ブログにせよ、ニュースサイトにせよ、記事のアクセス数を伸ばすには何が大切だろう?
内容の斬新さだろうか、それとも公式Twitterのフォロワー数だろうか。もちろんそれらも大切だが、何より大きな影響を与えるのは記事のタイトルだ。
タイトルが面白くないと、その記事は読まれない。
どんなに好きなニュースサイトだろうと、すべての記事を読むわけではない。どんなに信頼できるツイッタラーのつぶやきだろうと、紹介されたすべてのリンクを踏むわけではない。私たちは面白そうなタイトルの記事から順番に読んでいく。
したがって記事のアクセス数を伸ばしたいのなら、タイトルの決め方には細心の注意を払うべきだ。
私の場合、以下の4点を意識して記事タイトルを決めている。
- 記事の内容がストレートに伝わること
- しかし内容のすべては明かさないこと
- 読者に身近な言葉を使うこと
- 煽りすぎないこと
では、順番に紹介していこう。
1.記事の内容がストレートに伝わること
ブログの記事のタイトルは、新聞や雑誌でいう「見出し」に相当する。
一昔前は、ヒネリの効いた見出しが「いい見出し」だとされていたらしい。ウィットのある言葉遊びで、読者の印象に残りやすいからだ。たとえば、こんな見出しが高く評価されていたそうだ:
「13歳でも、やればできる」
しかし現在のネットメディアでは、こういうタイトルは好ましくない。内容が分からないからだ。Gigazineやまなめはうす等のニュースサイトにこのタイトルが貼られていたとして、あなたはリンクを踏むだろうか。私なら踏まない。内容が分からないから、リンク先に自分の欲しい情報があるかどうか判断できない。だから、クリックしない。
ネットメディアで読者のクリックを誘うには、何よりもまず「内容が伝わること」が大切だ。現在、新聞や雑誌のWEB版を見渡してみると、ヒネリの効いた言葉はほとんど見かけない。端的に内容の分かるタイトルばかりだ。たとえば前述の「13歳でも、やればできる」を現代風に書くとこうなる:
「福岡の女子中学生(13)が妊娠、出産」
このようにストレートなタイトルにしたほうが、読者の野次馬根性をくすぐることができるし、クリックにつながる。
さらに2chまとめサイト等ではゴシップ性が高くなるので、同じニュースでもこんなタイトルになる:
「福岡のボテ腹JCが出産。なお相手のロリコン男は逮捕された模様wwwww」
いいタイトルとは、「あなたの欲しい情報がここにありますよ」と読者に伝わるタイトルだ。中学生の妊娠・出産というゴシップを喜ぶのは倫理的に問題があるかもしれないが、少なくとも、ここでは「読者の欲しい情報」と「記事のタイトル」がぴたりと一致している。ゴシップを読みたい人に向けて、「ここに美味しいゴシップがあります」と発信するタイトルになっている。
記事のアクセス数を伸ばしたいのなら、できるだけ内容をストレートに伝えるタイトルにするべきだ。ヒネリの効いた「うまいこと」を言おうとするよりも、読者に「あなたの欲しい情報はここにあります」と伝えることを心がけたほうがいい。
この条件に当てはまる記事をこのブログから選ぶなら、以下の2つ:
■普段ウイスキーを飲まない人にお勧めのシングルモルト
■読んでないとヤバイ(?)ってレベルの名作SF小説10選
何のヒネリもない、バカみたいなタイトルだ。しかし頭を悩ませたあげくイマイチなタイトルをつけてしまうぐらいなら、バカみたいに愚直な言葉を選んだほうがいい。これがネットメディアで記事のタイトルを決めるときの第一条件だ。
2.しかし内容のすべては明かさないこと
矛盾するようだが、タイトルで記事の内容をすべて明かさないほうがいい。読者の興味を削ぐからだ。タイトルだけでは充分に理解できないからこそ、読者はリンクをクリックする。記事のアクセス数を伸ばしたいのなら、タイトルには謎を残すべきだ。
たとえば大学生が日記をつづるブログで、こんなタイトルがあったとする。
「今日は昼まで爆睡、3〜4限は代返頼んでツレとカラオケ。マジ人生なめてるwww」
ブログの目的が日々の記録をつけることなら、このタイトルでも問題ない。ブログは楽しく、自分の好きなように書けばいい。しかし記事のアクセス数を伸ばしたいのなら、こういうタイトルは避けたほうがいい。タイトルだけで、内容の8割以上を想像できるからだ。おそらく個人の日常を箇条書きにしたような記事で、ほとんどの読者にとっては役に立たない情報だろう。
読者のクリックを誘うタイトルとは、興味をくすぐりながらも記事の全容は明かさないタイトルだ。この条件に当てはまる記事をこのブログから選ぶなら、以下の2つ:
■行きつけのスタバのマネージャーがすごかったという話
■文章を「書ける人」と「書けない人」のちがい
どちらの記事も、大雑把な内容だけならストレートに伝わるはずだ。
一般的に言って、「スタバは接客に力を入れている」というイメージがある。そのマネージャーが「すごかった」というのなら、中間管理職など誰かをマネージする立場の読者は興味を示してくれるだろう。あるいは、たんにスタバ好きな読者も興味を持つはずだ。しかし、何がどうすごかったのかは、このタイトルからは分からない。それが読者の興味をさらにかき立て、クリックに向かわせる。
また、うまい文章を書きたいと考えている人なら誰でも、「書ける人」と「書けない人」の違いに興味があるはずだ。しかし具体的にどんな違いがあるのかは、記事のタイトルだけでは分からない。「詳しいことを知りたいなら内容を読んでね」というメッセージがこのタイトルには含まれている。
話はそれるが、ここでは「違い」という漢字ではなく「ちがい」というひらがなをタイトルに用いている。これはブラウズした際の視認性を高めるためだ。媒体を問わず、ネットメディアの記事は高速でスクロールされてブラウズされる。漢字の多すぎるタイトルは読者の目に止まりづらく、見落とされる可能性がある。反対に、漢字が少なすぎても視線を引きつけにくい。適度な漢字を含んだ読みやすい字面を心がけたい。
話を戻すと、タイトルには謎を残したほうがいい。タイトルだけで内容の8割が分かる記事は、誰もクリックしないからだ。内容ができるだけストレートに伝わり、なおかつ全容を掴むことはできない。そういうタイトルを心がけたい。
3.読者に身近な言葉を使うこと
どんなに面白くて価値のある記事でも、読者になじみのない内容なら読まれない。これはネットメディアが抱える問題の1つだ。読者は自分の読みたい記事だけを選ぶため、その人の生活圏外の情報にはそもそも触れようとしない。ほんとうは読めば面白いと感じるはずの記事であっても、だ。こうしてネットの世界はクラスター化していく。
だからブログ記事のタイトルを決めるときは、できるだけ読者に身近でなじみ深い言葉を選ぶべきだ。単語にせよ、言い回しにせよ、多くの読者の生活圏内にある言葉から選んだほうがいい。
■お金で買っていいモノ、買ってはいけないモノ/『のんのんびより』第10話の感想
たとえば、こちらの記事にはテレビアニメの感想が書かれている。が、もしもこの記事のタイトルが「アニメ『のんのんびより』第10話を見て」だったら、そのアニメに興味のある人しかクリックしないだろう。しかし「お金」は誰にとっても身近なものだ。スーパーやコンビニに入ったとき、私たちは日常的に「買うべきもの」と「買うべきでないもの」の判断をしている。できるだけ身近な言葉を選ぶことで、より多くの読者に届けることができたのが、こちらの記事だった。
このブログ「デマこいてんじゃねえ!」で過去最高のブックマーク数を得ている記事も、同じ方法でタイトルがつけられている。
■かしこい人のニュース読解法/議論の苦手な人は何ができていないのか
内容は、大学生の英語ディベートで使われる思考法をまとめた記事だ。しかしタイトルが「英語ディベートで学んだこと」だったら、たぶん誰もクリックしなかった。また「政策を評価・決定する方法」でもアクセス数は伸びなかったはずだ。「かしこい人」「議論の苦手な人」という読者の興味をそそるフレーズを使い、さらに「ニュース」という身近なものを持ち出すことで、クリックに至るまでの心理的障壁を引き下げることができたのだろう。
「定番の言い回し」を使うのも、「読者の身近な言葉を使う」パターンに含まれる。
たとえば……
「○○をして分かった10のこと」
「××をしたら怒られた話」
「△△が○○な本当の理由」
「××を△△にするたった1つの冴えたやり方」
……等々、ネットメディアの記事タイトルには、「定番の言い回し」がある。
こうした言い回しを使うのは、読者の心理的障壁を下げて、クリックしやすくする効果があるようだ。
■お前ら電子書籍リーダーを買ってみろ、色々と捗るぞ。/青空文庫のオススメ10選
こちらの記事では、ライフハック系のブログや2chスレにありがちな「色々と捗るぞ。」という定型文を使った。じつを言うと、私自身はこういうありがちなタイトルをあまりクリックしない。興味をそそられるよりも、「またか」と思って倦厭してしまうからだ。ライフハック系の記事の内容は、どれも似たり寄ったりだ。つまり定型文のタイトルは、内容の8割が分かってしまうあまり良くないタイトルだと思っていた。
しかし実際には、こちらの記事はたくさんのブックマークを集め、PVを伸ばすことができた。記事のタイトルに悩んだときは、「よくある言い回し」に逃げてしまうのも悪くない。「内容がストレートに伝わる」「内容を明かしすぎない」という2つの条件を満たしていれば、充分にクリックを誘うことができる。
記事のタイトルを決めるときは、できるだけ読者に身近な言葉を選んだほうがいい。現在、ネットの世界はクラスター化が進んでおり、私たちはニーズに振り回されて、ウォンツに気づかない。「ほんとうは面白い情報」や「ほんとうは知っておくべき情報」を見落としがちだ。にもかかわらず、ネットを通じて世界のすべてを知った気になるのだ。
記事のタイトルに身近な言葉を選ぶのは、記事のアクセス数を伸ばすだけでなく、ネット上のクラスター化を打ち破る効果もある。また「定番の言い回し」を使うのは、記事を身近に見せる方法の1つだ。アニメに興味のない人にどうやってアニメの感想記事を読んでもらうか。電子書籍リーダーに興味のない人に、どうやってKindleの紹介記事を読んでもらうのか。できる限りたくさんのユーザーにリーチできる言葉選びを心がけたい。
4.煽りすぎないこと
「ブログのアクセス数を伸ばすにはどうすればいいですか?」と訊かれて、迷わず「釣りです」と答える人は多いだろう。読者の自尊心を傷つけ、怒らせるような記事。読者を「煽る」ような記事。そういう記事は、たしかに爆発的なアクセス数を叩き出せる。いわゆる炎上ビジネスというやつだ。
しかし「釣り」や「煽り」で集めたアクセス数は、一時的なものでしかない。
ブログに限らず、ネットメディアは検索からの自然流入が増えるとアクセス数が安定する。したがって記事の書き手は、いかにしてGoogleの検索順位を上げるかに頭を悩ますべきだ。そして炎上を誘うような「煽りすぎ」の記事では、検索順位はあまり上がらない。いつ読んでも価値が変わらないような、できるだけ誠実に書いた記事のほうが検索順位は上がりやすい。
たとえばGoogleで「シングルモルト」や「SF小説」を検索すると、結果の1ページ目には次の記事が表示される。(※2013/12/27時点)
■普段ウイスキーを飲まない人にお勧めのシングルモルト
■読んでないとヤバイ(?)ってレベルの名作SF小説10選
どちらの記事も、シングルモルトの魅力や、古典SFの魅力を端的に伝えようとした記事だ。あざとい「釣り」や「煽り」は排除しようと心がけた。長い目で見れば、こういう記事のほうが繰り返し読まれるし、アクセス数の向上に貢献してくれる。炎上を狙うのは敵を増やすだけで、長期的には損である。
この点で「失敗したな」と思っているのは、次の記事だ。
■あなたは「人から笑われない趣味」を持っていますか?
『アニソンの神様』というラノベの感想を書いた記事だ。内容には「煽り」がほとんどなく、作品の魅力をストレートに伝えるものになっていると自負している。しかし記事タイトルがよくなかった。やや「煽り」を含んだタイトルであり、はっきりと「記事のタイトルにはムカついた」というツイートも見かけた。好きなものを「好きだ」と紹介するのに、煽りはいらない。そう気づかされたのが、こちらの記事だった。
「釣り」や「煽り」で増えたアクセス数は、一時的なものでしかない。ムダに敵を増やし、長期的には何一ついいことがない。誠実な記事を地道に書いて、Googleの検索順位を上げるほうが、長い目で見ればトクだ。「釣り」や「煽り」はできるだけ排除するべきだし、記事のタイトルを決めるときも同じだ。
誰かを意図的に傷つけるような言葉を、記事のタイトルにすべきではない。
◆
ブログ等のネットメディアでは、できるだけストレートに記事の内容が伝わるタイトルにしたほうがいい。「あなたの欲しい情報がここにあります」と読者に訴えるタイトルを選びたい。
しかし内容が見えすぎてしまうタイトルも好ましくない。タイトルだけで記事の内容の8割がたが想像できてしまう、そんなタイトルは避けたい。タイトルには謎を残したほうが、読者の興味をかき立て、クリックを誘うことができる。
また記事のタイトルには、読者にとって身近な言葉を選びたい。ネットのユーザーは、「自分に関係なさそうな情報」に接しようとしない。日常生活で使う言葉や「よくある言い回し」を選んで、記事の内容が「あなたにも関係ありますよ」と感じさせるようなタイトルにするべきだ。
- 記事の内容がストレートに伝わること
- しかし内容のすべては明かさないこと
- 読者に身近な言葉を使うこと
- 煽りすぎないこと
記事一本あたりのアクセス数を伸ばしたいのなら、以上の4点に注意してタイトルを決めるといいだろう。
またタイトルの字数は20字程度、多くても30字以内に収めるのが無難だ。これには3つの理由がある。1つは、おそらく人間が一度に読める字数がそれぐらいであること。2つ目の理由は、ケータイで表示させたときに改行なしで表示できる文字数であること。3つ目の理由は、はてなブックマーク等のニュース集約サイトでは40字程度しかタイトルが表示されない場合が多く、ブログ名まで含めて表示させるには記事タイトルを短くしなければならないことだ。
たとえばテキスト系サイトの老舗デイリーポータルZは、記事のタイトルのつけ方が抜群にうまい。現在、トップページに並んでいる記事だけでも:
■世界一高かった水族館に行く
■産みまくれ!海亀産卵マシン
■科学的には熱い缶コーヒーは速く転がる?
いずれも内容がストレートに伝わり、かつ興味をかき立てるような謎のあるタイトルだ。読者に身近な言葉を選んでおり、「煽り」は感じられない。どの記事にも、エンタメ系のテキストサイトとして理想的なタイトルがつけられている。長く生き残っているサイトだけあって、いぶし銀の匠の技を感じる。
タイトルの面白くない記事は読まれない。ニュースサイトにせよ、Twitterのリツイートにせよ、私たちは「面白そうなタイトルの記事」から順番に読む。記事のアクセス数を伸ばしたいのなら、何よりもタイトルの決め方に力を注ぐべきだ。
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