▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
▽第6話「エクイティ」
▽第7話「ブラック・スワン」
▽第8話「ローン・オブ・ザ・リング」
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女騎士「見てくれ!ようやく簿記2級に合格したのだ!」 オーク「ああそうかい」 女騎士「…なんだ?今日はやけに騒がしいな?」 オーク「あんた、聞いてねえのか?敵の軍勢が近づいてきてんだよ」 女騎士「敵」 オーク「ああ。『勇者』とかいう異国のテロリストだ」 女騎士「勇者、だと…!?」
— Rootport(※減量中) (@rootport) 2015, 7月 11
オーク「俺たちの主たる事業は、人間国で暮らす魔物との輸出入だ。この街は、人間国との国境からも近い。こうなることは覚悟していたさ」 女騎士「ま、待ってくれ!『勇者』は人間国の英雄だ!戦いを避ける方法が、きっと──」 オーク「あんた、勇者と面識があんのか?」 女騎士「…いいや、ない」
— Rootport(※減量中) (@rootport) 2015, 7月 11
勇者「みんな!この峠を越えれば、いよいよ魔国で最初の街だ!」 賢者「魔物たちの強い抵抗が予想されますが?」 商人「よっしゃ!パーッとやったりましょ!」 僧侶「私が、皆さんをお守りします!」 勇者「ありがとう、みんなのおかげでここまで来れた。立ちはだかる障害には、絶対に屈しない!」
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勇者「でも、本当にいいのかな。魔物とはいえ、あの街の住人たちにも生活が──」 賢者「勇者どの!副都の悲劇をお忘れですか!魔物に襲撃されて8万人が命を落としたのですよ!」 商人「その8万人のなかには、僧侶さんの弟もおったんやろ?」 僧侶「……。」 勇者「ああ、そうだったな…」
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オーク「野郎ども、棍棒は持ったか!この街は渡さない!」 魔物たち「うぉぉぉおおお!」 女騎士「お前たちは勇者の強さを知らない。死ぬぞ!」 オーク「ああ、そうだろうな」 女騎士「だったらなぜ──!?」 オーク「命に代えてでも守りたいもんがあんだよ。…いいか、お嬢ちゃんは手を出すな」
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勇者「そうだ…。人間国のみんなが、僕たちの勝利を祈っているんだ。絶対に勝とう!」 賢者・商人・僧侶「おおーっ!」 ──────────────── オーク「いいか、ただでは死ぬな!やつらのHP1点でもいい、MP1点でもいい。削り取ってから死ね!」 魔物「うぉぉぉおおお!!!」
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▼それは、「戦い」と呼ぶにはあまりにも一方的だった。住人の大半は街から逃げず、勇者たちを迎え撃った。半刻をすぎるころには抵抗は弱まり、一刻を待たずして街は火の海となった。そして武器をとった住人は1人の例外もなく、勇者の剣に倒れ、賢者の魔術に焼かれ、商人の銃に撃ち抜かれた──。
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女騎士「…ぃ…!…おい!しっかりしろ!」 オーク「…な…んだ…お嬢ちゃん…。まだ、この街に…いた、のか」 女騎士「喋るな!今、止血を──」 オーク「胃を…やられ、た…。もう、俺は…助からん……」 女騎士「!!」 オーク「…無理に、働かせて…悪かった…、俺を、憎んで…いる…だろう」
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女騎士「バカな!憎んでなど…」 オーク「はは…。そう、だった…人間は、ウソをつく…種族、だった…」 オーク「お嬢ちゃんは…人間国に、戻れ…。そして…自分、の…じん…せい、を……」 オーク「……」 女騎士「…おい」 オーク「……」 女騎士「おい、目を開けろ!…くそっ…くそぉぉお!」
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▼2週間後──。 ざばーん!ざざーん! ウミネコ「ミャー!ミャー!」 船乗り「おーい!おーい!」 市場の人々「ワイワイ……ガヤガヤ……」 女騎士「…ようやく、戻ってきたのだな。人間国に」 女騎士「旅の仲間はもういない」 女騎士「私には身寄りもない」 女騎士「…仕事、探すか」
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A社面接官「では志望動機を教えてください」 女騎士「御社の明るい社風に惹かれて──」 B社面接官「志望理由はなんですか?」 女騎士「若いうちから挑戦できる御社の雰囲気に──」 C社面接官「んで、志望動機は?」 女騎士「急成長産業に興味を──」 手紙「「「お祈りします」」」
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D社面接官「はあ?複式簿記ぃ~?簿記2級ぅ~?それって魔国の資格でしょ?」 女騎士「し、しかし、複式簿記はとても便利な技能で、きっと御社の……いいえ、人間国の発展につながるはずです!」 D社面接官「魔物の洗脳を受けたような人は雇えないよ!帰ってくれ!」 女騎士「……失礼しました」
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女騎士「お笑いぐさだな。これでも貴族の生まれだったのに…もはや家はなく、何の技能もない。私はただ腕っ節が強いだけの女だ。こんな跳ねっ返り娘を嫁に欲しがる奇特な男もいないだろう」 ざばーん、ざざーん… 女騎士「いっそ、あの波に身を投げて──」 幼メイド「だんなさまぁ~!待ってぇ~」
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幼メイド「だんなさまぁ~!待ってぇ~!」(ドテッ) 銀行家(?)「ああっ、大丈夫かい!だから家で留守番するように言いつけたのに…」 幼メイド「わたしはだんなさまのメイドです!だんなさまをお一人でお買い物に行かせるわけには……い、痛てて…」 女騎士「ひざをすりむいたか。見せてみろ」
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女騎士「…これでよし、と」 幼メイド「わぁ~!おねえちゃん、ありがとぉ!」 銀行家(?)「見事な手際ですね。お医者さま…ではなさそうですが」 女騎士「荒事に慣れているだけだ。そういうあんたこそ…なんだ、その格好は?服に着られているぞ」 銀行家(?)「ははは、お恥ずかしい…」
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銀行家「こう見えて、私は小さな銀行を経営しています。といっても、つい先日からですが」 女騎士「つい先日から?」 銀行家「先日、祖父が亡くなって…父は何年も前に死んでいますので、私が経営を引き継ぐことになったのです」 女騎士「それは気の毒に…」
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女騎士「ところで…銀行業というのは儲かるのか?」 銀行家「それはもう。番頭の報告では、ええっと…たしか…利益率は80%を超えていたはずです!」 女騎士「…80%、だと?」 銀行家「どうかされました?」 女騎士「失礼だが、貸したカネの回収に困っているのでは?」 銀行家「……!?」
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女騎士「どんなに優秀な銀行でも、利益率は30%程度だと聞いた。80%は異常だ」 銀行家「そ、そうなのですか…?」 女騎士「おそらく、引当金を計上せずに不良債権を放置しているのだろう。回収見込みのない債権の収益を計上すれば、利益は水増しされる」 銀行家「あ、あなたはいったい…?」
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女騎士「私はただの女騎士だ。少し、簿記について教わったことがあるだけで」 銀行家「簿記、ですか」 女騎士「あんたこそ、そんなんで銀行の経営者が勤まるのか?」 銀行家「じつは祖父は、芸術を愛するようにと私を育てたのです。そのため…恥ずかしながら、お金のことはからっきしで…」
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幼メイド「だんなさま~。それなら、おねえちゃんを雇ってみては~?」 女騎士「!」 銀行家「そうです!ぜひ私の銀行で働いてください!」 女騎士「だ、だが…」 幼メイド「ケーキを焼いておもてなししますっ」 女騎士「好意に、あ、甘えるわけには…(ぐぅ~)」 幼メイド「体は正直です~」
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