「会社で褒められちゃいましたよ~」
担当編集者のJさんはホクホクした笑顔で言った。拙著『会計が動かす世界の歴史』の打ち上げの席である。新宿三丁目の小さな店で、ステーキ肉をつついていた。
「褒められた?」
「こんな書き手をどうやって見つけてきたんだ? と上司に言われました」
本当であれば光栄なことだ。
私の文章力は、はてなブックマークのコメントで袋叩きにされながら鍛えられたものだ。ブログの読者諸賢には感謝せずにいられない。 ビジネス書が粗製乱造(失礼)される時代にあって、拙著は無事に重版を果たし、黒字化できたらしい。
担当編集者の職場内での評価にちょっとでも貢献できるのは、作家としては嬉しい。
会計が動かす世界の歴史 なぜ「文字」より先に「簿記」が生まれたのか
- 作者: ルートポート
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/02/01
- メディア: 単行本
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「ところで」とJさんは言った。「Rootportさんってお暇なとき何されています?」
「相変わらずネットで動画をダラダラ見ていますよ。Vtuberのもこ田めめめちゃんが可愛くてですね…」
「羨ましいですねー。最近は全然動画を見る時間がなくて」
当然だろう。
昨今ではどこの出版社でもビジネス書とラノベの編集部は粗製乱造ぎみ(失礼)で、1人の編集者が抱えている著者の数は多い。ましてやJさんは粗造乱造の流れ(失礼)に逆らうように、重めの――薄っぺらいハウツー本ではなく教養が身につくような――本を好んで作っている。
仕事量を考えれば、くだらない動画を見ている暇はないはずだ。
「何かオススメの動画とかあります?」
「そうですね…。この動画だったらJさんにも楽しんでいただけるかも?」
こうして紹介したのが三崎律日さんの投稿なさっている『世界の奇書をゆっくり解説』シリーズだった。
「これはwww 参ったなwww」
サムネイルと動画の説明文を見ただけで、Jさんは笑った。
タイトル通り、世界中に散らばる「奇書」の歴史を解説する動画だ。著者自らが狙って奇書として書いたものではなく、歴史の変遷により後世の人々から「奇書」と見做されるようになってしまった本を紹介している。
「いやー、参った!」
「あの…どうされました?」
Jさんは真剣な顔で言った。
「Rootportさん。ぼく、また褒められちゃいますよ」
その後は早かった。
Jさんは帰りの電車で動画にざっと目を通し、数日後には三崎さんと連絡を取りつけ、爆速で企画書を書きあげて編集部の会議を通し、私のお気に入りの動画は晴れて書籍化を果たすことと相成ったのである。
「ちなみに巻末収録の『解説』はRootportさんに書いてもらいますので」
「あっ、はい」
そういうことになった。
◆ ◆ ◆
というわけで、巻末の「解説」を担当した『奇書の世界史』が8月23日に発売されます。三崎さんがすでに告知動画を投稿なさっていますが、視聴者からの反応は大変良好です。というか熱量がヤバい。
もともとファンだった人間からすると、まずは1人でも多くの人にこの動画シリーズを見ていただきたいです。めっちゃ面白いから! 後悔させないから!!
そして動画の内容を気に入っていただけたなら、書籍版のご購入をご検討いただけると嬉しいです。何卒よろしくお願いします。