デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

MTG Arenaのヒストリック環境が面白すぎる件

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Tumblr

f:id:Rootport:20210430174635j:plain

 

 このブログでMagic: the Gatheringの記事を書くのは9年ぶりです。まずはこの9年という数字にダメージを受けますね。光陰如矢。少年易老学難成。

 ともあれ、ブログの裏側ではずっと遊び続けていました。ニコニコにプレイ動画を投稿したりもした。とくに先日モバイル版がリリースされた『MTG Arena』は、本格的なマジックを快適に遊べるのでオススメです。

 今回はアリーナ限定のフォーマット「ヒストリック」のメタゲームについて俺流考察を書きます。

 記事本編に入る前に:

 このブログの読者には、中学生の頃にお小遣いをやりくりしてMtGで遊んでいた人も多いのではないかと推察します。そういう人たちにお伝えしたい。

 大人の財力で遊ぶMtGは最高だぞ。

 

www.nicovideo.jp

 

 

■ヒストリックとは何か?

 リリース直後のArenaは、主にリミテッドとスタンダードで遊ぶアプリとしてデザインされていました。古いプレイヤーには、スタンダードと呼ぶよりも「タイプ2」と言ったほうが通じるでしょうか。同時期に紙で印刷されたものと同じカードを使って、オンラインで遊ぶことができました。

 しかし2019年の正式リリースから1年半が経ち、いわゆる「スタン落ち」が発生。旧スタンのカードも遊べるフォーマットとして設置されたものが「ヒストリック」です。古い言い方をすれば、Arena版の「タイプ1.5」や「エクステンデッド」のようなものだと言えます。

 ヒストリック環境は、スタンダードよりも平均的なカードパワーが高めです。Arenaの正式リリース後に発売されたカードだけでなく、約25年のMtGの歴史の中から選ばれた強力なカード数十種が「ヒストリック・アンソロジー」という形で使用可能になっています。

 反面、本当にヤバすぎるカードは軒並み禁止済みです。お前とかお前とかお前とかな。

 その結果、現在のヒストリック環境には驚くほど多様なデッキが存在しており、どんなアイディアにも可能性を感じられます。カードリストと睨めっこしながら、ああでもないこうでもないと考えることが楽しい環境――大抵のMtGプレイヤーにとって理想的な環境なのです。

 では、この環境にどんなデッキが存在するのか順を追って見ていきましょう。

 今回の記事では①コンボ、②アグロ、③ミッドレンジ、④クロックパーミッション、⑤コントロール&ランプの5つのジャンルにデッキを分類しました。なお、ここで紹介するのは私がプレイ中に実際に当たったデッキです。

 

①コンボデッキ

 ここで紹介するデッキは以下の3種類です。

A. 根本原理リアニ

B. パクトオラク

C. 無限イグナス

 

A. 根本原理リアニ

f:id:Rootport:20210430182238j:plain

 現在のヒストリック環境には《出現の根本原理》という「唱えればほぼ勝ち」のカードがあります。ひたすらマナブーストして高速でこれを唱えるというランプデッキがヒストリックには以前から存在しました(し、依然として存在し続けています)

 この強力な呪文を、墓地から踏み倒して唱えてしまおうというコンボデッキが『根本原理リアニ』です。墓地から唱える手段は二通り。《ミジックスの熟達》を使うルートと、《失われた宝物庫の学者》《掘葬の儀式》でリアニメイトするルートです。墓地肥し手段には《信仰なき物あさり》《身震いする発見》が現状では使われています。2021年4月発売の新セット『ストリクスヘイヴン』の登場により成立するようになったデッキです。

 私見では、現在のヒストリック環境を定義しているのがこのデッキです。妨害がなければほぼ確実に先手4ターン目に勝利できます。なおかつ、現在のArenaのヒストリックは(スタンダードには存在する)BO3が常設されていません。1本先取制のBO1しかなく、特別なイベントが開催されない限り、サイドボード戦が存在しないのです。

 つまり――。

 メインデッキで『根本原理リアニ』への対策カードを積むことができるか、もしくは第4ターン目までに勝ち切れるだけの爆発力があるデッキでなければ、ヒストリック環境では存在しにくいのです。このデッキに勝てるかどうかが、ヒストリックにおける試金石だと言えるでしょう。

 とはいえ、私がここで「存在できない」ではなく「存在しにくい」という書き方をしたのは、メタゲームに左右されるからです。『根本原理リアニ』の弱点は、自分のコンボを守る手段に乏しいことです。オンラインゲームのメタは毎日変わります。墓地対策を山積みにしたデッキが流行り始めると、環境から『根本原理リアニ』は激減します。しばらく経って墓地へのガードが下がり始めると、その隙を狙ってまたこのデッキが増えます。

 要するに『根本原理リアニ』が減っている時期であれば、このデッキに勝てないデッキでも存在を許されるわけですね。かつてのMoMaネクロドネイトのような、環境を支配するほどのコンボデッキではありません。

 なお、このデッキの特長として「コンボデッキにもかかわらず妨害に強い」という点が挙げられます。スフィンクスを墓地から釣るルートの場合、《掘葬の儀式》のフラッシュバックを用いて墓地からコンボスタートできます。手札に頼る必要がありません。このデッキに対して手札破壊を投げつけるのは、時には利敵行為にすらなってしまうのです。また墓地から始動可能ということは、1~2枚の打ち消し呪文では止められないことを意味しています。打ち消された次のターンにもう1回コンボチャレンジ、という動きができる。

 この妨害耐性の高さが、根本原理リアニの強さの秘訣でしょう。

 

 

B. パクトオラク

f:id:Rootport:20210430184406j:plain

《タッサの神託者》は、場に出たときに山札が無ければ勝てると書かれたカードです。《汚れた契約》は、条件さえ満たせば山札を吹き飛ばすことができるカードです。つまり《神託者》を場に出して、能力に対応して《契約》を使えば勝てるわけです。マジックかんたんですね。

 しかし、話はそう簡単ではありません。

《汚れた契約》は、同名のカードがめくれるまで山札をめくり続けると書かれたカードです。つまり、このカードで山札を吹き飛ばすためには、同名のカードを1枚ずつしか入れられない。基本土地ですら1枚ずつしか入れられないという、究極のハイランダー構築が求められます。

 私見ですが、パクトオラクルは(今はまだ)さほど強いデッキだとは感じられません。コンボ成立に最低3マナ必要であり、キーカードを探す手間を考えると、平均的なコンボ始動速度は遅めです。また妨害への耐性もありません。

 このデッキの一番の魅力は「1枚ずつ」という構築の制限でしょう。今はそれほど強く感じられないデッキですが、カードの選び方次第では最強デッキにできるかも? という夢があります。実際、とある大会ではパクトオラクルが他のすべてのデッキに対して好成績を収めたという報告もあります。

 この記事を書いている時点では、まだパクトオラクルの研究は終わっていないと感じます。今後より強いリストが出てきてもおかしくありません。現状では、パクトオラクルはコントロールデッキとして組まれるのが主流です。しかし、たとえば《神託者》はマーフォーク・ウィザードという部族シナジーの恩恵を受けやすいサブタイプを持っています。これを活かして、ハイランダー構築の攻撃的なデッキにこのコンボを仕込んでおく……なんてアイディアも試してみる価値はあるかもしれませんね。

 

 

C. 無限イグナス

f:id:Rootport:20210430190353j:plain

《にやにや笑いのイグナス》は、場と手札をごく軽いマナで往復できる生物です。こいつの隣に《語りの神、ビルギ》もしくは《遁走する蒸気族》のような「呪文を唱えるたびにマナが出る生物」がいると、無限にイグナスを出し入れすることが可能になります。そして充分な回数のストームを稼いで《ぶどう弾》でフィニッシュするデッキです。

 このデッキの強さはイラストアドの高すぎる《ぶどう弾》を使えることでしょう。

 日本限定版の美麗なイラストがずらっと画面に並ぶ様子は壮観です。

 

 コンボデッキの紹介はこれくらいにしておきましょう。カードプールの広いフォーマットのご多聞に漏れず、ヒストリックにはこの他にも多数のコンボデッキが存在します。ヒストリックならではのコンボでは、たとえば《新生化》《二重詠唱の魔道士》を使ったデッキをしばしば見かけます。《悪魔の契約》《無害な申し出》で押し付けるコンボも使用可能です。使えるカードの種類が増えるたびに、新しいコンボが試されている印象です。明日の〝地雷デッキ〟を生み出すのはあなたかもしれません。

 

 

②アグロ

 かつてはウィニーと呼ばれた速攻型のデッキですが、いつの間にか「アグロ」と呼ばれるようになりました。歴史とともにカードパワーがインフレして、使われる生物がちっともウィニー(※ちっちゃい子)ではなくなったからです。《黒騎士》《白騎士》を並べて殴っていた日々は遠くなりにけり――。かつては白の最強生物だった《サバンナライオン》を超える1マナ2/1以上の生物が、ヒストリックだけでも大量に存在します。

 現在のヒストリック環境でよく見かけるアグロは、大きく5種類。

A. グルール

B. ゴブリン

C. エルフ

D. 白単天使/ライフゲイン

E. オルゾフオーラ

 

A. グルール

f:id:Rootport:20210430193559j:plain

 かつて、緑の高性能な生物を赤の火力でサポートする戦略は「ステロイド」と呼ばれていました。この戦略は時を経た今でも健在です。というか、ステロイドという言葉が使われていた時代から見るとぶっ壊れ性能な生物が揃っています。しかしヒストリックの環境では、これらのムキムキマッチョなクリーチャーは決して壊れていません。インフレの結果です。マジックは変わりました…。

 先述の通り、ヒストリック環境を定義しているコンボデッキは『根本原理リアニ』です。第4ターン目にほぼ確実に勝てるデッキと渡り合うためには、同じ速さでライフを削り切る爆発力か、メインデッキから墓地対策を搭載できるか、その両方を兼ね備えている必要があります。グルールアグロはこの条件を満たす好例です。

 まず古代の遺産である《ラノワールのエルフ》と、《炎樹族の使者》という2種類の生物による爆発的な〝横並べ力〟を持っています。初手さえ良ければ第2ターンに手札を使い切ることも可能です。要するに「ブン回り」ルートを持っているわけですね。ブン回ったときのグルールアグロは、おそらく根本原理リアニよりも速い。誰にも止められません。

 また、墓地対策を無理なく搭載できることも魅力です。《漁る軟泥》《運命の神、クローティス》は、どちらも「墓地を食べること」で相手にプレッシャーを与えられるカードです。墓地対策がそのまま勝ちに繋がります。

 しかし、グルールアグロの何よりの強みは、コストパフォーマンスに優れる生物群を使えることでしょう。1マナで4/4くらいまで成長できる《生皮収集家》、2マナ4点クロックの《通電の喧嘩屋》、インスタント除去を許さずコントロールデッキを泣かせる《グルールの呪文砕き》、赤のくせに雑にアドバンテージを稼ぐ《砕骨の巨人》、書いてあることすべてが強い《探索する獣》――。

 これでもまだ、選択肢にあがる生物のごく一部にすぎません。

 カードプールの広さゆえに、ここ数年の赤緑のオールスターが集まるデッキになっています。環境にあわせて微調整するときの選択肢が豊富なのは嬉しいですね。

 反面、カードアドバンテージを稼ぐのはさほど得意なデッキではありません。《神の怒り》を1枚使われるだけで、わりとしんどくなってしまうでしょう。手札を一気に補充したり、死んだ生物を再利用するのは苦手な色だからです。

 もちろん生物の質が高いので、手札に残した1枚の生物だけでも勝ち切れる性能は持っています。「全体除去に備えて手札に生物を残しておく」のような、古典的な駆け引きを楽しめるデッキでしょう。

 

B. ゴブリン

f:id:Rootport:20210430205927j:plain

「私はアグロです」みたいな顔をしていますが、実際には《上流階級のゴブリン、マクサス》を高速で召喚するコンボデッキ。それがヒストリックのゴブリンです。

 マクサスが着地すると山札の上から6枚に含まれるゴブリンを全展開することができ、おおむね相手をワンパンで落とせるだけの打点を稼げます。「すべてのゴブリンは速攻を持つ」と書かれたカードも採用されているので、マクサスを出したターンに勝てる。つまり《神の怒り》では間に合わないという強みも持っています。(※そのため青白コントロールには《残骸の漂着》が採用されているケースも見かけるようになりました)

 マクサスでめくるべきカードとしては、まずは当然《ゴブリンの首長》のようなロードがあげられます。また《群衆の親分、クレンコ》も〝大当たり枠〟でしょう。今風に言うなら「SSR」。さらに追加の大当たり枠として「ギャンコマ」こと《包囲攻撃の司令官》まで採用しているケースも見掛けました。

 マナ加速の手段には《スカークの探鉱者》《ずる賢いゴブリン》《ゴブリンの戦長》が基本パーツとして採用されています。MtG世界のゴブリンは妙に器用というか、色々なことができて賢いですね。

 これらコンボパーツで足りないものがあれば、《ゴブリンの女看守》でサーチしてくるというデッキです。まあ、大抵は《マクサス》をサーチするんですが。

 ヒストリックのゴブリンの強さがどこにあるかというと、「出せば勝ち」の必殺コンボを持っているにもかかわらず、部族アグロとしても普通に戦えるという点です。軽量のゴブリンを横並べしてロードで強化して殴るだけでも、単純に強い。コントロールデッキが全体除去で流しても、返しのターンに《マクサス》を着地させればそのまま勝てる……という構成になっています。

 使用するレアカードの種類が少なく、単色デッキなので土地代もあまりかかりません。全体的に安上がりで組める点も魅力でしょう。

 

 

C. エルフ

f:id:Rootport:20210501010941j:plain

《集合した中隊》は2015年3月に発売された『タルキール龍紀伝』のカードです。ヒストリックで使用可能な古いカードの1枚で、山札の上から6枚をめくり、3マナ以下の生物2体を場に出すことができます。カードパワーがインフレした現在のマジックでは、これも「撃てば勝ち」系のカードの一種となっています(※もちろん《根本原理》に比べればずっと大人しいカードですが)。 

 3マナ相当の生物が2枚出るだけでもアドバンテージの面で強いカードですが、飛び出してくる生物がお互いにシナジーを形成していればさらに強い。ゲームを終わらせるカードになりえます。その点、ヒストリックのエルフデッキは《中隊》をとくに強く使えるデッキの1つだと言えるでしょう。

 このデッキは、環境随一の〝横並べ力〟を持っています。グルールのブン回りルートは初手が良くないと実現できませんが、一方、エルフは初手の要求度が緩い。さほど良くない初手からでも、安定した横展開が可能です。《エルフの戦練者》のようなトークンを生成するカードが、このデッキの横並べ力を支えています。

 ロードの豊富さもエルフの強みです。《エルフの部族呼び》《傲慢な完全者》《エルフの大ドルイド》といった部族を強化するカードによって、横並べした生物の打点を一気にはね上げることができます。

 とくに《エルフの大ドルイド》は重要なカードで、あなたのコントロールしているエルフの数と同じ量の緑マナを生み出します。この大量のマナを使って《孔蹄のビヒモス》を召喚し、相手を一撃で轢き殺す……という必殺技も仕込まれています。

 一方、エルフの弱点は「できることの少なさ」にあります。『エヴァンゲリオン』の加持リョウジはスイカに水を撒くことしかできないと言いますが、エルフデッキは生物を横展開することしかできない。シナジー前提の小粒の生物しか搭載されておらず、グルールのように1枚で勝ち切れるクリーチャーが入っていません。そのため、全体除去で流された上に《中隊》を打ち消される……という展開になると、ほぼ詰んでしまいます。

 それを見越して、《英雄的介入》を採用しているプレイヤーもいるようです。《中隊》を使うデッキではスペルの枚数は極力減らしたいはずですが、それでも採用するメリットのほうが大きいという判断なのでしょう。

 

 

D. 天使

f:id:Rootport:20210501102625j:plain

  ヒストリック環境には、まず4キルできるコンボデッキが存在し、それと渡り合える高速のビートダウンが存在します。そして、アグロデッキのミラーマッチで圧倒的な強さを誇るのが白単天使です。

 豊富なライフ回復手段が、まず単純にアグロに強い。それに加えて、このデッキのメインのアタッカーが軒並み「飛行」を持っている点も見逃せません。グルールにせよエルフにせよ、飛行生物を止める手段がまったくありません。ライフを回復しながら相手を一方的に殴れるので、ダメージレースで優位に立てる……というか、ダメージレースそのものを成立させません。また、《若き紅蓮術師》《機を見た援軍》トークンによるチャンプブロックを許さないという点でも、飛行は強力です。

 デッキ全体にライフ回復手段が散りばめられているのですが、とくに《魂の管理人》《翼の司教》は強力です。序盤からライフを詰めたいアグロデッキの戦略を否定できます。このデッキのエースは《正義の戦乙女》で、3マナ2/4飛行という優れたスタッツを持ち、ライフ回復と全体強化という完結した能力を持っています。1人で何でもできる。《天界の語り部》《輝かしい天使》から天使トークンが並び始めたら、大体ゲーム終了です。

 個人的には《若年の戦乙女》が良い仕事をすると感じます。重たくなりがちな天使デッキでありながら、2マナというマナカーブの間隙を綺麗に埋めている1枚です。

 白単天使の弱点は2つ。コンボへの妨害手段がないことと、コントロールデッキからの妨害に耐性が乏しいことです。白という色の都合上、手札破壊や打ち消しを積むことはできません。《漁る軟泥》のような無理なく搭載できる墓地対策もありません。一応、《翼の司教》は全体除去の対策になります。が、場に残るのが1/1飛行のトークンでは少し心もとない。

 こうした弱点を補うため、(とくにコントロールデッキが増えている時期には)緑を足して《集合した中隊》を搭載したデッキもよく見掛けます。

 

 

E. オルゾフオーラ

f:id:Rootport:20210501111623j:plain

 ここまでに紹介したアグロデッキが「横に広げる」タイプのデッキだとしたら、オルゾフオーラは「縦に伸ばす」タイプのデッキです。かつて、エンチャントには「全体エンチャント」と「個別エンチャント」という分類がありました。現在では個別エンチャントは廃語になり、「オーラ」と呼ばれています。強化系のオーラで生物をムキムキマッチョに育て上げて、一点突破で戦う。それがこのデッキです。

 キーカードは《上級建設官、スラム》《コーの精霊の踊り手》の2枚。どちらもオーラ呪文を唱えたときにカードを1枚引くと書かれています。つまり手札を減らさずにオーラを使える。彼らが2人以上並べば、むしろ手札が増えていくという状況になります。

 強化系のオーラには様々な選択肢があるのですが、墓地から何度でも唱えられる《歩哨の目》や、極端にパワータフネスを向上させる《きらきらするすべて》の2枚はとくに強力です。また、《ケイヤ式幽体化》《悪魔的活力》のような、除去耐性を与えるオーラも必須パーツでしょう。

 とにかく《スラム》と《踊り手》が場に残り続けることが重要なデッキなので、《無私の救助犬》《命の恵みのアルセイド》といったキーカードを守るためのカードが採用されています。アルセイドによるプロテクション付与は、ブロッカーを回避する目的でも使えます。このデッキにおける《夢の巣、ルールス》は非常に強力で、「相棒」能力のおかげで手札ゼロの状態からでも立て直すことができます。

 キーカードだけを見れば白単色でも組めるデッキですが、ピン除去として使えるオーラ――《死の重み》《ぬかるみの捕縛》《モーギスの好意》を使うためにも、黒が選択されています。相手の生物を除去しながらドローとするという動きは(当然ながら)アドバンテージの面で強く、高速アグロデッキとのマッチアップではミッドレンジやコントロールのように立ち回ることも可能です。

 

 

③ミッドレンジ

 かつては「アグロコントロール」とも呼ばれた中速デッキですが、現在では「ミッドレンジ」と呼ばれるようになりました。懐かしい「マシーンヘッド」などは、典型的なミッドレンジと呼べるでしょう。まあ、マシーンヘッドの場合は《暗黒の儀式》を使うかなり高速のデッキだったので、ビートダウンに分類するほうが一般的かもしれませんが…。しかし、4マナ前後の生物群をメインの攻撃手段に据えている点や、《儀式》を引かなかった際のボードコントロールをしながらアタッカーに繋げる動きは、現在のミッドレンジデッキに通じるところがあります。

 ヒストリック環境で見かける中速のデッキは、主に以下の4種類。

A. ジャンドサクリファイス

B. ラクドスアルカニス

C. グルール土地破壊

D. イゼットフェニックス

 

 

A. ジャンドサクリファイス

f:id:Rootport:20210501174047j:plain

『エルドレインの王権』収録のスタンダード禁止カード

 2019年10月に発売された『エルドレインの王権』は、過去最高枚数の禁止カードを生み出しました。その数、6枚。禁止が多かったと記憶されているウルザブロックですら、じつは『ウルザス・サーガ』だけなら禁止カードは4枚でした(※《トレイリアのアカデミー》《波動機》《意外な授かりもの》《時のらせん》

 歴代ワーストのタイ記録は『ミラディン』です。が、6枚中5枚は「アーティファクト・土地」と呼ばれる5色のサイクルでした。また、『ウルザス・サーガ』は全350種類、『ミラディン』は全306種類のカードが収録された大型セットだったのに対し、『エルドレインの王権』は全269種類です。カード総数は減ったのに、過去最高の禁止カードを出してしまったことになります。

 さらに、禁止されたカードの〝質〟も違います。

 ウルザブロックやミラディンブロックの禁止カードは、特定の〝強すぎるデッキ〟を止めるために複数枚の禁止が必要でした。一方、『エルドレインの王権』に収録されていた《大釜の使い魔》《僻境への脱出》《創案の火》《幸運のクローバー》の4枚は、それぞれ別のデッキのキーカードだったのです。さらに《王冠泥棒、オーコ》《むかしむかし》は、デッキを選ばずに入れられる強すぎるカード――それを使わないことが愚かな選択になってしまうレベルのカード――だったがゆえに禁止されました。MoMaを止めるために《トレイリアのアカデミー》を禁止したのとは、「禁止」の意味が違います。

 WotCを擁護するなら、新しい試みに挑戦した結果の失敗だったという点は指摘できます。当時の開発部はゲームバランスの調整方法として、新しいやり方を模索していたのです。MtGが四半世紀に渡り愛されるゲームになった理由の1つに、「常に環境が変化し続けること」が挙げられます。禁止カードが出るのは悲しいことですが、新しいやり方に挑戦し続ける姿勢は評価すべきだと私は思います。

 

f:id:Rootport:20210501175943j:plain

 ヒストリック環境でも、『エルドレインの王権』のヤバすぎる連中は軒並み禁止されています。ところが――。禁止の嵐をかいくぐって、エルドレインのハチャメチャっぷりを合法的に味わえる唯一生き残ったデッキが「ジャンド・サクリファイス(※別名ジャンド・フード)です。

 スタンダードでは禁止された《魔女のかまど》《大釜の使い魔》シナジーですが、ヒストリックでは(なぜか)許されています。無限に猫肉でパイを焼けるこのシナジーの強みは、すべてインスタントタイミングで行動できること。生半可な墓地対策では、猫を除去できないのです(※墓地対策カードに対応して猫をリアニメイトされて墓地から逃がされてしまうため)

 私見では、ジャンドサクリファイスの要となっているカードは《波乱の悪魔》だと考えています。何かを生け贄に捧げるたびに好きなところに1点のダメージを飛ばせる悪魔であり、このデッキでは強烈なボードコントロール性能を見せます。対戦相手の生け贄にも誘発するのがインチキくさい。

「猫かまど」からいくらでも「食物/food」を生み出せるので、《パンくずの道標》から莫大なカードアドバンテージを稼ぐことができます。マナ加速を兼ねた追加の「食物」供給源として《金のガチョウ》が採用されます。

 また、追加の〝サクり台〟として《悲哀の徘徊者》がほぼ確実に採用されています。プレイヤーによっては《ファイレクシアの塔》まで採用しているケースもあります。懐かしいですね。

 《初子さらい》は、これらサクり台と相性バツグンの1枚です。対戦相手のヤバい生物を自分のかまどに放り込めば、(実質)0対1交換で除去できます。

 グルールアグロのような多色ビートダウンに比べると、生物の線の細さがこのデッキの弱みと言えるでしょう。それを補う1枚として、マナカーブの頂点に《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を搭載するのが定番です。

 ジャンドサクリファイスは、採用されているカードすべてが緊密なシナジーを構成している〝完成したデッキ〟の1つです。『根本原理リアニ』と同様、ヒストリックで遊ぶ上では必ず乗り越えないといけないデッキと言えるでしょう。

 

 

B. ラクドスアルカニス

f:id:Rootport:20210502020552j:plain

 デッキ名の由来は《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》です。毎ターン攻撃するたびに墓地からスペルを唱える動きはインチキそのものです。しかし私には、このデッキは《死の飢えのタイタン、クロクサ》を強く使うために組まれたリストのように感じられます。

《クロクサ》は赤黒2マナ6/6という極端なスタッツで、場に出たときと攻撃したときに相手に手札を1枚捨てさせる能力を持っています。この時、土地以外のカードを捨てることができなければ3点のライフまで失わせます。この能力は相手の手札が無い場合にも誘発します。つまりクロクサは、たった1枚で9点クロックとして機能できる生物なのです。さらに、BBRRの4マナと墓地のカード5枚を追放(※古い言い方をすれば「ゲームから取り除く」)することで、墓地から何度でも唱えられる「脱出」という能力まで持っています。もう滅茶苦茶です。

 当然ながらクロクサにはデメリットがあり、墓地から「脱出」で唱えていなければ場に出たときに生け贄に捧げなければなりません。つまり、最初に唱えたときは2マナで相手の手札を1枚捨てさせるソーサリーのような使い方になるわけです。クロクサを強く使うためには、素早く墓地を肥やして「脱出」させる必要があります。

 ラクドスアルカニストの場合、墓地肥し手段として《縫い師への供給者》が採用されています。場に出たときと死亡したときに山札を3枚ずつ削るという、MtGの歴史の中でもトップレベルの墓地肥し性能を持っています。

《クロクサ》と《供給者》のどちらとも相性がいいのが《村の儀式》です。生物を1体生け贄に捧げて2枚ドローすると書かれたインスタントで、《供給者》を効率よく死亡させることができます。また、《村の儀式》は「インスタント」であることがポイントです。クロクサを2マナで出すと自壊する能力が誘発しますが、それに対応してクロクサを生け贄に捧げることが可能なのです。対戦相手には1枚ディスカード、こちらは2枚ドローというアドアドしい動きになります。
《供給者》を死亡させる手段として、さらに《灯の収穫》を採用しているケースも見受けられます。これら生け贄を要求するカードと相性のいいスペルとして《初子さらい》が、また生け贄用のトークンを生成する手段として《若き紅蓮術師》が採用されます。

《供給者》により高速で墓地が肥えていき、なおかつ採用されているスペルがほとんど1マナである――。ここで《戦慄衆の秘儀術師》の登場です。クロクサを強く使うためのカードたちが、すべて《秘儀術師》とも相性がいいわけです。《秘儀術師》が墓地に落ちてしまっても大丈夫。《立身+出世》という、このデッキのために印刷されたかのようなリアニメイトスペルが存在します。

 その昔《強迫》を唱えながら「クリーチャーも捨てさせることができたらいいのに」と感じたプレイヤーは多いでしょう。その夢を叶えてくれる《思考囲い》は、おそらく歴代の1マナスペルのなかでも最強と言っていい性能です。序盤にこのスペルを《秘儀術師》で再利用すると、おおむねゲームが終わってしまいます。《秘儀術師》を使って《思考囲い》を2連打する動きは、たぶん《Hymn to Tourach》を1枚使うよりも強い。

 さらに、デッキに入っている生物がすべて軽量なので《夢の巣、ルールス》を相棒に指定できます。「墓地は第二の手札」と言われますが、それを体現するようなデッキです。

 ラクドスアルカニストも〝完成したデッキ〟の1つと言えるでしょう。デッキに採用されているカードすべてが、他のカードとシナジーを形成しています。シナジーのないカードがない。『根本原理リアニ』と同様、ヒストリック環境でメインから墓地対策を求められる理由の1つは、このデッキの存在です。

 

 

C. グルール土地破壊

f:id:Rootport:20210502105914j:plain

 1ターン目に《ラノワールのエルフ》を召喚して、2ターン目に《石の雨》を撃つ――。MtGの黎明期から存在する定番の動きの1つです。

 ところが近年のMtGではマナ拘束カードが忌避されており、2005年7月発売の基本セット『第9版』を最後に《石の雨》はスタンダード環境から姿を消しました。黒い土地破壊カード《涙の雨》も『第10版』を最後に再録されていません。以降、土地破壊カードは4マナ以上でしか印刷されず、かつてのような土地破壊デッキは組めなくなりました。時代とともにMtGの平均的なカードパワーはインフレしてきましたが、数少ない例外の1つが土地破壊です。《蔓延する腐敗》を見たときには、あまりの弱さに愕然とさせられました。

 しかしヒストリック環境では、どういうわけか《石の雨》が解禁されています。土地破壊デッキには根強いファンがおり、日夜、第一線で戦えるリストが研究されています。

 マナ拘束により相手の動きを止めるためには、最低でも3種12枚、できれば4種16枚ほどの土地破壊カードが必要です。ヒストリック環境で使用可能な土地破壊カードには《ゴブリンの廃墟飛ばし》《大当たり》が存在します。

《廃墟飛ばし》の使用感は往年の《なだれ乗り》を彷彿とさせます。エコーを払わなくてもクロックを残せるのが良い。また、《大当たり》は土地破壊カードには珍しいインスタントです。土地破壊デッキは一種のテンポデッキという側面があり、打ち消し呪文1枚でテンポを失ってしまう――必要なマナ量まで相手に土地を伸ばされて致命的なスペルを唱えられてしまう――という弱点がありました。ところが《大当たり》なら、相手のアップキープにも唱えることができます。相手目線では、打ち消さずに土地を失うか、打ち消して土地をタップする(つまりテンポを失う)か、という選択を迫られるわけです。《大当たり》は打ち消されてもテンポを稼ぐ稀有な土地破壊スペルです。

 土地も破壊できるフィニッシャーとしては、《鋸牙の破砕獣》が存在します。これが《金のガチョウ》につくと6/6飛行トランプルという怪物が完成し、素早くゲームを終わらせることができます。

 とはいえ、ヒストリック環境で土地破壊デッキが高いTierを占められるかというと、疑問が残ります。というのも、土地破壊カードそのものはテンポを稼ぐことしかできないからです。盤面に触ることができず、カードアドバンテージを稼げるわけでもない。エルフのような盤面展開力を持ったデッキや、ジャンドサクリファイスラクドスアルカニストのようなカードアドバンテージを重ねるデッキとのマッチアップは基本的に不利です。これらのデッキがごく軽量で、マナ拘束が効きづらいという点も逆風でしょう。

 こうした弱点を補うため、ランプ戦略に振り切った土地破壊デッキも見かけるようになりました。3~4マナの土地破壊呪文でちまちまと土地を潰すのではなく、とにかくマナ加速して《絶滅の星》で盤面を流し、《トロールの喚起》でアドバンテージの面でも相手を圧倒していくというデッキです。

 赤緑の土地破壊デッキといっても現状ではリストが固まっておらず、様々なアイディアが試されています。

 

 

D. イゼットフェニックス

f:id:Rootport:20210502134224j:plain

 あなたが現役のプレイヤーなら、イゼットフェニックスを「ミッドレンジ」に分類していることに疑問を覚えるでしょう。正直、私も疑問です。たしかに4~5マナ圏の生物を主力に据えています。火力呪文による盤面干渉もできます。しかしデッキ全体の動きを見ると「相手を攪乱しながら中~重量級のアタッカーに繋げる」という典型的なミッドレンジではありません。どちらかといえば、コンボやバーンに近いデッキだと私は感じています。一番近いのはドレッジヴァイン系デッキでしょうか。

 イゼットフェニックスは2018年10月発売の『ラヴニカのギルド』で成立したデッキです。デッキ名の由来は、キーカードである《弧光のフェニックス》。非常に緩い条件で墓地から場に戻ってくる赤い鳥です。

 このフェニックスを蘇らせる条件は、3枚以上のインスタントまたはソーサリーを自分の第一メインフェイズで唱えていること。すると、戦闘フェイズの開始時に速攻を持った飛行3/2のクロックが墓地から戻ってきます。大抵は2~3枚のフェニックスが墓地に落ちた状態から攻めに転じるので、一瞬で6~9点の飛行クロックを用意できるわけです。フェニックスが場に戻り始めると、数ターンでゲームが終わります。

 フェニックスを墓地に送り込む手段として、《信仰なき物あさり》《航路の作成》《稲妻の斧》が採用されます。これらのスペルは墓地肥し手段であると同時に、墓地からフェニックスを呼び戻す手段でもあります。フェニックスを戻すためのスペルは種類を選ばないので、選択肢の幅は広い。たとえば《発見+発散》《急進思想》なども候補にあがるでしょう。

 イゼットフェニックスの強みは、対コントロール性能の高さです。全体除去で何度流されても、すぐに致命的なレベルのクロックを再展開できます。ただし、この強みも環境次第ではあります。現在のヒストリック環境では墓地へのガードが高めで、なおかつ《神々の憤怒》《絶滅の契機》のような追放除去が流行っています。フェニックスにとっては逆風です。

 こうした環境を踏まえて、現状では勝ち筋をフェニックスに一本化していないリストのほうが一般的です。フェニックスを封じられた場合の第二、第三の矢として《嵐翼の精体》《弾けるドレイク》等が採用されています。

 

 

 

④クロックパーミッション

  かつてエクステンデッド環境をネクロドネイトが席捲していた頃、それを食えるデッキとして華々しく登場したデッキがありました。カウンター・スリヴァーです。軽量のクロックを並べてコンボを打ち消し呪文で弾くという動きがまず有利であり、さらに《給食スリヴァー》のライフ回復により、たとえコンボを決められても即死しないという強みを持っていました。

「軽量クロックを並べて、打ち消しで守る」という戦略は、その後「クロック・パーミッション」と総称されるようになります。クロパはその起源からして、コンボデッキを食えるデッキとして編み出されたのです。

 この特長は、今でも健在です。一般論として「クロックパーミッションはコンボに強い」とされています。反面、生物の線が細くなりがちなので、高速で横展開するビートダウンとのマッチアップは苦手です。

 現在のヒストリック環境にも、根本原理リアニやパクトオラクルなどのコンボデッキが存在します。したがって、クロックパーミッションが活躍しやすい環境と言えるかもしれません。反面、エルフなどの高速アグロにどう対処するかが課題になります。

 現在よく見かけるクロックパーミッションは、以下の3種類。

A. ディミーアローグ

B. シミックフラッシュ

C. 青単トラッシュ

 

 

A. ディミーアローグ

f:id:Rootport:20210502152658j:plain

 ディミーアローグは、2020年9月発売の『ゼンディカーの夜明け』で成立したデッキです。 前年の『エルドレインの王権』の頃から、青黒には「相手の墓地が一定枚数以上だと強くなるカード」が収録されていました。逆スレッショルドみたいなカードですね。『ゼンディカー』では、ならず者/Rogueたちに特有の能力として、この逆スレッショルドが割り当てられました。充分な枚数のカードが揃ったので、デッキとして成立するようになったのです。

 このデッキは、現在のスタンダード環境のトップメタの一角を占めています。ヒストリック版のローグは、スタンダード版の完全上位互換です。キーカードはそのままに、一部のカードがより強力なものに差し替えられています。

 相手の墓地を肥やす手段として、《盗賊ギルドの処罰者》《空飛ぶ思考盗み》の2種8枚がこのデッキのキーカードです。クリーチャータイプ「ならず者」と書かれた生物すべてが採用候補になりますが、ヒストリック版では《マーフォークの風泥棒》を加えた12枚に生物を絞っているリストが一般的なようです。現状では、ここに追加したくなるほど強いならず者が足りないのだと思われます。たとえば《夜鷲のあさり屋》あたりはプレイアブルな性能を持っていると感じますが、3マナ以上の生物を足すよりは《ルールス》を相棒にしたほうが強い、という判断なのでしょう。

 私見では、このデッキの一番の魅力は《湖での水難》を強く使えることです。相手の墓地の枚数よりもコストの軽い呪文を打ち消すか、生物を破壊できるインスタントです。ローグデッキで使われる《水難》は、《対抗呪文》であり《殺害》でもあるという無茶苦茶なカードになります。歴代の青黒2色のスペルのなかでも、最強と呼べる1枚でしょう。

 ヒストリック版ならではの特長として《記憶の欠落》が使える点も挙げられます。ライブラリー破壊が得意なこのデッキでは、《欠落》は実質的にハードカウンターとして機能します。古参プレイヤーであれば、《石臼》を使うコントロールデッキに《欠落》を入れて遊んでいたことを思い出して懐かしくなるでしょう。

 スタンダード版では《遺跡ガニ》を採用して、爆発力を高めたリストをよく見かけます。カニを採用したバージョンは山札破壊性能が高く、高速で〝逆スレッショルド〟を達成できるだけでなく、ゲーム展開がグダったときにはライブラリーアウトで勝利するルートも狙えます。反面、カニ自体はクロックにならないため、対戦相手へのプレッシャーが足りなくなるという問題を抱えています。

 ヒストリック環境では、カニを採用したデッキはあまり見かけません。代わりに《思考囲い》《コジレックの審問》のような手札破壊を加えて、妨害性能を高めたデッキが一般的です。妨害手段が増えて、よりロングゲームを戦えるようになった結果、カニの爆発力に頼る必要がなくなったのでしょう。

 手札破壊にせよ打ち消し呪文にせよ、基本的に1対1交換のカードにすぎません。カードアドバンテージを稼げるカードではない。この弱みを補うのが《物語への没入》です。4枚引けるインスタントというだけでも強いのですが、〝逆スレッショルド〟を達成している状況ではわずか4マナで唱えることができます。《没入》が通れば、そのゲームはおおむね勝ちです。

 ディミーアローグは〝逆スレッショルド〟を達成しないと機能停止するという弱点を持っています。逆に言えば、このデッキとマッチアップするときには逆スレッショルドを達成させないことが重要です。BO3であれば《安らかなる眠り》等の対策カードがよく効くでしょうし、《塵へのしがみつき》のような「脱出」スペルを使うのも良いでしょう。そしてもちろん《物語への没入》を使わせないこと。カードアドバンテージを《没入》に頼ったデッキなので、これを止めることで息切れに追い込むことができます。

 

 

B. シミックフラッシュ

f:id:Rootport:20210502162939j:plain

 優秀な生物を打ち消しでバックアップするのがクロックパーミッションの基本です。では、優秀な生物の色といえば? もちろん緑ですね! 青緑のクロックパーミッション『オデッセイ』の時代に花開き、「青緑スレッショルド」「青緑マッドネス」等々の名デッキが生まれました。コストパフォーマンスに優れる緑のクリーチャーを、青い打ち消し呪文で守るというコンセプトは、その後も長く残りました。レガシーにおけるConter Top-Goyfカナディアンスレッショルドも、広い意味ではこのコンセプトを受け継いでいます。

 何が言いたいかというと、青緑のクロックパーミッションには熱烈なファンがいる。ヒストリック環境でも、どうにかこのコンセプトを成立させようとしているプレイヤーが存在しています。かつては「たとえ核戦争が起きてもゴキブリと白ウィニーは生き残る」と言われました。今なら、ここに青緑のクロックパーミッションも追加するべきでしょう。世界が終わるその日まで、彼らはシミックフラッシュを回し続けているはずです。
 現状では、ヒストリックのシミックフラッシュに固定的なリストは存在していないように感じられます。それぞれのプレイヤーが独自のリストを研究している印象です。よく見かける緑の生物には、軽量の《僻境生まれの保護者》、着地すれば高打点で即座にゲームを終わらせる《夜群れの伏兵》、打ち消しとクロックが一体化したクロパを体現するようなカード《エリマキ神秘家》です。さらに緑の生物よりもマッチョに成長する《塩水生まれの殺し屋》もよく見かけます。

 問題は軽量の打ち消し呪文です。私がアリーナで青いデッキを回しているときにいつも感じるのは「《マナ漏出》が欲しい」。土地破壊と同様、時代とともにカードパワーがデフレした例外が打ち消し呪文なのです。2マナ要求の打ち消し呪文《火消し》を使っていると、《マナ漏出》の3マナ要求がいかに強かったのかを実感します。

 この他に候補に挙がる打ち消し呪文としては、1マナ要求で中盤以降はサイクリングできる《検閲》、分割払いすれば2マナで構えられるハードカウンター《襲来の予測》、懐かしいフリースペル《巻き直し》等があります。最近追加された《クアンドリクスの命令》も検討に値するかもしれません。

 青緑という色の宿命としてクリーチャー除去は苦手で、盤面への干渉力は低くなりがちです。盤面をコントロールする手段は青のバウンスに頼ることになりますが、現在のヒストリックでは《厚かましい借り手》という優れたバウンススペルが存在しています。

 

 

C. 青単トラッシュ

f:id:Rootport:20210502171130j:plain

 青単トラッシュは『イクサラン』ブロック~『ドミナリア』の前後で成立したデッキです。スタンダード時代には《霧まといの川守り》《排斥する魔道士》のような信じられないほど弱いカードが使われたデッキでした。リミテッドでも採用を悩むレベルのコモンカードで、いかにして勝つのか?

 そのカギを握るのが《執着的探訪》です。

《執着的探訪》は、いわゆるサボタージュ能力を付与するオーラです。エンチャントされたクリーチャーが対戦相手に戦闘ダメージを与えたらドローできるという点は《好奇心》と同様です。が、パワーとタフネスが+1/+1されるという破格の性能を持っています。

「たった+1/+1の修正が〝破格〟の性能?」と感じたのであれば、キルターンで考えていただきたい。

 たとえばパワー1のクリーチャーが対戦相手を殺すには20ターンかかりますが、パワーが2になるだけで10ターンに半減します。パワーが3になれば、勝利に必要なターン数は7ターンになり、さらに3ターンも削減できます。問題は、それだけのターン数を「殴り続けること」が普通なら難しいという点です。

 青単トラッシュは普通ではない状況を作り上げ、勝つのに必要なターン数だけ殴り続けるというコンセプトのデッキなのです。

 先述の《霧まといの川守り》が象徴的ですが、回避能力持ちの生物にエンチャントすることで《執着的探訪》を強く使えます。ピン除去を飛ばしてくる相手に対しては《セイレーンの嵐鎮め》が(相手目線では鬱陶しいことこの上ない)抑止力になります。

 また、相手の戦闘フェイズに合わせて《マーフォークのペテン師》でデカ物をタップすれば、時間を稼ぐこともできます。この手の「テンポを稼ぐカード」は、普通ならカードアドバンテージをただ失うだけです。しかし《探訪》により毎ターン手札を補充できるのなら、アドバンテージ損失を気にせずに時間稼ぎができるわけです。

 ヒストリック版では、インスタントタイミングで召喚できる生物として《幽体の船乗り》《塩水生まれの殺し屋》が採用されているケースが多いです。また、5枚目以降の《執着的探訪》として、本家《好奇心》を使えることも特徴でしょう。

 使われている生物が「海賊」や「ウィザード」なので、打ち消し呪文にはこれらの部族シナジーの恩恵を得られるカードがよく選ばれています。《見張りによる消散》《魔術師の反駁》ですね。また、超軽量の打ち消し呪文として《呪文貫き》や、コンバットトリックとしても使える《潜水》も、よく採用されています。

 青単トラッシュは、歴代のクロックパーミッションの中でも極端に生物の線が細いデッキです。その細さを補い、最後のひと押しとして機能させるために、マナカーブの頂点には大型飛行クリーチャーを採用しているケースがよく見られます。この枠にはスタンダード時代と同様、《大嵐のジン》を選択しているプレイヤーが多いようです。

 

 

⑤コントロール&ランプ

 ここまでヒストリックのデッキを長々と紹介してきたのは、ある意味ではこの章を書くためでした。コントロールデッキのリストを〝解読〟するためには、メタゲームを理解しておく必要があります。コントロールデッキは、環境に存在する〝何か〟への対策カードで構成されています。デッキリストを読解する上で、その〝何か〟を知っておく必要があるわけです。

 コントロールデッキはアグロやミッドレンジ以上に多種多様であり、ちょっとしたカードの選択の違いで「別のデッキ」と見做されがちです。そのすべてを紹介するのは現実的ではありませんし、あまり意味もありません。ここではヒストリックに存在するコントロールデッキを、大きく4種類に分けて紹介します。

 その4種類とは、以下の通り。

A. 青白系コントロール

B. シミック系ランプ

C. 黒茶単

D. 赤白土地破壊

 

 

A. 青白系コントロール

f:id:Rootport:20210502195113j:plain

 MtGにおける最古のコントロールデッキは、Brian Weissmanが握った『The Deck』だと言われています。MtGにおける最古のデッキということは、要するにあらゆるTCGのなかで世界最古のコントロールデッキということになります。《セラの天使》をフィニッシャーに据え、《剣を鋤に》《解呪》で盤面をコントロールし、《対抗呪文》《マナ吸収》で危険なカードを打ち消す――。要するに〝青白〟を中心に組まれたデッキでした。

 青白系のコントロールデッキの伝統は、現在にも続いています。

 ヒストリックで青白系コントロールを握ることの利点は、通称「5テフェ」の愛称で親しまれている(もしくは憎まれている)《ドミナリアの英雄、テフェリー》が使えることでしょう。アドバンテージを稼ぎ、盤面に干渉し、フィニッシャーにもなりうる。現代の青白を象徴するような1枚です。

 さて、ここでメタゲームに目を向けてみましょう。

 今まで紹介したデッキを振り返ると「追加ドローを止めると強そうだ」と気づくはずです。根本原理リアニやイゼットフェニックスは、《信仰なき物あさり》のようなドロースペルを連打するデッキです。オルゾフオーラは《スラム》の追加ドローに頼ったデッキです。ラクドスアルカニストなら《村の儀式》、ディミーアローグなら《物語への没入》、青単トラッシュなら《執着的探訪》が、それぞれアドバンテージ源として重要です。

 対戦相手の追加ドローを止める《覆いを割く者、ナーセット》は、たった1枚でこれらのデッキたちを機能不全に追い込めるカードです。環境に適した1枚だと言えるでしょう。

 もちろん、ナーセットだけでは盤面に触れませんし、ゲームに勝ち切ることもできません。そこで彼女の隣に「5テフェ」がいたら強いよね? という発想で組まれたデッキが、ヒストリック環境における青白系コントロールだと言えます。

 カードプールの広いヒストリックでは、白い全体除去の選択肢も豊富です。元祖《神の怒り》を使えます。準備に手間がかかる反面、わずか3マナで唱えられる《ドゥームスカール》も強力です。

 個人的には、青い「予顕」カード2種がイカしていると感じます。《襲来の予測》《多元宇宙の警告》です。この手の「裏向きにしておくカード」はプレイアブルなものが少なく、裏向きにもかかわらず内容がバレやすいという特徴がありました。しかし予顕の場合は使いやすいカードが2種類あるおかげで、きちんとブラフが機能します。

 青白〝系〟という呼び方をしているのは、プレイヤーごとにマイナーチェンジを施した多種多様なデッキが存在するからです。一応、現在もっとも一般的なのは赤を追加してトリコロールカラーにしたリストでしょう。赤を触ることで《神々の憤怒》のような追放を伴う全体除去が使えるようになり、《削剥》アーティファクトを割りやすくなります。これらはナーセットが効かない相手であるジャンドサクリファイスに対して有効なカードです。

 また、ヒストリックのカードプールには《剣を鋤に》《流刑への道》もありません。白だけではピン除去がやや心もとないのです。この点も、《稲妻のらせん》などの火力スペルが使える赤を触る理由になっています。

 ともあれ、この環境ではナーセットが強力で、たった1枚で多数のデッキを無力化できます。残りのスロットには「ナーセットが効かない相手への対策」が盛り込まれているわけです。では、ナーセットが効かない相手とはどんなデッキか? それらをどう対処するか? 青白系コントロールのリストには、それを握るプレイヤーの思想が反映されています。

 

 

B. シミック系ランプ

f:id:Rootport:20210502202114j:plain

 青白系コントロールは「ナーセットの隣に5テフェがいたら強いよね」という守りの発想で組まれていました。一方、攻めの発想で組まれたデッキがシミック系ランプです。ナーセットで相手の出足を躓かせておいて、「ゴリニッサ」の愛称で呼ばれる《世界を揺るがす者、ニッサ》を叩きつければ強いよね、という発想です。

 実のところ、コントロールデッキとランプデッキは(重なる部分も多いとはいえ)基本的にはまったく別のアーキタイプだと思います。しかしヒストリック環境では、デッキの構築思想の根底によく似たものがある――と、私は感じたので、ここで紹介することにしました。

 シミック系ランプを支えているのは、2種類の軽量マナ加速です。《成長のらせん》《探検》です。とくに《成長のらせん》はスタンダード時代に禁止された過去を持ちます。青緑一強の時代を作ってしまったのです(が、本当に悪いのはこいつこいつだったと私は思います。WotCがこれらを禁止したくないがために、巻き込まれ事故で《らせん》が禁止されたという見方を私はしています)

 これら軽量マナ加速から高速で着地するゴリニッサは、ナーセットがいなくても普通に強力です。土地を3/3の生物に変える能力は、対戦相手に毎ターン圧力をかけることができます。また、森から膨大なマナを生み出せる点も見逃せません。ニッサから生み出された溢れんばかりのマナを使って、《ハイドロイド混成体》《サメ台風》を使えば勝利は目前です。アドバンテージの概念が壊れてしまう。

 シミック系ランプも、ここでは〝系〟として紹介しました。

 というのも、軽量マナ加速、ナーセット、ゴリニッサのパッケージだけで充分に強いので、残りのスロットはすべて「自由枠」だからです。溢れんばかりのマナの使い道として、様々なアイディアが試されています。

 上記の図で紹介しているのは、白を足してバントカラーにしたバージョンです。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》はジャンドサクリファイスを沈黙させる猪です。ヤシャーンがやらねば誰がやる。また、白を触ることで《神の怒り》等の全体除去を採用できるようになり、横並べ系のアグロに対して優位に立てます。

 この他、黒を足して《出現の根本原理》を撃つタイプ。青緑の2色にまとめて《時間のねじれ》系のスペルを連打するタイプ等々、様々なシミック系ランプデッキが存在します。

 

 

C. 黒茶単

f:id:Rootport:20210502203723j:plain

 ヒストリック環境には、マナファクトから加速して《見捨てられた碑》を出し、《精霊龍、ウギン》で盤面を制圧するランプデッキが存在します。いわゆる茶単デッキです。ポストもトロンも存在しないヒストリックならではのデッキと呼べるでしょう。

 加速用のマナファクトには《精神石》《面晶体の記録庫》《守護像》等が用いられます。前者2種は中盤以降ではドローに変換できる点が強力です。また後者は、このデッキでは重要なアタッカーの1つです。《見捨てられた碑》が置かれた状況下では4/4という人を殺せるサイズになります。

 このデッキがなぜ強いのかは、環境を考えないと分かりにくい。

 何度も繰り返している通り、ヒストリックではメインデッキからの墓地対策が必須です。理由の1つは、根本原理リアニが存在するため。そしてもう1つの理由は、環境を定義する1枚として《夢の巣、ルールス》が存在しているためです。

 個人的には、ルールスも「印刷するべきではなかった」レベルで強すぎるカードだと感じています。使いやすすぎるからです。オルゾフオーラ、ラクドスアルカニスト、ディミーアローグ――。ルールスは、デッキを選ばずに採用可能です。3マナ以上のパーマネントカードをデッキに入れるときに「ルールスを相棒にするよりも強いか?」という疑問に答える必要があるのは――どんなデッキを組むときでも答え続けなければならないのは――あまり健全とは言えないでしょう。

 さらに《弧光のフェニックス》《悲哀の徘徊者》《死の飢えのタイタン、クロクサ》といった「勝手に墓地から戻ってくるやつら」が、この環境には存在します。通常の除去が通用しないこれらのカードは、ルールスがいなくても危険です。

 黒を採用する利点は、これら墓地利用生物をまとめて対処できる点にあります。黒という色はそもそも墓地対策が得意な色です。何より、全体除去が「追放」なのが環境に合っています。とくに強力なのが《影の評決》で、場だけでなく墓地の3マナ生物までまとめて追放できます。破壊ではなく追放なので、《英雄的介入》《無私の救助犬》で弾かれることもありません。このカードが通れば、ルールスにアドバンテージを頼っているデッキはおおむね沈黙します。

 ついでに言えば、このデッキの必殺技である《精霊龍、ウギン》の2番目の能力も追放です。現在のヒストリック環境は「追放」と書かれた全体除去を連打すると強い――。このメタゲームに基づいて組まれたデッキが、黒茶単と言えるでしょう。

 自分自身が全体除去を連打するデッキなので、アタッカーには主に《守護像》や、《這い回るやせ地》のようなミシュラランドが使われます。これらは青白系のコントロールデッキに対しての強みになるはずです。

 また、膨大なマナの使い道として《不屈の巡礼者、ゴロス》《世界樹》のコンボという小ワザも仕込まれていたりします。無骨な見た目に反して、意外と器用に色々なことができるデッキです。ところでこの《世界樹》、なぜ「伝説」って書いてないんでしょうね。そこら辺に何本も生えているんでしょうか。

 

D. 赤白土地破壊

f:id:Rootport:20210502211106j:plain

 ヒストリック環境で《石の雨》が解禁された結果、赤緑の土地破壊デッキが登場したのは前述の通りです。もう1つの方向性として、赤白の土地破壊デッキも存在します。緑を使うものに比べて、赤白はコントロール要素が強め。時間を稼いで素早く殴るというよりも、相手の動きを縛りつつ、リセットスペルを絡めて、じっくりと勝つというタイプのデッキです。動きとしては、モダン環境に存在する『サン&ムーン』に近いと私は感じました。

 このデッキで特筆すべきは《でたらめな砲撃》です。MtGでは土地は1ターンに1枚しか置けないので、(当然ですが)基本的には4ターン目までに4枚しか土地は並ばないことになります。つまり《でたらめな砲撃》を4ターン目に出せば、相手の土地すべてに「照準カウンター」を載せられるわけです。相手からすれば、《砲撃》が出てから3ターンの間は土地が4枚以上まで伸びなくなり、土地を置けないターンが1回でもあれば、土地が減っていってしまう。

《でたらめな砲撃》を素早く出すためのマナ加速手段として、《精神石》と、そして《アイレンクラッグの妙技》が採用されています。《妙技》というアドバンテージを投げ捨ててマナ加速するカードを見ると、往年のサン&ムーンが《猿人の指導霊》を投げ捨ててマナ加速していた様子を思い出します。

 また、《石の雨》で対戦相手を減速させることも、相対的に自分自身がマナ加速しているようなものだと見做せるでしょう。

 これらのマナ加速から《目覚めた猛火、チャンドラ》のような重量級のフィニッシャーを叩きつけても強力です。

 白い要素としては《精鋭呪文縛り》《傑士の神、レーデイン》《エルズペス、死に打ち勝つ》のようなマナ要求カードが採用されています。

 ランク戦で何度か当たりましたが、赤白土地破壊もまた、まだリストの固まっていないデッキの1つのようです。しかし《でたらめな砲撃》を高速で置くというコンセプトのデッキにはランクマッチで複数人とマッチングしました。みんなが挑戦したくなるようなコンセプトなのでしょう。今後の研究次第で、より強いリストが登場するかもしれません。

 

 

■まとめ

 ヒストリック環境の面白さは、ひとえにデッキの多さにあります。今回の記事では19種類のデッキを紹介しましたが、これでもまだごく一部に過ぎません。この記事で紹介したデッキの一覧は以下の通り。

 

①コンボ

・根本原理リアニ

・パクトオラク

・無限イグナス

②アグロ

・グルール

・ゴブリン

・緑単エルフ

・白単天使

・オルゾフオーラ

③ミッドレンジ

・ジャンドサクリファイス

ラクドスアルカニス

・グルール土地破壊

・イゼットフェニックス

④クロックパーミッション

・ディミーアローグ

シミックフラッシュ

・青単トラッシュ

⑤コントロール&ランプ

・青白系コントロール

シミック系ランプ 

・黒茶単

・赤白土地破壊

 

 先述の通り、このうち青白系コントロールシミック系ランプは非常に大きな括りであり、実際には採用されているキーカードの違う複数のデッキが含まれています。

 また、赤単スライのようなデッキも健在です。カードの選択肢が非常に広いのがヒストリック環境の赤単ですが、最近では《アナックス》のパワーを上げて《エンバレス剣》でブチ抜くという動きが流行っているように感じます。

 この記事を書き始めてから見かけるようになったのは、白単ヘイトベア。《サリア》や《精鋭呪文縛り》で相手の行動を縛りながら殴るビートダウンデッキです。とくに強いのが《エメリアのアルコン》で、根本原理を使うデッキも、ドロースペルを連打するデッキも、たった1枚で封殺できます。

 オンラインゲームのメタゲームは毎日変わります。この記事を書いている間にも、新しいデッキやアイディアが試されて、勢力図が変わっていることでしょう。冒頭の繰り返しになりますが、現在のヒストリック環境には支配的なデッキが存在せず、どんなデッキにも「ワンチャンありそう」と感じられます。デッキの種類が多いので、好みのアーキタイプを見つけやすい環境でもあります。

 では、この環境のなかで私がどんなデッキを握っているかというと――。

 ずいぶん長い記事になってしまったので、私のデッキについてはまた別の機会に紹介しましょう。それでは、また。

 

 

★お知らせ★

新連載『神と呼ばれたオタク』がくらげバンチにて掲載中です。よろしくお願いします。

kuragebunch.com

f:id:Rootport:20210324144538j:plain