注意したいのは、飲み会のコールをいくら知っていても「リア充」にはなれないということだ。どんなに顔が広くても、薄っぺらな人間関係ではリアルライフは充実しない。人生を豊かにしてくれるのは、深いきずなで結ばれた友人たちだ。たしかに社交的であるに越したことはないけれど、たとえ内向的な性格をしていても、一生の友だちと呼べる相手と出会うことができたなら、それだけであなたは人生の勝ち組だ。
そして一生の友だちは、そんなにたくさん要らない。
これからの数年間で、あなたは3人の友だちを作ればいい。
おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ! (富士見ファンタジア文庫)
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- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2011/07/20
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1.年上の友だちを作ろう
あなたが知らない知識を知っていたり、あなたがしたことのない経験を持っていたり、そういう「自分よりもすごい人」と友だちになろう。
あまりにもすごい相手を前にすると、人は嫉妬など感じなくなる。ただ「すっげー」とつぶやいて、口をぽかんと開けるだけだ。あなたがこれからの数年間で出会う人々は、これまでとは比べものにならないほど「すごい」人たちばかりだ。
たとえば小学生のころを思い出して欲しい。小学生のころの私たちは地元の小さなコミュニティの外に出られなかった。クラスの同級生も先輩も後輩も、みんな似たような「地元の経験」を共有している人ばかりだった(で、それはそれで居心地が良かったりするのだけど)。
しかし、これからあなたが出会う人たちは、土台となっている経験そのものが違う。あなたが今まで出会ったこともないような人たちと、あなたは出会う。あなたに知識や経験、価値観を授けてくれる、あなたに「学び」をもたらしてくれる、そんな年上の友だちを見つけよう。
2.タメ歳の友だちを作ろう
あなたと同じ目線でモノを見て、あなたに共感してくれて、ときにはあなたの良きライバルになってくれる。そういう「自分によく似た人」を友だちに持とう。
人はひとりでは成長できない。自分よりもすごい人たちばかりに囲まれていると、成長はかえって鈍くなる。どんなに努力しても追いつけない背中を眺めていたら、いつかは走るのがバカバカしくなる。あるいは「すごい人」に引っ張ってもらうのに慣れきって、自分の足で歩くことをやめてしまうかも。
だからこそ、自分とよく似た立場の友だちが必要だ。
知識や経験の量があなたに近くて、けれど価値観や考え方はすこし違う――そんな友だちを作ることができれば素晴らしい。あなたが嬉しいと感じたことは、たぶんその人も嬉しいと感じるだろう。あなたが悩んでいることは、たぶんその人も似たような悩みを持っているだろう。だからあなたとその人はお互いに共感できる。励ましあうことができる。ときにはライバルとして「しのぎを削る」こともあるだろう。そういう適度な競争が、あなたを大きく成長させてくれるはずだ。
あなたによく似ていて、だからこそ負けたくない、そんな同い年の友だちを見つけよう。
3.年下の友だちを作ろう
たとえば学問なら、授業を聞いているときよりも、誰かに教えているときのほうが勉強になる。人は誰かからほどこしを受けるときよりも、誰かに分け与えるときのほうが成長できる生き物だ。これは勉学に限らない。
たとえば恋愛や友情――人間関係について洞察が深まるのは、誰かに悩みを打ち明けたときよりも、誰かの悩みを聞いているときだ。自分が悩んでいる時、ヒトは視野狭窄に陥ってしまう。けれど誰かの悩みを聞いて、ともに解決しようとしているとき、ヒトはより広い視野でものごとを考えられる。自分の経験や知識を総動員して、相手の悩みに共感しようとする。だからこそ自分よりも「幼い」友だちが必要なのだ。そういう友だちは、あなたの人間性に「厚み」を与えてくれる。あなたをホンモノの大人にしてくれる。裸の王様になってはいけない。裸であることを指摘してくれるのは、いつだって年下の人々だ。
自分よりも経験が劣っていたり、知識が少なかったり――そういう相手を「バカwww」と笑い飛ばすのは簡単だ。けれど、それってダサい。子供相手にムキになる大人って、ほんとうにカッコ悪いよ。相手の「幼さ」を受け止めて、なおかつ子供のような好奇心を失わない人、年下の仲間とも一緒に驚いたり喜んだりできる人、そういう人こそホンモノの大人ではないか。
あなたの未熟を教えてくれる、そしてあなたの成熟度を試してくれる、そんな年下の友だちを見つけよう。
これからの数年間で、あなたは最低3人の友だちを作ればいい。年上の友だち、タメ歳の友だち、そして年下の友だちだ。お気づきのとおり、これらは実年齢と一致していなくてもいい。あなたよりも年下だけど、とてつもない経験や知性を持っている人がいるかもしれない。あなたよりも年上だけど、ライバルとして肩を並べてくれる人がいるかもしれない。
何より大切なことは、あなたが「いい友だち」になることだ。あなたにとって相手がそうであるように、あなたも相手を成長させられる人でなければいけない。年上の友だちには、いい年下の友だちとしてふるまおう。自分よりも「幼い」友だちに対しては、きちんと年長者として導こう。
ヒトは多面的な生き物だ。ある面ではあなたよりも幼いヒトが、他の面ではあなたに先んじているかもしれない。自分よりも「年上・同い年・年下」――それぞれの要素を相手から見つけ出せるようになったら、それは、あなたとその人とがホンモノの友情で結ばれた証拠だ。
部活やサークルの勧誘に、クラスの懇親会――入学したばかりのころは、様々な誘いがあるだろう。大人数で騒ぐのが苦手な人からすれば、面倒くせぇと叫びたくなることもあるだろう。けれど私としては、そういう「出会いの場」に参加することをオススメしたい。あなたと同じように「面倒くせぇ」と思っている誰かが参加していて、あなたと生涯の大親友になるかもしれない。友だちを増やすためではなく、代えがたい誰かと出会う確率を高めるために、懇親会や新入生歓迎会にはぜひとも足を運んでほしい。
月並みな言葉だけど、「にんげん」とは「人」の「間」と書く。個体と個体とのあいだに横たわるものが――すなわち社会性が、ヒトを人間たらしめるのだ。どんなにカネを持っていても、どんなに異性からモテても、友だちの一人もいない人は「人間」とは呼べない。他者を仲間として認めることができなければ、私たちはただの毛が薄いサルだ。そのサルを人間へと育ててくれるのは、ほかでもない友人たちなのだ。
願わくば、あなたにすてきな出会いがありますように。
ご入学おめでとうございます。
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