「自分から見た自分」と「人から見た自分」はしばしばズレる。というか十中八九、一致しない。私たちが抱いている「自分のイメージ」は当てにならない。周囲のイメージを変えていく必要があるけれど、いまのイメージを利用していくのも大事だ。
こんなことを書くのは、先日、読者の方からのご意見にびっくりしたからだ。
私は「おちゃらけ反社会派ブログ」のつもりで記事を書いている。が、読んでくださっている方のなかには、「真面目」で「社会派」というイメージを持っていらっしゃる方もいるようだ。ツイッターでご意見を拝聴して、正直ひっくり返った。このブログに真面目なコトなんて何一つ書かれてませんよ! ただ真剣なだけです!
そして、ふと、ボーイング747のことを思い出した。
言わずと知れた名作機で、「ジャンボジェット」の愛称で親しまれている。初飛行は、なんと1969年2月9日。じつに40年以上も国際線の主力として活躍してきた。改良型も含めたシリーズ全体で1400機以上が生産されており、大型旅客機の代名詞的存在になっている。
ジャンボジェットの功績は計り知れない。それ以前の国際線では、通路を一本に絞った100席〜200席程度の機体が使われていた。ジャンボジェットの登場により席数が一気に2倍以上になり、就航当初はどこの航空会社でも空席だらけになってしまったらしい。座席を埋めるため値下げ合戦が始まり、海外旅行が一般人の手にも届くものになった。ボーイング747は、インターネットと並ぶグローバル化の立役者だ。
この「ジャンボジェット」という愛称には有名な逸話がある。
当初、ボーイング社はこの愛称を認めていなかったのだ。「ジャンボ」というのは19世紀後半にロンドン動物園で活躍したアフリカ象の名前だ。丸っこい2階席部分が可愛らしく、とにかく巨大――そんな747のイメージにぴったりだった。しかしボーイング社は「鈍重なイメージがあるから最新鋭機にはふさわしくない」という理由で、この愛称を嫌った。当時、当社が公式に使用していたニックネームは「スーパーエアバス」だ。
さて、どちらの愛称のほうがボーイング747にふさわしいだろう?
結局、この「スーパーエアバス」というニックネームはまったく定着しなかった。さらに70年代にはヨーロッパのエアバス・インダストリー社が旅客機の生産を開始したため、ボーイング社はこの名称を避けるようになった。そして現在ではボーイング社も公的な場で「ジャンボジェット」という愛称を使っている。「自分で思っているイメージ」よりも「他人からのイメージ」が優先した例だ。
※そしてミームの競争の実例でもある。
他者は、自分を映す鏡だ。
たった一人の「他者」ならば、その人の嗜好・選好が大きく影響する。したがって「他者からのイメージ」が信頼に足るモノかどうかも分からない。だからこそ私たちは日常生活において、“信頼できる”アドバイザーを求める。どこの馬の骨とも知れない匿名の誰かに、意見を求めたりしない。
しかし「匿名の誰か」が10人、100人と増えてくると話は別だ。個人的なバイアスは取り除かれて、平準化される。そういう「たくさんの他人からのイメージ」は、一般的に「自分の持っているイメージ」よりも正確だ。「自分」もまた、個人的なバイアスから逃れられないからだ。ほんとうに客観的な意見は、たくさんの他者から与えられる。ジャンボジェットがそうであったように。
したがって「他者からのイメージ」を否定するのは得策とは言えない。他者からのイメージを変えるには、究極的には自分を変えるしかないからだ。それが常に利益になるとは限らない。他者からのイメージにびっくりしたときは、そのイメージを利用したほうがリーズナブルだ。
なので私も、ムリに「おちゃらけ反社会派ブログ」を目指すのはやめようと思う。
戦争を希望したり君たちに武器を配りたくなったり、そういうガチで反社会的なことを書くつもりはない。ムリしておちゃらけるつもりもない。どちらかと言えば真剣にやればやるほど笑えるタイプのユーモアの方が好きだ。「バカなふりをした真面目なやつ」ってなんだか小賢しいし、「頭イイふりをした真剣なバカ」でありたいな。
そんじゃーね!
Mythbusters
http://dsc.discovery.com/tv/mythbusters/
ほこ×たて
http://www.fujitv.co.jp/hokotate/index.html
※こういう「真剣なバカ」が大好きです。
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