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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

映画『エリン・ブロコビッチ』が面白かったので感想書く

感想
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『エリン・ブロコヴィッチ』を観た。もしもあなたがこの映画について何も知らないなら、おめでとう! 今すぐブラウザを閉じてTSUTAYAへダッシュだ! あらすじも調べなくていいからとにかく黙って観ろ級の傑作。130分の上映時間があっという間だった。

 

 

 ここから先は、すでに見たことある人向けに書くよ。

 

 

 本当だよ。

 

 

 ネタバレしまくるよ。

 

 

 覚悟はいい?

 

 

 本当にいい?

 

 

 それじゃ、書きます。

 

 

 じつを言うと、私は事前情報ゼロでDVDをプレイヤーに突っ込んだ。わりと有名な映画であるにも関わらず、あらすじや設定をまったく知らない状態で見始めたのだ。白状すると、どうせ女性向けの「恋や仕事で人生は大変だけど前を向いてがんばろう」系の軽い映画だと思っていた。なんかDVDのパッケージには派手な格好したジュリア・ロバーツが映っているし。どうせ彼女が色恋沙汰で悩むストーリーだろうな、と。

 ところがストーリーがとんでもない方向に転がっていって度肝を抜かれた。女性向けなんてとんでもない。男女を問わず楽しめる素晴らしい作品だった。

 ジュリア・ロバーツの演じる主人公エリンが仕事を通じて自信をつけていく姿は、本当にカッコいい。女性の観客の多くは彼女に感情移入できると思う。そして、この映画は法廷ミステリーとしてもよくできている。証拠を集めて、理知的に悪者をやっつけるお話なのだ。そういう部分は男性の観客を喜ばせるはず。

 なんていうか、カップルで観たい映画だなと思った。

 とくに付き合って1年以上経っているカップルは、この映画を観ることでお互いのことをより深く理解できるかも。仕事と家庭、お金、育児、そして社会との関わり方、等々。この映画の感想を言い合うと、お互いの価値観がよく分かりそうだ。

 

 

 ここからは脚本の話をします。

 この映画を一言でいえば「高卒ワーキングプアのシングルマザーが巨大企業を相手に公害訴訟で戦うお話」だ。こういう一行であらすじをまとめたものをログラインと呼ぶ。傑作映画は、まずログラインからして面白い。どうしてそんな状況になったんだ? どんなドラマが生まれて、どんな結末を迎えるんだ? と興味をそそられる。『エリン・ブロコビッチ』のログラインも例外ではない。こんな刺激的なログラインはそう簡単に書けるものではない。

 また、キャラクターの組み合わせも素晴らしい。エリンは胸の谷間丸出しの過激なファッションを着ている。一方、コンビを組む弁護士のエドワードは、いかにも食えない風体のタヌキおやじだ。この2人が並んで立っているだけで、もう面白い。最高。

 こういう「ただ並んでいるだけで面白いキャラの組み合わせ」には、オタク業界ではしばしば名前が付けられる。たとえば『レオン』や『ラスト・オブ・アス』のような「孤独なおっさん&美少女」は鉄板の組み合わせだ。この組み合わせには「おじロリ」という呼び名が付けられている。エドワードとエリンの場合は、そうだな。タヌキとビッチの組み合わせなので「たぬビッチ」と名付けたい。

 また、この映画は「陸に上がった河童」型のお話でもある。まったく違う文化圏に主人公が放り込まれるタイプのお話だ。エリンは過激でセクシーなファッションを好むシングルマザー。彼女にとって、法曹の世界はまさに「生きる世界が違う」のだ。この違いが葛藤を生み、ドラマを生み出す。

「陸に上がった河童」型のお話の場合、主人公の何が変わって、何が変わらないのかに注目したい。どんなに違う環境でも決して変わらないものは、主人公の人格のコアになっているものだ。一方、物語を通じて主人公が変化したら、それを成長と呼ぶ。どんな物語だろうと、登場人物は必ず成長する。ハッピーエンドなら良い成長をしている場合が多いし、バッドエンドなら悪い方向に成長してしまっている場合が多い。

 エリンの場合、物語を通じて彼女のファッションはそれほど変化しない。ボディラインを強調したセクシーな服を、物語の最後まで脱がない。3児の母であっても、どんなに仕事が忙しくても、「イケてる女」でありたい。それが彼女の人格のコアだ。他人の目は気にしないし、自分の言いたいことはハッキリ言う。たとえ見た目でドン引きされても、きちんと話し合えば理解してもらえるという自信の表れでもある。この物語が成立するのは、そういう彼女のキャラクターがあってこそだ。

 では、エリンの変化した部分はどこだろう?

 物語の冒頭、じつはエリンはそれほど好かれるキャラクターとしては描かれてはいない(※同情は誘うかもしれないが)。医療系の教育を受けていないにもかかわらず、医療の仕事ができると言い張って、診療所の求人に応募する。そんなシーンからこの映画は始まる。ハッキリ言って、この時の彼女は仕事というものをナメているのだ。

 映画の冒頭では、彼女にとって仕事とはお金を稼ぐ手段であって、それ以上でも以下でもない。そんな彼女が、公害訴訟に関わったことで、生まれて初めて人から尊敬される。仕事を通じて、誰かから深く感謝されるという経験をする。映画が終わるころには、自分の仕事を正当に評価してほしいとハッキリ主張できるほどになる。

 笑って泣いて、見た後には「人生って何だろう?」とちょっと考えたくなる。見ないと人生損するレベルの傑作映画だった。

 

 

 

 

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