デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

他のごはん参加者とお会いしたよ!/「読んでもらう」ことの大切さ

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つい先日、『作家でごはん』で知り合った書き手の人にお目文字いただいた。本の交換会を企画したのはいいものの、私はオフ会の経験がほとんどない。そこで、オフ慣れするために声をかけたところ、一緒に晩ご飯を食べることになった。
お会いしたのは、大山文子さん。エンタメ一直線な私とは対照的に、ジャンルにとらわれない創作をなさっている方だ。私に比べれば、純文学的な作品を多く書かれていると感じる。執筆を始めたのは半年ほど前だという。様々な違い・共通点があって、とても面白かった。


午後7時、京都は三条大橋のたもとに集合した。「Rootportさんですか?」と声をかけられるまでの緊張感は異常だ。今をさかのぼること**年前、初めてデートに出かけた時も、ここまで緊張はしなかったはず。ツイッターに無意味につぶやきまくって、緊張をまぎらわす。
そして合流。大山さんの人相を詳述することは(ネットマナー的に)できないが、わりと想像通りの方だった。『十五夜幸福論』や『最後から二番目の思想』をいかにも書きそうな、情熱と知性のにじみ出している方だった。


会話していて感じたのは、まず相違点。
私は小説を分析する際に、文体とストーリーとを分けて考えている。語彙や文章のテンポなど、詩歌的な側面は小説ならではのものだと言えよう。それに対しストーリーは、映画や舞台、マンガなど、表現方法を問わずに物語ることができる。心に残るワンフレーズが、ストーリーの流れとは無関係な場合も少なくない。小説は、あくまでもストーリーを語るための一形態だ。これが私の考え方。
それに対し大山さんは、ストーリーと文体とを密接不可分なものだと捉えているように感じた。(あくまでも私に比べて、であるが)小説が“文章”による芸術である以上、ごく自然な態度だといえる。こうした視点の違いが、とても興味深かった。
また世界観そのものも違った。私たちの書いたものを比較していただければ、視点の違いは明らかだろう。私は物事の因果関係がはっきりした、わりとソリッドな世界観を持っている。たとえばパラレルワールドは思考実験としては面白いけれど、私には観察できない。観察できないものは語れない。だから、目で見て分かるものを積み上げていこうじゃないか、という態度だ。“物証的”な世界観・宇宙観と言ってもいいだろう。それに対して大山さんは、もっとソフトな世界観を持っていらっしゃった。大山さんが口にしていたのは「ゆらぎを描きたい」というセリフだ。人間の心理のブラックボックス性であるとか、量子力学っぽい「観察するゆえにそこにモノが存在しうる」という世界観である。


もちろん共通点もあった。まずお互いにAB型であること。日本では一番少ない血液型のはずなのに、なぜかAB型は集まる。そして「言いたいこと」の多さ。一言では言い表せないし、エッセイや論文では表現できない「叫び」みたいなものを、私も大山さんも胸の内に秘めていると感じた。そういうモノがあるからこそ、小説なんて七面倒くさい方法で表現しようとするのだ。
なにより私が感動したのは「客観的な眼」を共有できたことだ。私は学生時代、文芸部の末席に籍を置いていた。が、他の部員とあまり話が合わなかった。たしかに定期的に冊子を配布していたものの、それに対する「反響」に、他の部員はあまりにも無関心だった。結局、自分の欠点を内省することもなく、駄文を積み重ねていた。
しかし『作家でごはん』は、わりと「辛辣な感想がつきやすい」ことで有名なサイトだ。書き手さんによっては真に受けすぎて、心理的に参ってしまう場合もあるという。(あまり大きな声では言えないけれど)真剣に受け止めるべき感想と、参考程度にとどめるべき感想とを取捨選択しないといけないよね、みたいな話もできた。創作好き同士のあるあるネタで盛り上がった。とにかく「読者がいてこその創作だ」という点では、一致していたと思う。


さらに、直接会って言葉を交わさなければ分からないことの多さにも、改めて気づかされた。『作家でごはん』で私は、ある程度書ける作者さんに対して、たびたび「リアルでの執筆仲間を探してはいかがですか」とコメントしてきた。それを裏付けられたカタチだ。
文章だけで感想のやりとりをすると、どうしても誤解が生じる。感想は、主観性から逃れられない。どんなに客観的なコメントを付けたつもりでも、感想書きの主観が紛れ込む。加えて、作者さんが客観的に感想を受け止められるかといえば、そうでもない。「面白くなかった」という感想を付けられたら、誰だって「なんだとこのやろう!」という気持ちになる。誤解を解くには、綿密に意見交換をするほかない。
では小説投稿系のサイトでは、それが可能だろうか。『作家でごはん』に限らず、コメントのキャッチボールは一往復で終わってしまう場合が多い。さかんな意見交換によって誤解を解くチャンスは少ない。
今回、お互いの作品につけた感想を再チェックして、それぞれの誤解を解くことが出来た。とても有意義な時間だった。やはり作品に対する反響を得ると、作者は変わる。リアルでの創作仲間がいないそこのあなた! 無理してでも見つけたほうが、執筆の腕は上がると思うよ!!



※ちなみに本の交換会については、随時参加希望者を募集しています。
※日程を固めました。興味のある方は、ぜひメールをください。


【日時】11月13日(土)ランチタイム
【場所】京都
【参加受付】rootport_bookexchange◆hotmail.co.jp
※上記◆を@に書きかえて送付してください。メールをくださった方には、より詳細な予定をお伝えいたします。


◆本の交換会・ルール◆
まず、一人1〜5冊の本を準備します。
・ランチを食べながら、一人ずつ自己紹介。
・ランチを食べ終えるまで雑談。
・本交換会スタート。最初の人から、1分程度で1冊ずつ本を紹介。
・欲しい人が手を挙げて、複数人いたらジャンケン。
・次の人へ回す。





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