▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
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女騎士「川べりで誰かが踊っているようだな」 そばかす娘「~♪ ~♪」 男の子「わー!すごいやお姉ちゃん!」 女の子「もっと踊って~」 そばかす娘「あはは!ありがと!それではアンコールにお応えしてもう一曲…」 歌声 ~♪ ~♪ 司祭補「あの服装は…農奴の子供たちですわね」
— Rootport (@rootport) 2015, 9月 29
黒エルフ「踊りに見とれて、あたしたちの目的を忘れないでよ?」 司祭補「グーテンベルクさん、ですわね?」 女騎士「おっとそうだった。…そこの君たち!」 子供たち「!」 女騎士「ちょっと尋ねたいのだが、このあたりにドワーフの──」 そばかす娘「申し訳ございません!」ガバッ
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そばかす娘「どうかお許しください!」 女騎士「???」 そばかす娘「今日のぶんのお仕事は終わっております。作業のあとの水浴びをしていただけで…」 女騎士「な、何かカン違いしていないか?私はただ道を訊こうとしただけなのだが」 そばかす娘「…領主様のお使いの方ではないのですか?」
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司祭補「わたしたちは港町から来たのですわ」 そばかす娘「そっか、よかったぁ」ホッ 黒エルフ「ずいぶん慌てていたわね」 そばかす娘「領主様は、私たちが遊んでいると怒るんだ。サボらずにもっと働けって」 女騎士「しかし、今日の仕事は終わっているのだろう?」
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そばかす娘「もちろん!仕事が終わってないのに遊ぶわけないよ」 司祭補「では、領主様にもそう説明なさればいいのではありませんか」 そばかす娘「ムダね。あの人は農作業のことを何一つ分かっちゃいないもの。土を耕しさえすれば、真冬でも芽が出ると信じているような人なの」
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そばかす娘「ところで、お姉さんたちは都会から来たんだよね?」 女騎士「まあ、この村に比べれば都会だな」 そばかす娘「それなら、劇団の偉い人と知り合いだったりしない?」 黒エルフ「劇団?小さな一座なら取引先の1つにあるけど…」 そばかす娘「だったらお願い!その人たちに会わせて!」
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そばかす娘「私、踊り子になりたいの!将来は帝都の大劇場(グランテアトロ)の舞台に立ちたいんだ!」 黒エルフ「はあ?そんなの無理──ふごっ!?」 女騎士「ゆ、夢を持つのはいいことなのだ!」 黒エルフ「~~!」 司祭補「だからここで踊りを練習していたのですね?」 そばかす娘「うん!」
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女の子「お姉ちゃんはね、村でいちばんの器量よしなんだ!」 男の子「それに踊りがとっても上手なの!」 そばかす娘「それほどでも…」テレテレ 黒エルフ(この村でいちばんの美人でも、全国平均で見たら大したことないわね。踊りはいかにも田舎者って感じだったし…) 女騎士(声が大きいぞ!)
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司祭補「踊りにあわせて歌っていましたわね。あれは何という曲ですの?」 そばかす娘「名前はまだないよ」 司祭補「まだ?」 そばかす娘「あの歌は、私が勝手に作ったの。本物の踊り子がどんな曲にあわせて踊るのか知らなかったから…」 女騎士「ふむ。お前は本物の舞台を見たことがないのだな」
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そばかす娘「いつか見てみたいなぁ、帝都歌劇団の『コケモモ物語』…大劇場の一等席で…」キラキラ 黒エルフ「何言ってんのよ。農奴の収入じゃ一生かかっても無──ふごっ!?」 女騎士「す、すばらしい作品だと聞く!私も見てみたいものだ!」 司祭補「精霊さまに願いが届くといいですわね」
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女騎士「機会があればお前のことを取引先の一座の人に話しておこう」 そばかす娘「やったぁ!ありがとうございます!」 男の子「すごいや!」 女の子「よかったね!」 そばかす娘「うふふ、今のうちにサインしてあげる!」 女騎士「う…」 黒エルフ「あーあ、無責任なこと言っちゃって…」
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司祭補「ところで、わたしたちは人を訪ねてこの村に来たのですけど…」 そばかす娘「やっぱり領主様に会いに来たの?」 黒エルフ「いいえ、グーテンベルクというドワーフの職工よ。知ってるかしら?」 そばかす娘「もちろん!怒ると怖いけど根は優しい人だよ!」
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そばかす娘「だけど、もう日が傾いてきているし…今の時間からグーテンベルクさんに会いに行くのはやめたほうがいいと思う」 司祭補「あら、なぜかしら?」 そばかす娘「グーテンベルクさんの工房は、村の奥の古い坑道を抜けた先にあるの。坑道には夜になると恐ろしい怪物が出るんだよ」
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女騎士「ふむ。どんな怪物か知らんが油断は大敵だな」 黒エルフ「あら?猪突猛進のあんたにしては、いたく冷静なことを言うじゃない」 女騎士「正体の分からぬ敵ほど恐ろしいものはないぞ。とはいえ安心しろ。日頃の鍛錬は欠かしていない!」 黒エルフ「って、やっぱり戦うつもりなのね…」
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男の子「やめたほうがいいよ!坑道の入り口には、怪物がいることを示す『呪いの文句』が書かれているんだ!」 女の子「坑道の中には危険な仕掛けがいっぱいで…子供は近づいちゃダメって言われているくらいなの!」 司祭補「あらあら、うふふ。ここは地元の方々のご忠告に従うべきかもしれませんわ」
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女騎士「ううむ。それでは村で一泊して、明日の朝グーテンベルクさんの工房を訪ねるとするか」 黒エルフ「異存ないわ。もともと日帰りするつもりはなかったわけだし」 そばかす娘「だったら、ぜひ私の家に泊まっていってよ!何もないけど、寝床くらいは貸せるよ」 女騎士「おおっ、ありがたい!」
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▼夜──。 黒エルフ「…で、貸してもらえた寝床がこんな場所だとはね」 納屋 ボロッ 女騎士「母屋の寝室も似たようなものだったぞ。さっき見せてもらったが、土間に干し草を敷いただけのベッドに一家全員が足をつっ込んで寝るのだそうだ」 黒エルフ「まあ、期待はしてなかったわ」
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女騎士「野宿していたころを思い出すのだ」 黒エルフ「あたしも今さら文句ないけど…精霊教会の聖職者さまが心配ね。こんな寝床に耐えられるかしら?」 司祭補「まるでキャンプみたいですわ~!あっ、虫よけのお香を焚かなくては!寒気よけの香りを混ぜて…♪」 女騎士「心配無用のようだな」
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女騎士「明日は早い。今夜はもう寝るとしよう」ゴソッ 黒エルフ「古い坑道の先に暮らすなんて、やっぱりドワーフって偏屈よね」ガサッ 司祭補「信念が強いとも言えますわ」ゴソゴソ 黒エルフ「って、なんですり寄って来るの!?」 司祭補「だってダークエルフさんは暖かいんですもの♪」
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女騎士「おおっ、言われて見ればたしかに…」ニギニギ 黒エルフ「に、握るなぁ~!」 司祭補「あらあら、まあまあ♪」ナデナデ 黒エルフ「なでるなぁ~!」 女騎士「やはり、あれか?皮下脂肪が少ないと体内の熱が発散されやすいのだろうか?」 黒エルフ「怒るわよ!」
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女騎士「ん?」 黒エルフ「今度は何よ!?」 女騎士「静かに!」 母屋 ザワザワ 司祭補「母屋のほうが騒がしいですわね」 ???(おほほ、娘を迎えに来たのじゃ!) 両親(領主様、どうか今夜のところはお引き取りください!) ???(何ぃ!わがはいに意見するつもりか!)
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父親「どうかこの通りです!」 田舎領主「農奴の分際でわがはいに楯突くとは何たる生意気!貴様、誰のおかげで食べていけると思っているのじゃ?恩知らずも大概にするのじゃな!」 母親「どうかお願いします!」 田舎領主「うるさい!うるさーい!娘を出さんかぁ~!」 女騎士「なにごとだ!」
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黒エルフ「セリフから察するに、あのじいさんがこの辺りの領主のようね」 女騎士「あの赤ら顔は…かなり酒を飲んでいるな」 田舎領主「むむっ!なんじゃ、お前たちは…?」 父親「今宵、わが家で迎えた客人の方々です」 田舎領主「おほほ…見れば、なかなか別嬪ではないか。ほほぉ~」
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田舎領主「よし、わがはいの屋敷に来るがよい。そばかす娘を連れて行くついでじゃ。酒池肉林のうたげを楽しもうではないか!」ぷぅ~ん 黒エルフ「くっさ!あんた風呂に入ってないでしょ!?」 田舎領主「これだから無学な者は困る。風呂は体に悪いのだぞ?皮膚から水がしみ込んで血が薄まるのじゃ」
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女騎士「お前の靴の汚れ…もしや、う●ちでは?」 田舎領主「いかにも!家を出るときにおまるを蹴り倒してしまったのじゃ!」 黒エルフ「おまる?トイレを使っていないの!?」 田舎領主「水道の整備された帝都や、水路の多い港町ならいざしらず…この村にトイレなどない!」
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田舎領主「貧しい農奴はう●ちを肥料に使うから、おまるの中身をすぐに肥だめに移してしまう。しかし、わがはいにはその必要もない。使用済みのおまるをそのまま放置しておけるのは、お金持ちの特権なのじゃ!ほっほっほぉ~!」ぷぅ~ん 黒エルフ「いやァーッ!! 近づかないでぇー!!!!」
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女騎士「さっきからお前は、この家の娘を連れて行くと言っているが…どういう意味だ?」 田舎領主「愛妾(あいしょう)として、わが屋敷に住まわせてやると言っているのじゃ。農奴の身分では考えられない厚遇に感謝するのじゃな!」 黒エルフ「愛妾…って、この男の?」ゾワァ 両親「ううっ…」
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女騎士「たとえ領主様といえど、嫌がる娘を無理やり妾(めかけ)にするのは正義に適わんぞ!」 田舎領主「無理やり連れて行くわけではない。娘のほうから進んでわが愛妾になりたいと言ってきたのじゃ」 黒エルフ「嘘よ!あの子には踊り子になりたいって夢が──」 そばかす娘「ううん、本当だよ」
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