『雨のふる日は』
――おぉー、ひさしぶり! ううん、へーき。あたしも今ついたトコだよ。とりあえず注文だけしちゃおうか。あたしは……カフェラテでいいや。アヤは? うん……わかった、カプチーノね。――すいませーん、注文お願いします!
雨、だいぶ強くなってきたね。開場が18時半で、19時に乾杯だっけ? みんなちゃんと来るかなぁ。カズオ先生も来るらしいよ、あたしが六年生のころの担任だった……。え、あたしって同窓会とか来るようなキャラじゃなかった? うーん、たしかに小学生のころのあたしってネクラだったからなあ。ものすごい人見知りで、クラスの子ともぜんぜん喋ってなかったし。――じつはね、今でも人見知りは治ってないの。口数が多くなったのは、それをごまかすためなんだよ。えぇーウソ! そんなに変わったぁ? 「口から先に生まれてきたみたい」だなんて、そんな……。まあ、あたしにも色々とあったのよ、イロイロと。
彼氏? いないよー、そんなの。
アヤこそどうなの、アヤってモテるでしょう? ――ハイハイ、そんな謙遜したってイヤミにしかなりませんって。そういえば最近、ケータ先輩とイイ感じらしいじゃん。誰から聞いたかって? ふふふ、あたしの情報網をなめてもらっては困るゼ。
あたしは恋愛のレの字どころか、ナベかんむりすらない生活を送っているよー。最近なにかと忙しいし。
ただ、あたしね――。
こういう雨のふる日は、ちょっとだけ思い出すの。小学生のころの、あの子のことを。
恋愛とかそういうのじゃなかったかも知れないけど、忘れられないんだ。
あの子、不思議な子だった――。
- 作者: Rootport
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