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▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
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▼港町・路地裏──。 司祭補「これで何往復目かしらぁ…?」 女騎士「そろそろ帰りたくなってきたのだ…」 司祭補「ダークエルフさんがいたら何ておっしゃるでしょう」 女騎士「手が空いたら合流すると言っていたが…」 司祭補「金貨、受け取ってくださるといいのですけど…」
— Rootport (@rootport) 2015, 10月 21
▼青年の部屋──。 色白青年「いいえ。受け取れません」 女騎士・司祭補「「思った通りなのだ/ですわ」」ガクリ… 色白青年「今の私は貧しい暮らしが染みついてしまいました。日常の些細な支出で5万Gを使い果たしてしまうでしょう。そのご婦人のほうがお金を正しく使ってくれるはずです」
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司祭補「そこを何とか…」 女騎士「あのご婦人、とても説得できる雰囲気では無かったのだ」 色白青年「しかし私だって『はいそうですか』と受け取るわけにはいきませんよ。それこそ、誇りある生き方を忘れた、浅ましい態度です」 女騎士「気持ちは分かる。無理を承知で頼んでいるのだ」
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色白青年「どうしてもと言うのなら…私たちらしいやり方で決着をつけましょう」スタッ 司祭補「?」 女騎士「なるほど、言葉で決着がつかないなら仕方あるまい」スタッ 司祭補「ちょ、ちょっとお二人とも?立ち上がって何をするつもりですの!?」 女騎士・色白青年「「剣で語ろう」」
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▼港町・表通り──。 ガヤガヤ…。 肉屋・兄「何だ、この人だかりは」 肉屋・妹「見て!女騎士さんだよ!」 女騎士「お前が相手では手加減できん。死んでも知らんぞ」 色白青年「その言葉、そっくりそのままお返しします」 司祭補「もぉ~!どうしてこんなことにぃ~!?」
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色白青年「生き残るのも悪くありませんね、こうして再びあなたとお手合わせできるのですから。…名刀アングリストの切れ味をお見せしましょう」 女騎士「面白い。私も同じことを考えていた。お前なら魔剣デュランダルの相手として不足ない」 司祭補「お二人とも何をおっしゃっているの!?」
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司祭補「誰かぁ~二人を止めてぇ~!」 子供A「見て!家庭教師の先生だ!」 子供B「ほんとだ!せんせぇー、がんばれ~!」 肉屋・妹「女騎士さん、負けないで!」 肉屋・兄「そうだ!やっちまえーっ!」 司祭補「盛り上げないでくださぁ~い!!」
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色白青年「いざ」 女騎士「尋常に」 黒エルフ「──何してんの、あんたたち」 女騎士・色白青年「「!」」 司祭補「ああっ、ダークエルフさん!助かりましたわぁ~」 黒エルフ「ふむふむ。金貨を押しつけあったあげく、剣で決着を付けることになった、と」 司祭補「お二人を止めましょう!」
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黒エルフ「いいじゃない。勝手にやらせなさいよ」 司祭補「!?」 黒エルフ「たとえば女騎士(あのバカ)が勝ったとすると、相手は死ぬのよね」 女騎士「致し方あるまい」 色白青年「覚悟はできています」 黒エルフ「じゃあ、誰が5万Gを受け取るの?」 色白青年「そ、それは…」
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黒エルフ「負けたあんたは、言われたとおりカネを受け取らないといけない。だけど、そのときには死んでるのよ?まさか死体と一緒に埋葬しろなんて言わないわよね。そんなもったいないこと…それこそ間違ったお金の使い方だわ」 色白青年「う…」 黒エルフ「安心して、あたしがお金をもらってあげる」
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色白青年「そんな勝手が──」 黒エルフ「あたし以外の誰が受け取るの?例のご婦人も、あんたたちも、お金は要らないんでしょう?関係者のなかでただ1人あたしだけがお金を欲しがっている。なら、あたしには遺産を守る責任があるわ」 女騎士「貴様、よくもぬけぬけと…」 黒エルフ「あんたも同じ」
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黒エルフ「もしも女騎士(このバカ)が負けたとする。やっぱり死ぬのよね?」 色白青年「手加減する余裕はありません」 女騎士「決闘の結果なら本望なのだ」 黒エルフ「すると5万Gはご婦人にお返しすることになる。だけど、あの人が簡単に受け取ってくれるかしら?」 女騎士「むぐぐ…」
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黒エルフ「そもそも、誰が金貨をご婦人のところまで届けるの?」 女騎士「そ、それは…司祭補さまと…」 黒エルフ「…あたし、よね?金欲にまみれたこのあたしが5万Gを運ぶことになるわけ」ニヤァ 女騎士「ふんっ。お前は泥棒を働くような落ちぶれた者でない。それくらい私には分かっているのだ」
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黒エルフ「あら、勝手に分かったつもりにならないでよ。簡単に心変わりするかもしれないわよ?」 女騎士「そ、そうなの?」ガーン
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黒エルフ「というわけで、どっちが勝ってもあたしの損にならないわ。決闘でも果たし合いでも、好きにやればいいじゃない」 色白青年「そんな勝手はさせません!」 女騎士「そうだ!決闘はやめだ!」 司祭補「…ダークエルフさん、ありがとうございます」 黒エルフ「貸しにしとくわ」ニコッ
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司祭補「…ですが、この金貨はどうしましょう?振り出しに戻ってしまいましたわ」 黒エルフ「提案があるわ」 女騎士「ふむ」 色白青年「聞かせてもらいましょう」 黒エルフ「まず2万Gずつ金貨の元々の持ち主と発見した人で分けて、手間賃として古道具屋が1万G受け取る。これでどうかしら?」
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色白青年「私とご婦人で2万Gずつ受け取って…」 司祭補「…古道具屋さんに1万Gを渡すのですわね」 黒エルフ「あたしが受け取るよりマシでしょう?」 女騎士「う、うむ…。ここまで考えたのだ、ご婦人も今度こそ受け取ってくれるだろう」 色白青年「ですが…」 黒エルフ「まだ何かあるの?」
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色白青年「祖父の気持ちに気づかなかった恥は償えません。やはり、ただで2万Gを受け取ってしまうのは気が引けて…」 司祭補「気にしすぎでは…」 黒エルフ「ああ、もう!それなら、何か食器の1つでもご婦人に渡しなさいよ。その食器をご婦人に『売った』と考えれば、気がとがめないでしょう」
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色白青年「食器ですか…。たとえば、新大陸から持ってきた古い陶器のカップがあります。そんなものでもいいでしょうか?」 黒エルフ「ええ、何でもいいわよ。それをご婦人に売って、代金として2万Gを受け取った…そう考えれば、素直にお金を受け取れるんじゃないの?」
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▼紅獅子亭、2階──。 貴婦人「…それで、これがそのカップですのね」 女騎士「どうか受け取って欲しいのだ」 黒エルフ「でないと、またあの頑固者を説得することになるわ」 貴婦人「何ごともスジを通そうとする真面目な殿方ですね。…分かりました、喜んでお引き取りします」 一同 ホッ…
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黒エルフ「ところで、ここまでの取引はきちんと帳簿につけた?」 司祭補「ええ、女騎士さんに手伝ってもらいました」 女騎士「バッチリなのだ!」 黒エルフ「あんたが自信満々なほど不安になるわ。あたしに見せなさい」
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司祭補「まず、これが5万Gを預かったときの仕訳ですわ」 女騎士「入金があったけれど、どんな勘定科目を計上すればいいか決まっていないときは、とりあえず仮受金にする…」 黒エルフ「ええ、正解よ」 pic.twitter.com/EJSYzAjj0x
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司祭補「そして、こちらが5万Gを山分けしたときの仕訳です」 女騎士「青年とご婦人に2万Gずつ、計4万Gの現金が出ていった。残り1万Gは特別利益の『受贈益』にしたのだ」 黒エルフ「この仕訳も問題なさそうね」 pic.twitter.com/Zc8c6THRi5
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女騎士「正直なところ、この1万Gをどう会計処理するか迷ったのだ…」 黒エルフ「たしかに、祝い金やご祝儀とかで少額の現金を受け取った場合なら、営業外収益の『雑収入』で処理すべきね」 女騎士「しかし1万Gといえば大金だろう?」 黒エルフ「突発的な入金だし、特別利益でいいと思うわ」
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司祭補「営業外収益?特別利益?」 黒エルフ「売上以外にも『収益』には色々な種類があると言ったでしょ。たとえば預金の利息みたいに経常性のある収益なら営業外収益。そうではなく突発的な収益なら、特別利益になるわ」 司祭補「経常性って何ですの?」 黒エルフ「…また機会があれば解説するわ」
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初老執事「何はともあれ、お金の行き先が決まってホッとしました」 貴婦人「殿方のなかには誠実な方もいらっしゃるのですね。ぜひ一度お目にかかりたいわ」 初老執事「…奥様?」 貴婦人「じいやの小言はけっこうです。これだけお手間をかけたのだから、ご挨拶くらいしないと失礼ですわ」
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