デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

ライトノベルは中高生の読むもの?

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最近、ライトノベルの定義論が活発です。




いつからエンタメ小説の事をラノベというようになったのか‐主にライトノベルを読むよ^0^/
http://d.hatena.ne.jp/nunnnunn/20121103/1351966873


ラノベの定義論についてまとまりなく(改訂版)‐ディドルディドル、猫とバイオリン
http://d.hatena.ne.jp/hatikaduki/20121031/1351689802


ライトノベルの定義 ―好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!
http://www2e.biglobe.ne.jp/~ichise/d/2012/1104.html


ライトノベルについていろいろと(前)山本弘のSF秘密基地BLOG
http://hirorin.otaden.jp/e257877.html



このテの「ラノベ定義論」は年に一度ぐらいのペースで蒸し返されていますね。インフルエンザやノロウィルスのように「またこの季節が来たかぁ」と四季の移ろいを感じさせられます。中二病の病原体という意味でもライトノベルは季節性のウィルスといって差し支えないでしょう。 (※差し支えます)
正直に言って、私は読書量が多いほうではありません。ライトノベルをたくさん読み込んでいるわけでもありません。ですので、細かな定義論はほかの“プロ並み”の方々にお任せします。が、最近ちょっと感じていることをメモしておきますと、やはりライトノベルは中高生向けのものだよな……と思うわけです。
もちろんライトノベル・レーベルから発売された作品のなかには明らかに“大人向け”のものがありますし、大人向けの――いわゆる“一般文芸”と呼ばれる――作品群のなかにも、ライトノベル的な要素を持つ作品がたくさんあります。そういう境界例はとりあえず脇に置いて、“ライトノベル”というもやもやした煙のようなジャンルを俯瞰すると、やはり中心部では「中高生向け」という性質が核になっているのかな、と思うのです。
たとえば最近、高木敦史先生の『メイド様の裏マニュアル』を拝読しました。



ドSな主人公・トージは巨大コンツェルンの御曹司で、ドMなメイド・ツギハちゃんをいびり抜いている。が、ひょんなことから彼女のほうが強い力を持ってしまい――。
(公式:http://www.sneakerbunko.jp/series/maid-sama/



典型的なスラップスティック・コメディで、とにかくヒロインのツギハちゃんがかわいそかわいい。やってることはしょーもない (※褒め言葉ギャグなのに、高木先生の豊富なボキャブラリーでなんだかすさまじく高尚な内容が書かれているような錯覚に陥ります。そのギャップが面白い。
で、ツギハちゃんの「かわいそかわいい」というキャラクターですが、これはやっぱり中高生向けのものでないと書けないよなーって思うわけです。具体的には童貞力が高くないと萌えられない。
※ちなみに童貞力とは、重力や電磁力とならぶ自然界の五つの力の一つで、童貞男子的な思考回路を持つ者のみが発することのできるエネルギーです。重要なのは思考回路の有無であって、経験の有無はたぶん関係ありません。
童貞力の低下した、あるいは変態力にレベルアップした読者を想定している一般文芸では、ツギハちゃんのようなキャラは(おそらく)書かせてもらえません。ライトノベルというジャンルだからこそ求められる人物造形なのは間違いないでしょう。
高木先生はもともと『菜々子さんシリーズ』でデビューされた方ですが、こちらはビターテイストなミステリーで、かなり“大人向け”でした。皮肉っぽい文体とあわせて、行間から滲みだす毒気がたまりません。黒い笑いを味わいたい人に超オススメです。

こういう作品を書いていた高木先生でも、編集さんから求められるのは萌えを主眼にしたプロットなわけで、これは、とりもなおさずライトノベルの主な購読者層が中高生だということを意味しているのでしょう。もちろん実際には30代が読者層の中核になっているという話も耳にしますが、どういう作品を送り出すか?という視点に立った場合にターゲットになるのは童貞力高めな中高生――なのではないでしょうか。





最近では『カゲロウデイズ』が大ヒットを飛ばしています。

カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫)

カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫)

小説版はシリーズ累計で60万部売れており、ボカロ曲をベースにした物語でありながらボカロキャラは一切登場しないという異色の作品です。が、私の周りには「読んだよ!」という人がほかにおらず、自分の世界の狭さに戦慄せずにはいられません。どこにいるんだよ、読者!

どうやら、『カゲロウデイズ』は中高生を中心に人気を集めているようなのです。

それがほんとうだとしたら、驚くべき事態です。政府統計を見ると平成24年の中学生の人口は355万人、高校生の人口は335万人、高専生が2万人強だそうです。いわゆる“中高生”の人口は693万人ぐらいだといえます。
この数字を知ると、『カゲロウデイズ』のすごさが分かります。
単純計算で少なくとも30万人ぐらいが第1巻を買ってるわけで、たぶん1クラスにつき1〜2人はカゲロウデイズ買っているのでしょう。読んでいる人はきっともっと多いはず。計算が大雑把すぎることには目をつぶってください。『カゲロウデイズ』は「とにかくすごく流行っている」のです。
私たちの世代でいう『バトルロワイヤル』みたいな感じでしょうか。これだけの流行をニコニコ動画という草の根メディアから作ってしまったのだからパネェのです。『バトルロワイヤル』は、「角川ホラー大賞にて審査員騒然!あまりにも過激な内容につき落選!」という前評判と宣伝があったうえでの大ヒットでした。



もしも――。と、私は考えてしまいます。
もしも『カゲロウデイズ』が単行本で出版されていたら、こんな大ヒットを飛ばすことができたでしょうか。文庫本だったからこそ、つまり中高生のお小遣いで買える価格設定だったからこそ、ここまでたくさんの読者を集めたのではないでしょうか。
似たような話では、アニメ版『バカとテストと召喚獣』の評判が上々だったにもかかわらず、DVDはふつうぐらいの売れ行きだったなんて話を思い出します。ストラップやステッカーなどのグッズ類はすごくよく売れたのに、肝心の円盤は人気に比例しなかったそうです。バカテスのファンは中高生が中心で、円盤は高すぎたのではないか――なんて話をどこかで目にしました。
自由にできるお金の少ない中高生に、質の高いエンターテインメントを提供する、あるいは新しい流行の発信の場を提供する――。そういう意味でも、ライトノベルというジャンルのコアには「中高生向け」という要素は外せないと思うのです。
自分でもだんだん何が言いたいのか判らなくなってきましたが、最近のライトノベルのなかには一般文芸誌からも特集を受けるものがあります。(ちょっと前のハルヒとか)こうやってライトノベルというジャンルの注目度が上がるたびに、ラノベを他のブンガク作品と同列に批評しようとする人が散見されます。でも、それってちょっと違うよなーって思うのです。きのこの山たけのこの里ならいざしらず、カレーと寿司のどちらが美味しいかを比較するのは無意味です。ジャンルが違うからです。「中高生向け」という見方が正しいかどうかは判りませんが、この“違い”に無自覚ではうまく楽しめないような気がします。
結局のところ山本先生のいう「遠慮のないジャンル」というのがしっくりくる定義かなぁ……と、結論のようなそうでないような言葉で今回の記事は〆させていただきます。
あと、超電磁砲が2009年の秋アニメだったということに絶望を隠しきれません。光陰如矢……orz






ばかすぎる。下品すぎる。おもしろい。‐24時間残念営業
http://lkhjkljkljdkljl.hatenablog.com/entry/2012/11/04/112838



我々の青春を引き受けてくれた、往年のライトノベルまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2135173976148896801