デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

夏休み向けエンタメ映画のご紹介

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Tumblr


いよいよ8月も始まり、夏本番ですね。
いつもはライトノベルばかり紹介しているRootportですが、じつは映画も大好きです。個人的にこれだけは見ておけって映画を10本選んでみました。
もう夏休みだし、気軽に観られて面白い映画をお探しの方、どうぞご参考に!




1.或る夜の出来事

或る夜の出来事 [DVD]

或る夜の出来事 [DVD]

◆あらすじ◆
ヒロインのエリーは大富豪のお嬢様。プレイボーイに熱を上げているのだが、父からは結婚を反対されている。ひょんなことから、彼女は深夜バスでマイアミからニューヨークへ向かうことになる。そこで乗り合わせた新聞記者・ピーターと座席を巡って喧嘩になって……。


◇みどころ◇
1934年の映画でありながら現在にも通じるラブコメの要素がギュッと詰まっている。ヒロインは典型的な“ツンデレ”だ。私は、90歳の祖母から紹介されてこの映画を知った。長崎出身の祖母は当時、東京の洋裁学校に通っており、寄宿舎で生活していた。五反田の映画館でこの作品を見たという。娘時代の祖母は一体どんな気持ちでこの作品を観たのだろう。映画は時代を超える。
なお、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第9話「瞬間、心重ねて」には「これは決して崩れることのないジェリコの壁!」というセリフがある。あのセリフはたぶん、この映画を意識しているのだと思う。




2.市民ケーン

市民ケーン [DVD]

市民ケーン [DVD]

◆あらすじ◆
新聞王として名を馳せたチャールズ・F・ケーンは、「バラのつぼみ(Rosebud)」という謎の言葉を残して死んだ。ニュース映画の編集者トンプソンは、この言葉の意味を調べようと関係者への取材を開始する。そして、一人の男の人生が浮かび上がっていく。


◇みどころ◇
1941年の映画であり、後世の映像作品に多大な影響を与えた作品だと言われている。ズーム、パン、フェードイン・フェードアウト。そして窓や鏡を効果的に使うなど、今では当たり前になった技法がこれでもかと詰め込まれている。「バラのつぼみ」の意味が明かされたときの驚きは、70年後の私たちにも新鮮な感動を与えてくれる。人生の厚みを感じること間違いなしだ。




3.十二人の怒れる男

◆あらすじ◆
物語は12人の男たちが会議室に入るところから始まる。彼らは陪審員で、父殺しの罪に問われた少年の裁判に評決を下そうとしている。誰もが少年の有罪(=死刑判決)を信じて疑わない中で、陪審員8番の男が「ちょっと話をしよう」と言う。はじめは彼を邪険にあつかう他の陪審員たちだが、冷静な推理の積み重ねに心が揺れていき……。


◇みどころ◇
1954年の映画。「法廷・密室モノ」の大傑作で、何度もリメイクされている。アメリカの陪審員制度を学ぶための教材にしている学校もあるのだとか。推理モノとしてすばらしいだけでなく、12人の男たちがみんなどこかにいそうな親しみやすいキャラクターであり、密室での人間ドラマとしても楽しめる。ぜひメモ帳を手に取って、登場人物たちと一緒に推理を楽しみたい。




4.サウンド・オブ・ミュージック

◆あらすじ◆
舞台は第二次世界大戦前夜のオーストリア、おてんばな修道女見習いのマリアは、名家の家庭教師をするように勧められる。彼女が向かったのはトラップ大佐という退役軍人の邸宅で、7人の子供たちは軍隊のように厳しくしつけられていた。問題児7人の心をマリアは歌で解きほぐしていく。


◇みどころ◇
1965年の映画。60年代はミュージカル映画の全盛期だった。個人的には『ウエストサイド物語』のほうが好き。どちらを紹介するべきか迷ったけれど、『サウンド・オブ・ミュージック』のほうがとっつきやすいと判断した。劇中の音楽はすべて名曲、一曲たりとも“外れ”がない。なお、70年代に入るとミュージカル映画は流行らなくなり、あっという間に姿を消してしまう。しかし『美女と野獣』『ライオン・キング』などのディズニー映画に受け継がれ、最近では2004年の『オペラ座の怪人』で存在感を示した。
60年代の映画では『サイコ』をはじめとするヒッチコックの作品群や、キューブリックの『2001年宇宙の旅』など、見ておいて損のない作品がたくさんある。が、ミュージカル映画というジャンルを忘れてほしくないので、こちらの作品を選んだ。




5.スティング

◆あらすじ◆
若き詐欺師ジョニー・フッカーはある日、大物ギャングの金をだまし取ってしまう。それが原因で、父親同然の詐欺の師匠をギャングに殺される。ギャングのボス・ロネガンに復讐するため、フッカーは伝説的な詐欺師ヘンリー・ゴンドーフを訪ねた。フッカーの依頼に乗ったゴンドーフは仲間を集め、巨額の詐欺を計画する。果たして二人はロネガンから金をまき上げることができるのだろうか?


◇みどころ◇
軽快なコメディ映画で、何度見てもスッキリした気持ちになる。未熟な主人公、老いを感じ始めた相棒、そして強すぎる悪役……。王道ど真ん中のストーリーだからこそ、ドキドキハラハラすること間違いなし。役者がみんなイケメンなのも見逃せない。ちなみに1930年代を舞台にした1970年代の映画なので、当時の“時代劇”でもある。失業者だらけのシカゴをカラー映像で再現しており、映画の魔術を堪能することができる。




6.バック・トゥ・ザ・フューチャー

バック・トゥ・ザ・フューチャー [DVD]

バック・トゥ・ザ・フューチャー [DVD]

◆あらすじ◆
主人公マーティはギターが趣味の高校生。町はずれに暮らす奇人エメット・ブラウン博士(通称:ドク)とは無二の友人だ。深夜、博士に呼び出されたマーティはタイムマシンの実験に立ち会うことになる。ところがちょっとしたトラブルから、マーティは30年前へとタイムスリップしてしまう。


◇みどころ◇
まさか見たことない人なんていないよね? 最初の一秒から最後の一秒まで面白い、エンタメ映画の最高傑作だ。30年前にタイムスリップした主人公は、若き日の自分の母親から一目惚れされてしまう。極度のマザコンでもないかぎり、悪夢以外の何ものでもない。(※しかも若いころのお母さんが可愛い系の美少女だから困る)正しい未来を取り戻そうと奮闘するマーティに爆笑すること間違いなしだ。ちなみに、アメリカの高校ではアメフトやバスケットボールなどの体育会系の生徒たちがスクール・カーストの上位に位置しており、ギターを弾く生徒はオタクと同じように“低く”見られてしまうらしい。80年代のアメリカ文化を知っていると、さらに楽しめる、かも。




7.ショーシャンクの空に

ショーシャンクの空に [DVD]

ショーシャンクの空に [DVD]

◆あらすじ◆
舞台は1947年、銀行員のアンディは妻とその愛人を射殺したという濡れ衣を着せられて、終身刑を言い渡される。ショーシャンク刑務所に投獄されたアンディは、受刑者たちの異質な雰囲気に馴染めず、孤立してしまう。しかし希望を捨てず、たくましく生き抜こうとするのだった。


◇みどころ◇
90年代のベスト映画として必ず名前の上がる作品。同時期のヒューマン・ドラマ映画ではたしかに出色のデキで、子供が観てもわくわくするし大人が観ると涙腺にくる。ブラック企業で働く友人は号泣していた。個人的には『フォレスト・ガンプ』も捨てがたいけれど、ゼメキス監督は先述の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と被ってしまうので却下。90年代は私が子供時代を過ごした時代なので、思い入れのある作品がたくさんある。本当はもっとたくさん紹介したい。なぜって? いい映画を紹介すると戦車がもらえるんだよ。





8.グラン・トリノ

グラン・トリノ [DVD]

グラン・トリノ [DVD]

……を紹介するつもりだったけど、やっぱりこっち
トゥルー・クライム

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]

◆あらすじ◆
クリント・イーストウッド演じる主人公スティーブ・エベレットは、かつては敏腕の新聞記者だった。今ではすっかり落ちぶれてしまったが、ひょんなことから死刑囚のインタビューを任される。殺人犯フランク・ビーチャムから話を聞き、事件現場を検証するうちに、主人公はビーチャムが無実だと確信する。彼の無罪を証明するため主人公は奔走するが、死刑執行は12時間後に迫っていた。


◇みどころ◇
クリント・イーストウッド監督は文学っぽい作品のほうがヒットするハリウッドでは珍しい監督だ。『硫黄島からの手紙』『チェンジリング』『ミリオンダラー・ベイビー』等々、有名な作品はどれも見た後に苦ぁい感情の残るものばかり。70年代には『ダーティーハリー』等、簡単に人が死ぬ娯楽作品ばかりに出演していた。その贖罪をするかのように、92年『許されざる者』以降の作品では「人の死の重さ」と向き合っている。そういう最近のイーストウッド監督のテイストを残しつつ、娯楽作家としての才能が如何なく発揮されているのが『トゥルー・クライム』だ。『グラン・トリノ』を観て「なにが面白いの?」と感じた人にこそ観てもらいたい傑作。




9.インセプション

インセプション [DVD]

インセプション [DVD]

◆あらすじ◆
人の夢に入り込んで記憶を盗むことが可能になった未来……。主人公のドム・コブは“アイディアを盗む”という特殊な企業スパイをしていた。そんなドムに大きな仕事が舞い込む。日本の財閥のトップであるサイトウから、ライバル社の社長の息子に「自社を解体する」というアイディアを埋め込んでほしいと頼まれる。ただ盗むだけならまだしも、アイディアを埋め込むのは難易度があまりにも高い。コブは一度は断る。しかし妻殺しの容疑をかけられているコブは、犯罪歴の末梢と引き換えに依頼を引き受け、かつての仲間たちを集めていく。


◇みどころ◇
“天才”クリストファー・ノーラン監督が10年かけて構想を練った作品。『メメント』の頃よりも観客をよろこばせるのが上手くなっていて、『ダークナイト』よりも監督のやりたいことをやっている、ような気がする。ノーラン監督の作品で驚かされるのは、脚本の“忙しさ”だ。短いシークエンスに膨大な情報量を詰め込んで、見ている人を作品世界へと巻き込んでいく。この映画をたとえば『スティング』の頃(※70年代)の観客が見ても「面白い」とは感じられないのではないだろうか。ノーラン監督の作品ではハリウッド脚本の“王道”があまり守られていない。映画脚本も――あるいは観客の嗜好も変わっていくのだな、と感じさせられる。




10.『東京ゴッドファーザーズ

◆あらすじ◆
家出少女のミユキは新宿の公園でホームレス生活を送っている。元競輪選手のギンちゃん、元ドラァグ・クイーンのハナちゃんと三人で、貧しいながらも温かい暮らしをしていた。あるクリスマスの夜、ハナちゃんの提案で“クリスマスプレゼント”を探すことにした三人はゴミ捨て場で赤ちゃんを拾ってしまう。赤ちゃんを「清子」と名付け、三人は親探しを始める。ゴッドファーザーとは「名付け親」という意味だ。雪の東京に優しい奇跡が起こる――。


◇みどころ◇
アニメ枠。でもジブリはどうせみんな見ているからジブリ以外のアニメ映画で……と考えて、この作品を選んだ。(※ちなみに細田守監督『時をかける少女』と迷った)見どころはなんと言ってもキャラクターたちの活き活きした表情と演技! この“都会のおとぎ話”が観ていて心地よいのは、登場人物の一人ひとりが人間くさくて魅力的だからだ。アニメでしか不可能な表現が随所に使われており、映画としての完成度を高めている。もしも今敏(こん・さとし)監督を知らないのなら、まずは『東京ゴッドファーザーズ』から観るのをおすすめしたい。




     ◆ ◆ ◆




19世紀末に誕生してから100年、いままで数え切れないほどの映画が撮影されてきた。私はほんの一部の作品しか観ていないし、さらに10本に絞るとなると……かなり無理をしないと選べなかった。とくに今回はハリウッド映画に偏ってしまい、ヨーロッパやアジアの映画をほぼスルーしている。「これを選ばないなんておかしい!」とお叱りの声もあるだろう。その場合は:

タイトル:
◆あらすじ◆(140字程度)
◇みどころ◇(140字程度)

上記の様式でコメント欄に書き込んでいただければ感謝甚大だ。この記事をお読みくださった他の読者の方のためにも、ぜひとも面白い作品をご紹介いただきたい。
なお、私はあまりたくさんの映画を観ていない。「映画好き」を名乗るなんておこがましいレベルだ。下記のブログ様&サイト様を拝読して、いつも勉強させていただいている。



破壊屋
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
榎本憲男監督の映画よもやま話
くりごはんが嫌い



長くなったけど、今回はここまで。
そんじゃーねー!



100人の映画通が選んだ本当に面白い映画。―発掘良品 (スクリーン特編版)

100人の映画通が選んだ本当に面白い映画。―発掘良品 (スクリーン特編版)

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)



※今回の記事はChikirin様の記事よりインスパイアされました。毎度ご迷惑をおかけし申し訳ありません。