わりと新しいオタク用語に「バブみ」という言葉がある。
二次元美少女に対して「母親になってほしい」と感じる感情のこと、らしい。
Twitterを開くと、いい歳した男性たちが、自分よりもはるかに年下(という設定)のキャラクターに向かって「ママー!ママー!」と叫んでいる。ハッキリ言って理解不能なのだが、一部の男性オタクは美少女キャラに「少女性」と「母性」を同時に求めるてしまうらしい。
えっと…、よく語源も分からず、「バブみ」という用語を、今日初めて使ったのだが、あれかい?語源はイクラちゃンの「ばぶ―」のバブと同じなのかい?お爺ちゃんは、使っちゃダメと言われたのだが、そンなに危ない言葉なのかい?(小池一夫)
— 小池一夫 (@koikekazuo) 2015年12月1日
あの、新米提督が言うのもなンなのですが、皆さンは、艦娘たちに、「母性」と「少女性」を同時に求めているのですね。ズバリ言ってしまうと。そこが、このゲームの本質なのですね。(小池一夫)
— 小池一夫 (@koikekazuo) 2015年11月30日
「バブみ」という言葉が使われるのは、何も艦隊これくしょんの界隈に限らない。「バブみを感じてオギャる」という言い回しを、いたるところで目にするようになった。もはや一過性の流行ではなく、もしかしたら「萌え」や「ツンデレ」のように定着していくかもしれない。
日本社会は少子高齢化を経験しており、オタク業界も例外ではない。10代~20代の男性であれば、オスとしてガツガツと美少女たちに関わっていくという物語を受け入れやすいだろう。美少女キャラクターにも、そういう関係のなかでドラマを作りやすい人格が与えられがちだった。ツンデレ、クーデレ、etc、etc、etc……。
しかし高齢化したオタク男性にとって、もはやアニマルな本能むき出しで美少女に向き合うという物語は受け入れにくい。狙った女を落とせるかどうかというドキドキ、ハラハラは、思春期特有のものだ。30代をすぎて恋のアバンチュールを求めるのは難しい(※というか不健康ですらある)。結果として、今の自分を無条件で受け入れてくれる、まるで母親のようなキャラクターが好まれるようになったのだろう。
以上ことを念頭に置いてQUEENの『ボヘミアン・ラプソディ』を聴くと、「オタク趣味にハマって道を踏み外した男の歌」に聴こえてしまう。
たとえば歌い出しは、こうだ。
Is this the real life?
これは現実なのかIs this just fantasy?
それともただの幻か
つらく厳しい三次元の世界を抜け出して、初めて二次元の世界に踏み込んだ男の感想そのものである。『けいおん!』『きんモザ』『ごちうさ』、その他もろもろの日常系アニメを見てほしい。つらいことや嫌なものが一切混ざらない、純粋な理想化された世界。それが二次元だ。その世界を初めて目にして、彼は思わずつぶやいたのだ。「これは現実なのか?」と。
そして、印象的なサビ部分。
Mama, just killed a man
ママ たった今、人を殺してきた
オタクと言えばゲームだ。ゲームといえば対戦相手がいる。つまり、これはゲーセンで対戦相手をフルボッコにしたという報告である。ここでいう「ママ」とは、彼の一押しの二次元美少女キャラクターだ。おそらく格闘ゲームか何かの美少女キャラにハマったのだろう。
もしくは『艦これ』の深海棲艦を、代名詞的に「人」と呼んでいるのかもしれない。深海棲艦が人間と呼べるかどうかには疑問が残るが、それを言い出したら艦娘も同じである。お気に入りの美少女キャラクターを育て上げて、初めての強敵を倒して、彼はようやく気づいたのだ。自分は踏み越えてはいけない一線を越えてしまったのだと。
サビはこう続く。
Mama, life had just begun
ママ 人生は始まったばかりなのにBut now I've gone and thrown it all away
僕はそれをもうダメにしてしまった」
二次元にどハマりしたオタク男性の悲哀が、切々と歌い上げられている。
この後の歌詞も泣ける。
Goodbye everybody - I've got to go
さようなら みなさん 僕はもう行かなくてはGotta leave you all behind and face the truth
あなた方の元を離れ 現実と向かい合う時だMama, ooo - (anyway the wind blows)
ママ ああ ママI don't want to die
僕は死にたくないよ
転職だろうか? それとも結婚だろうか?
何かしら生活の変化によって、オタク趣味を捨てざるをえなくなった男性の悲鳴である。オタク趣味を辞めたくないと心が叫びたがっているのである。
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