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▼西の大海・洋上──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
太陽 ｷﾞﾗｯ
衛兵長「…み、水が…飲みたい…」
元・剣衛兵「…たい…」
元・槍衛兵「へへ…。俺たち、死ぬのかな…」
元・盾衛兵「…ど、どうか…気を、確かに…」
女騎士「…ううむ、みんなぐったりしているのだ…」
朱眼船長「…女騎士さんも一緒じゃないか…」
片耳ゴブリン「…み、みなさん…あれを見るです…！」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
銀鱗航海士「船首(おもて)がどうかしましたか？」
片耳ゴブリン「もっと遠くです！…水平線のあたりに…白いものが…」
朱眼船長「たしかに、何か浮いているね」
銀鱗航海士「ちぎれた雲では…？」
女騎士「…遠くてよく見えないのだ」
▼半刻後──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「…お、おい…あれは船では…？」
元・剣衛兵「…では…？」
海賊たち ｻﾞﾜｻﾞﾜ…
元・槍衛兵「へへ…。ついに幻が見えるようになっちまった…」
元・盾衛兵「いえ、幻というわけではなさそうです…！」
朱眼船長「たしかに船のようだね。それも、かなり大きい」
銀鱗航海士「しかし、解せませんね…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「同感だね」
女騎士「…何がだ？」
片耳ゴブリン「あの船、さっきからずーっとあそこにあるです！動き、ないです！」
女騎士「…錨を降ろしてるのでは？」
朱眼船長「それが妙なんだよ。こんな良い風が吹いてる日に、なぜ錨を降ろす必要がある？」
女騎士「言われてみれば、たしかに…。陸地も見えないような海の真ん中で、じっと停まっている。なぜだ？」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「あの船はこのボートの針路上にある。いずれ近づけば分かるさ」
元・槍衛兵「へへ…。やった！助かる…。助けてもらえるんだ…」
元・盾衛兵「だといいのですが…」
▼さらに半刻後──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「あの船、どこかで見覚えがあるような…」
元・剣衛兵「…ような…」
元・盾衛兵「高いマスト、黒い船体…。もしや、黒鳥号では？」
元・槍衛兵「へへ…。そんなバカな…。そんな偶然、ありえない…」
女騎士「いいや、よく見ろ…！」
朱眼船長「あの三角帆(ジブ)は間違いない、黒鳥号だ！」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
銀鱗航海士「ですが、どうしてこんな場所に？」
片耳ゴブリン「助けに来てくれたです？」
女騎士「あの帝都商船に限って、そんなことをするとは思えないのだ。何より、あそこで停泊している理由はなんだ？」
片耳ゴブリン「はて～？」
朱眼船長「もっと近づいたほうがよさそうだね。…お前たち、オールを出しな！」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
海賊たち「「「アーイ！」」」
朱眼船長「行くぞー!!」
ｴｯｻﾎｲｻ…ｴｯｻﾎｲｻ…
銀鱗航海士「見たところ、ずいぶん不安定に揺れています」
朱眼船長「錨を降ろしているわけじゃなさそうだ」
片耳ゴブリン「だけど、裏帆を打たせてあるですよ…？」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「つまり錨も降ろさず、かといって帆で風を掴んでいるわけでもなく…」
朱眼船長「…ただ波間に漂うに任せているというわけだ。ますますもって妙だね」
銀鱗航海士「何より、船乗りの姿が見えません。甲板に誰もいませんよ…？」
衛兵長「漕げー！漕ぐんだー！」
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元・剣衛兵「そうだー！漕ぐんだー！」
元・盾衛兵「は、はい！頑張ります！」
元・槍衛兵「へへ…。助かる…助かるんだ…」
ｴｯｻﾎｲｻ…ｴｯｻﾎｲｻ…
衛兵長「もたもたするなーッ！」
女騎士「衛兵さんたち、ずいぶん張り切っているのだ…」
朱眼船長「やる気があるのはいいが、周りとペースを合わせてくれるかい？あんたらだけが気合いを入れても、ボートがまっすぐ進めなくなるだけだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「ならば、お前たちが漕ぐペースを上げるのだな。こんな狭いボートはこりごりだ！早く黒鳥号に乗せてもらう！」
ｴｯｻﾎｲｻ…ｴｯｻﾎｲｻ…
銀鱗航海士「あいつら、あの船を見つけたとたんに元気になりましたね…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「まあ、元気がないよりはマシじゃないかい？」
女騎士「だが、黒鳥号のほうも漂流しているようなのだ。ぬか喜びにならなければいいが…」
片耳ゴブリン「あの船、いったい何があったです？船長どう思うです？」
朱眼船長「さっき波で大きく揺られたときに甲板が見えたが…やはり黒鳥号には誰も乗っていないようだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「た、たしかにそのようだ。認めたくないが…」
元・剣衛兵「ないが…」
銀鱗航海士「船底に穴が空いて、全員が避難した後だったりして…」
女騎士「嫌なことを言わないでほしいのだ…」
片耳ゴブリン「もしかして、海賊にやられたです？」
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元・槍衛兵「へへ…。もしそうなら、とっくに火を付けられて沈められているはずだ…」
朱眼船長「いいや、滅多なことがないかぎり、海賊は船を燃やさない」
銀鱗航海士「周囲数海里から他の船が集まってきてしまいますから」
元・槍衛兵「チッ」
元・盾衛兵「そもそも、海賊ならあの船を我が物にするはずです。漂流させるはずがありません」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「まあ、そうするだろうね。…なんだい、あんたには海賊の素質があるんじゃないか？」
元・盾衛兵「い、いえ！そんな滅相もない！」
銀鱗航海士「あるいは乗組員を皆殺しにして…」
銀鱗航海士「…船だけ捨てる理由があったのでは。海賊に襲われたときに船底に穴が空いて──」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「もうその話はいいのだ…」
衛兵長「甲板に人の姿が見えないだけで、もしかしたらみんな船室にいるのかもしれん」
元・剣衛兵「なるほど！そうかもしれません！」
女騎士「だが、だとすると…」
朱眼船長「…乗組員がみんな熱病か何かで寝込んでいることになるね」
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銀鱗航海士「疫病でもない限り、誰かしら当直の者が甲板に出ているはずです。まして、こんな好天なら」
ｴｯｻﾎｲｻ…ｴｯｻﾎｲｻ…
女騎士「む！船尾(とも)からロープが垂れている。あそこから甲板に登れそうなのだ」
一同「「「おーい！おーい！」」」
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女騎士「…やはり、返事はないのだ」
朱眼船長「勝手に上がらせてもらうしかないね」
女騎士「念のため武器を装備していきたいが…かまわんか？」
朱眼船長「ああ、何があるか分からない。戸棚を開けよう」
片耳ゴブリン「カトラスを返してもらえるです!?」
衛兵長「待て！ならば我々が女騎士さんに同行しよう！」
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銀鱗航海士「あの船に早く乗りたい気持ちは分かりますが…」
朱眼船長「どうせ、あたしらに武器を持たせたくないのだろう。衛兵さんの考えも分かる。あたしらはボートで待っているよ」
衛兵長「ふんっ！わ、分かればいいのだ。分かれば…」
▼黒鳥号、甲板──。
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ｷﾞｭｯ…ｷﾞｭｯ…
女騎士「…よ…っと！」ｽﾀｯ
衛兵長「…見れば見るほど、大きな船ですね」
女騎士「長さは羚羊号より二回りは大きいな。だが、幅はあまり変わらないし、船尾楼(プープデッキ)はむしろ低そうだ」
盾衛兵「これが、高速航行に適した船体…」
剣衛兵「おーい！おーい！」
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槍衛兵「誰かーっ！」
たわし ｺﾛｺﾛ…
衛兵長「…静かなものですね」
女騎士「放置された掃除用具が、船の揺れにあわせて転がるばかりなのだ…」
盾衛兵「音は…？」ｶﾞﾊﾞｯ
女騎士「まさか船底に穴が？」ｶﾞﾊﾞｯ
ｼｰﾝ
女騎士「…大丈夫そうだ」ﾎｯ
槍衛兵「…あっ！水樽だ！」ﾀﾀｯ
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剣衛兵「や、やったー！」ﾀﾀｯ
衛兵長「は、走るな、順番だ！」ﾀﾀﾀｯ
盾衛兵「み、みなさん！待ってくださ～い！」ｵﾛｵﾛ
女騎士「…まあ、ノドが渇いていては船内の探索にも差し支える。ただし、一気飲みはしないほうがよいのだ。胃が驚いてしまう」
衛兵長「うぅ…これは…」ｽﾞｯ
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剣衛兵「ひさしぶりの…水…」ｽﾞｽﾞｯ
盾衛兵「生き返ります…」ｽﾞｽﾞｯ
槍衛兵「へへへ…。うめえ、うめえよお…」ｽﾞｽﾞｽﾞｰｯ
女騎士「うむ、HPが回復するのを感じる。とはいえ、私たちだけが飲むのは後ろめたいな…」
衛兵長「…そうですかな？」
衛兵長「ともかく、船内の探索を済ませましょう。誰か残っているかもしれない」
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女騎士「うむ！」ｽﾁｬｯ
ｶﾞﾁｬ…ﾊﾞﾀﾝ…
ｷﾞｯ…ｷﾞｯ…
衛兵長「もしもーし」
剣衛兵「もしもーし」
槍衛兵「誰かいないかー？」
盾衛兵「いませんかー？」
女騎士「…人の気配がないのだ」
ｶﾞﾁｬｯ…
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衛兵長「ここは食堂のようですな」
剣衛兵「そのようです！」
槍衛兵「…ひっ！な、何だこれ！」
盾衛兵「テーブルの上に、料理が並べられたまま…？」
女騎士「綺麗に盛りつけられたローストビーフ、グラスのワイン…。まるで、さっきまで晩餐をしていたような…」
衛兵長「…冷えてはいますが、まだ肉にみずみずしさが残っています。放置されてから数日でしょうな」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
剣衛兵「ええ、数日でしょう」
女騎士「つまり、数日前にこの船で何かがあった？」
盾衛兵「食事を途中で切り上げて、慌てて船から逃げ出すような出来事が…」
槍衛兵「へへ…。気味が悪いや…」
衛兵長「ここは二手に分かれましょう。黒鳥号が捨てられた理由を調べるのだ」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「だが、単独行動は避けたほうがいい」
剣衛兵「でしたら、自分は衛兵長についていきます！」
槍衛兵「お、俺は…人数の多いほうにつくぜ…！」
女騎士「となると…」
盾衛兵「…僕は女騎士さんとご一緒します」
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