こんなツイートを見かけた。
にわか女オタに「好きなアニメ何〜?」って聞かれたからレベルを合わせて、「有名なのだと化物語やラブライブとかですね」って言ったら「あーなんだ、結構にわかなんだねw、steins;gateって知ってる?見た方がいいよー、あと進撃の巨人もオススメ」とか言われてクソブチ切れてる
指切りげんマン@Qwerty_0302
この状況がなぜムカつのかといえば、自分がにわかだと思っている相手から、逆ににわかだねと言われたからだ。格下だと思っている相手から煽られれば、誰だって腹が立つ。ごく自然な心理だ。
しかし、である。
もしも相手に合わせて好きでもないものを「好き」と言っているなら、それはそれでおかしい。
自分の嗜好を隠すのは、「自分の好きなものを相手にも好きになってもらうスキル」が足りない証拠だ。その最たるものは「隠れオタク」なる人たちだろう。アニメが好きだと言ったらドン引きされるのではないか、マンガが好きだと言ったら笑われるのではないか。そんな恐怖にかられて、好きなものを「好き」と言えなくなってしまう人がいるようだ。
好きなものを「好き」と言えないのは、おかしい。
自分の好きなものを、相手にも好きになってもらうよう努力すべきではないのか。興味をそそるような方法で紹介して、思わせぶりな口調で挑発して、そのアニメを見ずにはいられない気持ちにさせるべきではないのか。相手のレベルに合わせて、相手の知っていそうな作品名をあげるほうが間違っている。たとえ相手が知らなくてもいいではないか。大切なのは、知りたくさせることだ。
そこで今回は、アニメやマンガに興味の無い人に『まどか☆マギカ』を見せる方法を考えてみた。
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1.自分の嗜好を語る。
「こ、この作品にはマミさんというキャラが……デュフフ……登場するんですけど、超絶魅力的なキャラでしてね……フヒヒ……け、けけ、健気で、強くて、だけど追いつめられたら意外ともろくて……フォヌカポウ……ま、守ってあげたくなるような子なんです……コポォ」
この方法では、相手はドン引きする。興味をくすぐる方法にはあまり適していないだろう。
2.位置づけを語る。
「アニメやマンガには『魔法少女モノ』や『戦闘美少女モノ』と呼ばれるジャンルがあります。『魔法使いサリー』や『セーラームーン』等が代表的な作品です。『まどか☆マギカ』はそれらに対するカウンター、逆張りの解答だと言われています」
この方法では、学究的な人なら興味を持つかもしれない。が、大抵は「ふーん」で終わるだろう。したがって相手の興味をくすぐるにはあまり適した方法とは言えない。
3.権威に訴える。
「学問的な研究の対象になるほどすごい作品なんです。サブカルチャー研究のみならず、フェミニズム等の問題提起もなされています。第15回文化庁メディア芸術祭では大賞を受賞しました。また、フランスのAnime & Manga 19th Grand Prixでは最優秀エスポワール賞を受賞しました」
この方法では、誰が相手だろうと「すごそう」なのは伝わる。しかし「見よう」と思うレベルには達しないはずだ。なぜなら、いまの世界にはすごいものが溢れているからだ。スポーツや芸術、芸能、政治、経済……。様々なジャンルに「すごいもの」が存在している。『まどか☆マギカ』がどんなにすごいアニメだろうと、それだけでは「見たい!」と思わせるには不充分だ。
4.世間に訴える。
「みんなが『まどか☆マギカ』を見ています。放送時には深夜にしては高めの2.3%の視聴率を記録しました。ニコ生で一挙放送をした際には約100万人が集まり、DVD/Blu-rayは2012年12月時点で約60万枚売れました。新聞や雑誌でも何度も取り上げられています。エヴァをしのぐほどの社会現象を巻き起こしているアニメです。これを見ておかないと、世間の流行から取り残されちゃうかもしれませんよ?」
この方法では、流行に敏感な人なら興味を持つはずだ。権威に訴える場合と同様、何となく「すごそう」なのも伝わる。みんなが見ているものなら見ておこうかな──、と考える人は多い。したがって、今までの方法ではいちばん興味をくすぐるという目的に適っている。
5.その人にとって大切な何かに訴える。
「この作品は10代、20代の若者を中心に人気が爆発した作品です。今では年齢の垣根なく見られています。きっと、あなたのお子さんも見ているはずです。ときには残虐なシーンもあります、子供っぽく見えるシーンもあります。しかし最後には、希望を感じさせる終わり方をします。これを見れば、現代の若者が何を喜び、何を恐怖するのか分かるかもしれません。あなたのお子さんの気持ちを理解しやすくなるかもしれません。一度ご覧になってはいかがですか?」
この方法なら、ほぼ確実に相手の興味をくすぐることができる。ポイントは、相手の「大切なもの」を正確に見抜くことだ。たとえば上記の例では思春期の子供を持つ親を想定しているが、もしも相手が子育てに興味のない人物だとしたら、この口説き文句は無意味になるだろう。
相手の価値観を読み取って、何を大切に思っているのか、そして何に興味を持つのかを判断する。相手の「大切なもの」に絡めて紹介する。この方法がうまくいけば、その人にとって『まどか☆マギカ』は無視できない存在になるはずだ。
◆
「自分の好きなものを相手にも好きになってもらうスキル」は、「相手の好きなものを好きになるスキル」と表裏一体だ。思い出してほしい。あなたにも、誰かから紹介されて「好き」になったものがあるはずだ。なぜあなたは、それを好きになれたのだろう。紹介されたとき、あなたの心の中では何が起きていただろう。「相手の好きなものを好きになった経験」をリバースエンジニアリングすれば、「自分の好きなものを相手にも好きになってもらう方法」が分かるはずだ。
人と同じものを好きになるのは、楽だ。
人と同じことをするのは、楽だ。
無責任にお互いを「イイネ!」と慰めあうだけで満足できるからだ。「なぜそれを好きなのか」「なぜそれをするのか」を問われることはない。当然、説明する機会もない。そして説明能力が痩せていき──端的にいえばバカになり──自分と違う嗜好の持ち主とは会話できない人間になってしまう。
人と同じものを好きになる必要はない。
人と同じことをする必要もない。
他人と違うことをすると決意した瞬間に、あなたは説明の機会に恵まれる。なぜそれが好きなのか、なぜそれをするのか、言葉を尽くして解説することになる。相手の興味をくすぐるには、相手を知ることが欠かせない。そして説明能力が伸長していき──大袈裟な言い方をすれば頭が良くなって──誰とでも理解しあえる人間になれるはずだ。
相手のレベルに合わせるのは、相手に対する侮辱だ。
自分の説明能力に対する敗北宣言だ。
だから臆することなく、好きなものは「好き」と言えばいい。
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