換えてもいいだろう。旧石器時代の人々は、森を一日中歩き回ら…

それでも、夢を追うしかない。/2016年の挨拶とブログ書籍化のお知らせ

一昔前は、夢を追うか、安定した職業に就くかの二者択一が成り立った。らしい。 「らしい」と言うのは、1985年生まれの私にそんな選択肢は無かったからだ。バブル崩壊とともに終身雇用は幻想になり、いい大学を出ていい企業に入っても将来が安泰ではなくなっ…