デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

感想

貧乏なやつほど(自分よりちょっとだけ下の)貧乏人を叩く/『子どもの貧困連鎖』感想

子供たちの健気さに何度も涙腺がゆるんだ。子供は親を選べない。どんな不運に見舞われても、それ以上“下”へと落ちることを拒み、這い上がろうとする――それは強さだ。高潔さだ。恵まれた環境で安穏と育った人には、かんたんには身につかないものだ。 ルポ 子…

読者と作者のマッチング/ラノベ作家休憩所『中性小説。』感想

先週末のコミックマーケット82で入手した『中性小説。』という同人誌が面白い。 中堅ライトノベル作家たちによる短編小説集だ。いつもなら書かせてもらえないようなお話を、編集者の目の届かない同人誌で思いっきり自由に書く。それがこのアンソロジーのテー…

いま武蔵野美術大学の美術館が熱い!/環境ポスター展示にみる世界の自然観

先日、今敏監督の回顧展を見るために武蔵野美術大学の美術館へ行ってきた。監督の原点を知ることができたし、会場限定のグッズも手に入れることができて、とても満足度の高い展覧会だった。こちらについての解説・感想は、私よりも適任の方がどなたか書いて…

経済発展と環境保護は両立できるのか?/葛西臨海水族園の感想

私たちが歴史から学ぶべき教訓は、「ヒトはがまんができない」ということだ。 一度おいしいものを食べてしまったら、もう不味いものは食べられない。暖かなベッドを覚えたら、もう洞窟では眠れない。私たちは欲求に忠実で、生活水準を下げられない生き物だ。…

映画『おおかみこどもの雨と雪』の母性信仰/子育ては1人では出来ません

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); ※この記事は、書かれた当時のブログ記事の流行にのっとり、意図的に「毒舌」な書き方をしています。苦手な方はお読みいただかないことをおすすめします。 おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)作者: 細田…

10万年の人類史に「取引」の真髄を学ぶ/マット・リドレー『繁栄』感想

チンパンジーはヒトと同じように、仲間と食べ物を分けあうことができるし、協力しあうこともできるらしい。「君のシラミを取ってあげるから、ぼくのシラミも取ってくれないか?」……――しかし、「交換」はできない。ヒトなら当たり前にできる「ぼくのこれをあ…

ぼくらはヒーローになりたいわけじゃない/『花埋み』感想

自分に子供ができたらどんな名前をつけるか……よく妄想する。 (もしも娘ができたら「子」のつく名前がいいよなー。あ、でも、ありきたりなのはやっぱりダメ。かといって薫子とか桜子みたいな四文字系は私の娘にしては雅やかすぎるかも。たとえば姉妹で一つの…

女ひとりのジハード/映画『鉄の女 マーガレット・サッチャー』感想

"――I cannot die washing up a teacup" 映画『鉄の女 マーガレット・サッチャー』が面白かった。 みどころは何よりもメリル・ストリープのそっくりさんぶり! 年末モノマネ紅白なんか目じゃないぐらい、みごとに化けていた。リアルタイムで彼女の映像を見た…

Facebookは共感装置の夢を見るか?/いま読みかえすフィリップ.K.ディック

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))作者: フィリップ・K・ディック,カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン),浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1977/03/01メディア: 文庫購入: 70人 クリック: 769回この商品を含むブログ (422…

混迷の時代に「物語」が必要な理由/「日常系」の終わりと「神話」の始まり

友人のイラストレーター・オリコ嬢から熱烈にオススメされた一冊。ニーナとうさぎと魔法の戦車 (集英社スーパーダッシュ文庫)作者: 兎月竜之介,BUNBUN出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/09/25メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 104回この商品を含…

リアルとリアリティの間/三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』感想

ものすごく面白いぞ、というウワサは以前から聞いていたけれど、つい手を出すのが遅れていた一冊。ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)作者: 三上延出版社/メーカー: アスキーメディアワークス発売日: 2011/03/25メデ…

ジェンダーロールの向かう先/電撃文庫『アイドライジング!』感想

私はオタクじゃありません。 インドアな趣味がちょっとだけ多いだけなのだ! というわけで(どういうわけだ?)、友人からオススメされたライトノベル『アイドライジング!』を読んだ。アイドライジング! (電撃文庫)作者: 広沢サカキ,CUTEG出版社/メーカー: …

2011年に観たアニメ個人的リスト

2011年はアニメの当たり年だった。コクリコ坂からビジュアルガイド?横浜恋物語?作者: スタジオジブリ,ニュータイプ出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2011/07/16メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (18件) を…

クルマの未来とソーシャル・ドライブ/東京モーターショーの今さら過ぎる感想

充分に発展しモノであふれた先進国では、モノを売るのではなく体験を売らなければ商売にならない、みたいなことを偉いマーケティングの先生がゆっていた。ここ数年のマーケティング業界の通説になっているんじゃないだろうか。そして自動車業界も例に漏れな…

「家族」とは、いちばん最初の共同体/『輪るピングドラム』第20話の感想

「あの子は選ばれなかったのよ」 「え?」 「この世界は選ばれるか選ばれないか――選ればれないことは、死ぬこと」 アニメ『輪るピングドラム』が面白い。 監督の幾原邦彦さんは『美少女戦士セーラームーン』シリーズや『少女革命ウテナ』で一世を風靡した人…

【読書】ゆるいエンタメの皮をかぶった“完璧な”推理小説/『噂』荻原浩

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 噂 (新潮文庫)作者: 荻原浩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/02/28メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 64回この商品を含むブログ (174件) を見る10月には読み終わっていたけれど、今さら読書感想文。…

オタクのいと高う降りたるを/すべての文学はコメディである、かも。

まずは落ち着いてこれを見て欲しい。こいつをどう思う? 農業高校を舞台にしたライトノベルだ。 白鳥士郎『のうりん』の試読版をキャプチャしたものだ。GA文庫のHPから確認できる。 http://ga.sbcr.jp/mgabunko/017740/ すごく……頭おかしいです……(褒めてる)…

イクメンの時代/『うさぎドロップ』に泣かされてしまったよ……

うさぎドロップ 【初回限定生産版】 Blu-ray 第1巻出版社/メーカー: 東宝発売日: 2011/10/28メディア: Blu-ray クリック: 40回この商品を含むブログ (43件) を見る アニメ『うさぎドロップ』のデキが非常によろしい。 あらすじ: 30歳独身のサラリーマン・ダ…

『あの花』は岡田磨里さんが『けいおん!』を書こうとした結果なのではないか、という仮説。

「C」第2巻<Blu-ray>【初回限定生産版】出版社/メーカー: 東宝発売日: 2011/09/23メディア: Blu-ray購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (5件) を見る 『C』のシリーズ構成が完璧すぎて舌を巻く。陰鬱な日常からとんでもないコトに巻き込まれて…

男性ジェンダーロールと少女性(2)/社会的役割の不一致の系譜

昨日のエントリーですが、たくさんのブクマをいただきました。ありがとうございます。その続きです。 ブクマコメントのなかで「まどか達の肉体は少女だけどやってることは昔からの男性ジェンダー役割そのものなんだから言うなら解放じゃなくて回帰では?」と…

男性ジェンダーロールと少女性の対立/『スト魔女』『けいおん!』『まどマギ』の何が新しいか

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 魔法少女まどか☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)作者: ハノカゲ,Magica Quartet出版社/メーカー: 芳文社発売日: 2011/02/12メディア: コミック購入: 32人 クリック: 1,761回…

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』がすごい。/俺が長井龍雪監督を好きな理由(ワケ)

ノイタミナ枠のアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』がすごい。 長井龍雪監督&岡田麿里脚本という、『とらドラ!』の黄金コンビだ。期待せずにはいられない。が、こちらの上がりきったハードルをさらに軽々と飛び越えていった。本当に面白い…

リア充判定リトマス試験紙としての『ソーシャル・ネットワーク』

毎月一日は映画の日、というわけで三月一日は映画を二本続けて見てきました。今回は、そのうちの一本『ソーシャル・ネットワーク』の感想を書きます。やっと今週のお題「心に残る映画」に一致するエントリーを書けます。 あの映画を見て分かったのは、俺のメ…

作者と読者の哀しい年齢差(2)/語るべきは人の強さか、弱さか

今回は深町秋生『新装版 果てしない渇き』の読書感想文です。 ようやく読むことができました。今さら感が漂うけれど、つらつらと書いてみます。 ◆ ◆ ◆ 深町秋生『果てしない渇き』果てしなき渇き作者: 深町秋生出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2005/01/27メ…

なぜ中高生は小説を読まなくなったのか/作者と読者の哀しい年齢差

よく「今の中高生は小説を読まなくなった」と聞きます。この言葉自体、けっこー疑わしいと私は思っています。が、もしも本当だとしたら、どんな理由があるのでしょうか。 その背景には、書き手と読者の世代的格差があると私は考えています。 というわけで、…

アニメ『放浪息子』がすごい!/視線と距離感の演出

今週のお題は「ついつい集めてしまうもの」/俺の場合はアニメのキャプ画です。「これはっ!」と思ったシーンはとりあえずキャプチャしているんですが、なかなか使う機会がありません。せっかくなので、今回はキャプ画を使ったエントリーを書いてみます。 ◆ …

Facebookは「一人に一つの現実」をもたらす/twitterやmixiは「仮想AR」だ!

インターネットからの情報収集は、「自分の好きなものしか見ない」という危険性をはらんでいる。すぐれた検索システムによって「見たくないモノ」を見なくても済むからだ――。そんな批評をしばしば見かける。でも、見たくないものから目をそらすのは何もイン…

宮部みゆきのとくいわざ/『ICO―霧の城―』で学ぶ“謎”の作り方

ICO-霧の城-(上) (講談社文庫)作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/11/12メディア: ペーパーバック クリック: 36回この商品を含むブログ (39件) を見る ノベライズをしていることは知っていたし、原作ゲームも好きだ。なのに、なぜか今まで…

ストライクウィッチーズの倫理と資本主義の精神/2期第6話への批判から考える神話としてのストパン

「いーけないんだ、いけないんだ♪ せーんせいに言ってやろ♪」 小学校低学年の頃、クラスに頭の固い女子がいた。男子のいたずらを見つけては、この歌を歌っていた。 さて、ストライクウィッチーズ2・第6話が賛否両論だ。演出や映像表現については絶賛されて…

私はいかにして美人局を見抜き逃げ出すに至ったか

ときどき、ものすごく生々しい夢を見る。小さい頃はとくに酷くて、真夜中に目覚めては泣いていた。最近ではすっかり見なくなっていたのだが、映画『インセプション』を見て以来、症状が再発している。何かを深層意識に埋め込まれ(インセプションされ)たの…