- 作者: 山崎豊子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/11/28
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飛行機に乗ったときにいつも感動するのは、フライトアテンダントのサービスの良さだ。日本の航空会社は、たしかにホスピタリティでは群を抜いてるかもしれない。「スタバ並みに丁寧な接客だよなぁ」と感心して、ふと気づいた。
逆だろ、逆!
日本ではスタバやマックのバイトたちが、フライトアテンダント並みに丁寧な接客をしているのだ。
※とは言うものの比較対象は少ない。たとえば先日の訪英で、私は地下鉄の車内で猛烈な腹痛に襲われた。昼間のビッグ・ベンをカメラに納めるため、カムデンタウン駅からウエストミンスター駅へ向かっている最中だった。こりゃいかん、とエンバンクメント駅で途中下車、駅から出てすぐのスタバに駆け込んで、ことなきを得た。これがイギリスでの唯一のスタバ体験だ。ビッグベンに行く途中でビッグ・ベn(だまれオッサン
※で、スタバに限らずロンドンの店員さんたちはみんなフレンドリーだった。けれど日本的な感覚からしたら「馴れ馴れしい」と感じる人もいるかもしれない。これがアメリカではさらに慣れ慣れしさを増すのかしら、HAHAHA!
※ちなみに北京の店員さんたちは基本的に無愛想(に日本人には見える)です。だけど、むすっとしたウェイトレスさんが意外と甲斐々々しくテーブルの世話を焼いてくれたりする。かの国では愛想笑いの習慣が無いだけなのかも。薄ら笑いを浮かべるなんて気色悪い、みたいな? どうなんでしょう、教えてください現地在住の方!
話を日本に戻そう。
それでは、そういうファーストフードのバイトたちにフライトアテンダント並みの給与が支払われているだろうか――と、考えずにはいられない。たしかに語学力や緊急時の誘導など、CAのほうが責任が重いし、そのぶん高給であるべきだ。私が疑問なのはCAの給与が高いことではなく、バイトのそれが低いことなのだ。
よく「日本は清潔だ」「安全だ」「サービスを気持ちよく使える」なんて誇らしげにいう人がいる。けれど、その美しさの背後には賃金に見合わないほど勤勉に働く人たちがいることを忘れていないだろうか。古代ローマのカラカラ浴場の快適さは、地下の沸かし場の灼熱地獄のような奴隷労働に支えられていた。
大石哲之さん(@tyk97)さんのツイート
和民イズムもわかるけど、じゃワタミのひとが8時間きっかりで帰宅したらどうなるか。それじゃ会社を回らないからもう一人必要になるよね。生産性が上がらない限り、賃金さげるしかない。僕らはワタミズムによってなんとか豊かさを維持していたのかもしれない
https://twitter.com/#!/tyk97/status/183978027359809536
ロンドンの地下鉄は、日本よりも汚かった。歴史が古いというのもあるけれど、清掃に従事する人たちの勤労意欲が日本よりも低いのだろう。私はヒースロー空港で、iPodのイヤホンを耳につっこんで小躍りしながら掃除するお兄ちゃんを見かけた。移民かそれとも混血か――浅黒い肌をしている兄ちゃんだった。いい国だなーって思った。神経症的に潔癖すぎる日本よりも、ずっと人間らしい世の中ではないか。ロンドンの地下鉄が汚いと言っても、吸い殻が落ちている程度。日本でいえば新宿歌舞伎町ぐらいの汚れが、丸の内の駅構内にもあるようなものだと言える。
結局、そういう「至らなさ」を受容できるかどうかが問題なのだと思う。汚いほうがいいと言いたいのではない。日本の清潔さや快適さは、たしかに誇るべきものだと思うし、簡単に無くしていいとも思わない。ただし、どこまでも清潔で一点の曇りもない――そういう快適さを享受するためには、相応の見返りを支払うべきではないのか。
SF小説『月は無慈悲な夜の女王』には「タンスターフル」という印象的な言葉が登場する。「There Ain't No Such Thing As A Free Lunch(タダの昼飯などというものはない)」という言葉の頭文字を取ったもので、ランチ無料をうたう店ならばドリンク代で儲けを補うよね、という故事にもとづいている。現代の日本なら、安いけれどワンドリンク制のカラオケ屋とか、麺が安いぶんおかずが割高なはなまるうどんが好例だろうか。では、地下鉄の清潔さやファーストフード店のすばらしい接客に、私たちはきちんと支払いをしているだろうか。日本人の勤勉さに、日本人はタダ乗りしていないか。
「日本を変えたい」と言う人がいる。
日本が変わるということは、つまり日本人が変わるということだ。
私たち一人ひとりの意識が変わらないかぎり、この国は絶対に変わらない。
顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
- 作者: 諏訪良武,北城恪太郎
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