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▼黒鳥号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「おーい、漁師さん!聞きたいことがあるのだーっ!」
漁師 ナンダー?
女騎士「レースは終わってないかー?真鱈岬には、まだ船は着いてないだろうなー?」
漁師 オウヨー!
衛兵長「おうよ?」
女騎士「肯定の意味だろう。よかった、私たちが先頭だ」
朱眼船長「本当に先頭になるには、あの旗艦を抜かないとダメだけどね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「うーむ、旗艦との距離がぐんぐん詰まっておる…」
剣衛兵「ええ、どんどん近づいています」
槍衛兵「へへへ…。このまま追い抜けるんじゃねえか…?」
盾衛兵「これが黒鳥号の実力なんですね…!」
片耳ゴブリン「船長!10時方向に岩礁、2時方向に砂州があるです!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
銀鱗航海士「どちらに近づきすぎても座礁する恐れがありますね…。このあたりは海図が不充分です。安全を期すなら、岩礁と砂州のちょうど真ん中を通り抜けるべきかと」
朱眼船長「もちろんそうするさ。ただし、問題は…」
女騎士「あの旗艦も同じ航路を取っているのだ!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵長「このままだと、ぶつかってしまうのでは…!?」
剣衛兵「ええ、ぶつかってしまいます!」
盾衛兵「ちょ、ちょっと…待ってください…!」
槍衛兵「ひぇ~!」
朱眼船長「がはは!あたしらを見くびるとどうなるか、教えてやろう!」
▼帝都商船旗艦、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
家臣「や、やつらは針路を変えそうにありません!こちらに突っ込んできます!」
船団長「ぐむ…。やけくそになったのか?」
掌帆長「どうします?本船の針路を変えますか?」
船団長「このあたりの海底がどうなっているか分からん。この航路を外れるわけにはいかない」
水夫たち「だ、だったら、少し速度を落としましょう!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
水夫たち「これ以上の加速は無理です!」
掌帆長「…黒鳥号との衝突を避けるには、そうするしかないかと」
船団長「…」
家臣「ど、どうしますか…?」
船団長「…速度は、落とさん」
一同「「「…!!」」」
家臣「そんな…」
船団長「いいか、二度は言わん!本船もこのままの航路に突っ込む!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
水夫たち ザワザワ…
掌帆長「し、しかし…それでは万が一、衝突したら──」
船団長「ギリギリのところで避ければいいだけの話だ。…どけっ!私が舵を握る!…さあ、来い。海賊ども。根性比べと行こう!」
▼黒鳥号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「…向こうの船長も、なかなか骨のあるやつのようだね」
銀鱗航海士「こちらが接近しているのに、一切速度を落としません!」
片耳ゴブリン「ひぇ~!お助けです~!!」
女騎士「もしも衝突したらどうなる?」
銀鱗航海士「お互い無事では済まないでしょう」
銀鱗航海士「どちらも重量級の大型船。しかも、かなりの勢いがついています。このまま行けば右舷を思い切りぶつけることに…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
槍衛兵「そ、そうなると…?」
銀鱗航海士「運が良くても、船体が歪んで側面に大穴が空くでしょう。」
盾衛兵「運が悪ければ?」
銀鱗航海士「転覆、沈没ですね」
朱眼船長「そうならないようにするのが、船乗りの腕の見せ所だね」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「あ、安全運転で頼むのだ」
槍衛兵「…やめてくれよぉ!せっかく陸地が見えたんだ。このまま無事に上陸させてくれよぉ!」
朱眼船長「…」ニヤッ
銀鱗航海士「…」ニコニコ
槍衛兵「お、お前ら…やっぱり正気じゃねえ!」
槍衛兵「ねえ、衛兵長!こいつら、おかしいですよ!自分から船をぶつけようとするなんて…」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
盾衛兵「お、落ち着いてください」
槍衛兵「衛兵長、こいつらを止めましょう!こちらの制止を聞かないんだ。これも反逆ですよ!」
衛兵長「…」
剣衛兵「…衛兵長?」
槍衛兵「衛兵長ってば!」
衛兵長「…いいや、ここは海賊たちに任せよう」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
衛兵たち「「「…!?」」」
衛兵長「この航海を通じて、海賊たちの腕は充分に分かったはずだ。技術、知識…。今さら、あの者たちを疑う理由はない」
剣衛兵「で、では…」
衛兵長「そうだ。今は朱眼船長(キャプテン・レッドアイ)を信じるのだ!」
黒鳥号 ザッ…ザッ…ザァーッ
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
旗艦 ザァァアア!!
朱眼船長「行くぞぉー!」
海賊たち「「「アーイ!!」」」
船団長「させるかぁー!」
水夫たち ウワーッ!!
舵 ギギギギ…
帆布 バタバタバタ…
索具 ギチギチ…
女騎士「ぶ、ぶつかるのだ~!」
銀鱗航海士「いいえ!この針路なら…すり抜けられます!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
槍衛兵「ほ、本当かよ?もうお互いの表情が分かるほど近づいているんだぞ!?」
盾衛兵「向こうの甲板に飛び移れそうな距離です!」
衛兵長「…」ゴクリ
剣衛兵「…」ゴクリ
片耳ゴブリン「命がいくつあっても足りないです~!」
女騎士「…む!あそこにいるのは!?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
家臣「…あれは、女騎士では!?」
女騎士「その船には政府の元関係者が乗っていると聞いていたが…あなただったのか!こうして言葉を交わすのは初めてだな!」
家臣「あなたがやってきた暴挙の数々…話には聞いていますよ!」
女騎士「暴挙とは心外なのだ」
舵 ギギギギ…
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
索具 ギチギチ…
片耳ゴブリン「右舷がこすれるです~!」
銀鱗航海士「いいえ、まだ大丈夫…。ですが、マストの接触に注意してください!」
朱眼船長「任せな!」ニヤニヤ
女騎士「…こんな場所でなければ、正式に挨拶するのだがな」
家臣「…こっちこそ!」
家臣「いずれまた、新大陸でお会いしましょう!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
女騎士「うむ、楽しみにしているのだ!だが、今は──」
黒鳥号 ザッ…ザッ…ザァーッ
女騎士「一足お先に、失礼するのだ!」
家臣「~~~!!」
盾衛兵「相手を追い抜いていきます!」
槍衛兵「すげえ!すげえや!」
銀鱗航海士「残り10メートル…6メートル…3メートル…。抜きました!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
片耳ゴブリン「あはは!旗艦がどんどん後ろに遠ざかっていくですよ!」
衛兵長「…やった」ボウゼン
剣衛兵「ええ、やりました…」ジシツ
槍衛兵「本当に抜いちまった!」
盾衛兵「ぼくたちの船が、勝った…」
▼帝都商船旗艦、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
船団長「くそぉ!」バンッ
掌帆長「まさか黒鳥号があれほど速いとは…。こうして眺めている間にも、みるみる距離が開いていきます」
船団長「ぐぬぬ~!!」バンバンッ
家臣「心中お察しします…」
船団長「察するだと?私が何を悔しがっているか分かるか!?」
家臣「…黒鳥号に抜かれたからではないのですか?」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
船団長「違う!見ろ、黒鳥号は私の船団にいたときよりも速いだろう!私の育てた水夫たちよりも、死者の銃爪の連中のほうが腕が立つとは…」ガクッ
掌帆長「海賊ごときに負けるなんて…」
水夫たち ボウゼン…
家臣「こうなっては仕方ありません。じつは…レースに負けたときのことは考えてあります」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
船団長「…貴様は最初から、私たちが負けると思っていたのだな」ギリッ
家臣「いいえ、万が一の『策』を授けてもらっていたのですよ。私の『後援者』からね」
掌帆長「後援者とは、どなたなのです?」
家臣「それを教えるわけにはいきませんが…。この船を『大林檎島』に向かわせてください」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
船団長「大林檎島、だと?」
掌帆長「ここから南に数日の場所ですね」
家臣「ええ。大河の河口にある中州の島です。帝都商船には、あの島の占有権が認められています」
船団長「なっ!聞いていないぞ!」
家臣「…あの島なら、川をさかのぼって、かなり内陸部まで通商網を作ることができます。悪い話ではないでしょう」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
船団長「ぐぬぬ…」
家臣「帝都商船が不要だと言うなら、他の業者に島の開発を委託しますが…?」
船団長「わ、分かった。物資には余裕がある。このまま大林檎島に向かうとしよう」
船団長「私も、あの海賊どもと顔を合わせたくないと思っていたところだ。真鱈岬に入港しないで済むならせいせいする…!」
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
家臣「そう言っていただけると助かります」ニコッ
▼黒鳥号、甲板──。
— Rootport (@rootport) 2016年9月5日
朱眼船長「ようし、真鱈岬まで一直線だ。休んでいるヒマはないよ!」
女騎士「見事な腕前だったのだ」
朱眼船長「今さら何を言ってるんだい。あたしらの腕を見込んだからこそ雇ったんだろう?」
女騎士「たしかにその通りだが…。しかし、改めて言わせてほしい。ありがとう」
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