▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
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▼銀行家の邸宅・書斎──。 銀行家「そうですか、そんなことが…」 幼メイド「まったく!ごーじょーなクソババアなのです!」 銀行家「こら、言葉を選びなさい」 幼メイド「ごめんなさい~」シュン 銀行家「どこでそんな汚い言葉を覚えたのか…」 黒エルフ(…あたしが覚えさせたのかしら)
— Rootport (@rootport) 2015, 12月 9
司祭補「ところで、お手紙が届いていたそうですわね」 銀行家「ええ、人間国政府から」 女騎士「手紙にはマラズギルトの署名があった」 司祭補「まあ!あの色白の青年の…」 女騎士「やつは内務大臣の孫娘と結婚した。今は大臣の書記官をしているらしい」 黒エルフ「家庭教師から大出世したわね」
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銀行家「手紙によれば、政府は今、兵士の数が足りなくて苦慮しているようです」 黒エルフ「たしか新大陸への大遠征を計画しているのよね?」 女騎士「ところが歩兵の頭数が揃わず、かといって報酬を増額する財源もない…」 銀行家「そこで、広く民草に意見を求めることにしたそうです」
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銀行家「貴族や金持ちに手紙を送って、兵士不足を解消する妙案を募集しています」 司祭補「以前なら考えられないことですわ」 女騎士「マラズギルトの発案だそうだ。人々の声に耳を傾けるとは感心、感心…」 黒エルフ「まともな案を出せる人材が政府にいない証拠でしょ。面倒くさぁ」ブスー
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銀行家「良案を出した者には褒美を取らせると書いてありますよ」 黒エルフ「褒美を取らせる!?」ガバッ 銀行家「もしも案が採用されたら、この金額がもらえるのだとか」ピラッ 黒エルフ「考えましょう!ぜひ考えましょう!」キラキラ
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幼メイド「ひろく意見を求める…ということは、帝都の銀行にも同じお手紙が届いているのでは~?」 女騎士「おそらく。やつらは私たちの機先を制しようとするはずだ」 司祭補「あらあら、まあまあ…」 黒エルフ「あっちの銀行が何をしようと関係ないわ!」
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黒エルフ「見てなさい、クソジジイどもの裏をかいてやるんだから!」 幼メイド「おー!クソジジイをやっつけるのです!」 銀行家「こら、言葉を選びなさい」 幼メイド「ごめんなさい~」シュン
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銀行家「それからダークエルフさん」 黒エルフ「?」 銀行家「少しお話ししたいことがあります。…あなたの言葉遣いについて」 黒エルフ「…」
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▼帝都・謁見の間──。 ショタ王「お前が新たに内務大臣が選んだという書記官だな」 色白青年「ご拝謁に預かり恐悦至極に存じます」 ショタ王「民草に意見を求めるのはお前の発案だそうだな。内務大臣に勧められたから許可したが…王の威厳を損なうことになるまいか?」 財務大臣「その通りです」
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財務大臣「正しい決断を下して人々を導くことこそ政府のつとめ。臣民の言葉に政府が従うなど、あってはならぬことでございます!」 ショタ王「うん。ぼくも同じことを心配していた」 財務大臣「どうやら内務大臣さまもお歳を召したようですな。物事の順序も忘れ、こんな若造の言葉に耳を貸すとは」
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ショタ王「それにしても…なぜ兵士が集まらぬのだ?人間の存亡をかけた戦いだというのに」 財務大臣「魔族の恐ろしさの周知が足りないのかも知れませんな。今すぐ戦意高揚のビラを増刷して──」 色白青年「お言葉ですが、これ以上ビラを配っても兵士は集まらないかと存じます」 財務大臣「何ぃ?」
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財務大臣「ビラに勝る良策はないぞ!」 色白青年「ビラを増刷すると、大臣様に何かいいことでもあるのですか?」 財務大臣「む?」 色白青年「最近では印刷会社も増えました。なかには誰の出資で作られたのか分からない会社もあるそうです。調べてみてはいかがでしょう」ニヤッ 財務大臣「~ッ!」
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ショタ王「ぼくを差し置いて、よく分からない話をするな!ぼくは王様だぞ!」 色白青年「ご無礼をお許しください」 ショタ王「まあいい、書記官。なぜお前はビラでは兵士が集まらないと考えているのだ?理由(わけ)を聞かせろ」 色白青年「一言でいえば、人間国は一枚岩ではないということです」
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ショタ王「初代国王がたくさんの国々を併合して人間国は生まれた。地方にはいまだに不満を抱く王族がいることは知っている」 色白青年「それだけではありません。新大陸に移住したのは、旧大陸の西側沿岸の人々でした。人間国の東方地域から移住した人はほとんどいません」 ショタ王「…つまり?」
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色白青年「東方地域に暮らす人々からすれば、西側沿岸の住民が勝手に新大陸に渡って、勝手に魔族との戦争を始めたように見えるということです」 財務大臣「何と恩知らずな。私たち西方地域の人間が魔族からの侵略を食い止めているというのに!」 色白青年「理由はどうあれ、東方地域の戦意は低い…」
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色白青年「…さらに、お金の問題があります」 財務大臣「ふん、魔族の脅威を前にカネの心配など──」 色白青年「お言葉ですが、大臣のご想像よりも庶民はカネを持っていません。戦地で夫が死ねば妻子は路頭に迷います。庶民にとって、海の向こうの魔族よりも、目の前の貧窮のほうが恐ろしいのです」
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ショタ王「そういえば、お前はしばらく貧しい暮らしを続けていたそうだな。今の話には耳を傾ける価値がありそうだ」 色白青年「ありがたき幸せに存じます。…じつのところ、魔族を討伐したいと考えている男はたくさんいます。しかし妻子を残していくわけにはいかず、志願できないのです」
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ショタ王「陸軍元帥は徴兵制を敷くべきだと言っていた。お前はどう思う?」 色白青年「元帥閣下にご意見する立場ではないのですが…」 ショタ王「心得ている。あくまでもお前の個人的な感想でかまわん。述べてみよ」 色白青年「…歴史をふり返れば、徴兵はあまり良い方法ではないかと存じます」
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色白青年「過去の徴兵制は、あまり良い結果にはなりませんでした。たとえば初代国王様が人間国を統一した戦争ですが──」 ショタ王「たしか、将軍ごとに規定の数の兵士を集めるよう命じたのだったな」 色白青年「はい。その結果、詐欺まがいの甘言で農民を誘拐する将軍が後を絶たなかったそうです」
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ショタ王「先代国王の時代にも、徴兵制を試したことがあったはずだ」 色白青年「帝都の常備軍の不足を補うためですね。周辺の村や町から一定の数の男子を差し出すよう命じました」 ショタ王「残念ながら失敗だったと聞いている」 色白青年「ええ。村の嫌われ者やコミュ障ばかりが集まったそうです」
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ショタ王「では、全国の男子を一律に徴兵するのはどうだ?」 色白青年「恐れながら…そのように集めた兵士は士気に欠け、ムダに命を危険にさらすだけかと存じます」 財務大臣「平民の命など…たとえ死んでもすぐに代わりが生まれてくるではないか」 ショタ王「口を慎め、大臣!」
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ショタ王「どんなに卑しい身分だろうと、ぼくの臣民だぞ!」 財務大臣「平民の死を哀れむとは…陛下はお優しい心をお持ちなのですね。しかし王たるもの、多少の犠牲にくよくよしてはなりません」 ショタ王「そういう話ではない。ぼくを子供扱いするつもりか!?」 財務大臣「滅相もない!」
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財務大臣「ただ私は、王の心得というものを──」 ショタ王「では訊くが、もしも大臣が飼っている馬を賊に殺されたらどう思う?腹が立つのではないか?」 財務大臣「そ、それは…」 ショタ王「同じことだ。臣民たちは血の一滴までもぼくのものだ。ムダに傷つけられるのは許さない」
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ショタ王「書記官、お前の話を聞けてよかった。じつは海軍元帥は徴兵制に難色を示していたのだ。操船には技術と知識が必要で、士気の高い志願兵でなければつとまらない、とな」 色白青年「ご賢明な判断かと存じます」 ショタ王「うん。ぼくは徴兵以外の方法で兵士を集めたい」
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財務大臣「お言葉ですが、兵士の給与を増やすことはできませんよ」 ショタ王「分かっている。新型の大砲を増産するのにカネがかかるのだったな」 財務大臣「カネも徴兵制も使わずに、どうやって兵士不足を解決しろというのでしょう…」 ショタ王「それを考えるのがお前たち大臣の仕事だろう」
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ショタ王「安心しろ、明日までに答えを出せとは言わないよ。妙案をひねり出すのに何日必要だ?10日か?1ヶ月か?それ以上は待てないが…」 財務大臣「え、えっと…」 色白青年「その時間を短縮するために、私は民草からの意見を募ったのです」 ショタ王「どういうことだ?」
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色白青年「大臣お一人では思いつくのに10日かかる案でも、10人で考えれば1日で思いつけるかもしれません」 ショタ王「ふむ」 色白青年「今回手紙を送ったのは、みな教養深い身分の者たちです。きっと思いもよらぬ案を考え出してくれることでしょう」 財務大臣「そんなに上手くいくものか…」
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財務大臣「…まあいい。あまり期待はしていないが、今は民草からの返事を待とう」 色白青年「ご厚情に感謝いたします」 財務大臣「しかし、もしもいい案が出なければ…そのときは徴兵制を敷くしかない」 ショタ王「何度も同じことを言わ──」 財務大臣「陛下ッ!」 ショタ王「!!」
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財務大臣「陛下のお気持ちは存じております。しかし、これは子供の遊びではないのです」 ショタ王「…」 財務大臣「どうかご覚悟をお固めください、陛下」 ショタ王「…う、うん。分かったよ」
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