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「病的に働きすぎの日本人」を変えるために

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◆はじめに◆
日本人は働き過ぎだと言われている。有給休暇を消化するのは「悪」と見なされるし、サービス残業はあたりまえ。過労死するのは自己責任だ。私たちは閉塞感に包まれながら生きている。
この社会を変えるため、会計制度の側面から何かできるのではないか。アイディアを思いついたので書き残しておく。具体的には以下の2つ。
1.有給休暇引当金の導入
2.総労働時間の開示の義務付け
これらの制度を適用することで、企業活動や日本人の価値観を変えることができるのではないだろうか。労基署まかせにしている現状よりも、少しはマシになるはずだ。
※不勉強のまま書いているので、間違いも多いと思います。ご指摘いただければ幸いです。


◆利益計算の重要性◆
会計制度は、企業の生産性を正しく測るためにある。
生産性の低い(利益を出せない)企業が増えると、社会全体が不景気の波に覆われる。もしもあなたが株主なら、より生産的な企業に投資をしたいはずだ。私たち労働者から見れば、生産的な企業のほうが、より働きやすそうに見える。ほら、グーグルで働いてみたいじゃん!
利益を正しく算出するのは、経営のためだけではない。社会全体、資本家、そして私たち労働者――多くの人間がそれを必要としている。だからこそ会計制度は発達し、財務情報の開示が法律によって義務付けられた。企業の生産性を見積もるのは、とても重要なことなのだ。


◆1.有給休暇引当金の導入◆
社員が有給休暇を未消化のまま残していた場合、その日数ぶんの賃金を未払費用として計上する。これが有給休暇引当金だ。日本ではあまり馴染みのない制度だけど、米国の会計基準IFRS国際会計基準)では、これが取り入れられている。(※借方・費用/貸方・負債という仕訳になる)
未消化の有休がたくさん残っていれば、それだけ未払費用も増える。それは企業の利益を圧迫する。この制度の下では、有休を消化すれば消化するほど企業の財務状況が良くなる。
なぜ、未消化の有休を「未払費用」にするのだろう。
不勉強なりに想像してみた。有休の完全消化があたりまえの国ならば分かりやすい。たとえば「年収300万円、年間200日労働、10日間の有給休暇」という例を考えてみよう。有休の完全消化が当たり前の世界ならば、最初からその日数を差し引いた期間に対して給与が発生する。上記の例ならば、企業は190日ぶんの労働に対して給与を支払っていることになるはずだ。逆にいえば、有休が未消化で残った場合、その日数は「タダ働き」をさせたことになる。
タダ働きによって生みだした利益を表示することが、果たして、その企業の生産性を正しく表示することになるだろうか。タダ働きさせた日数に賃金が発生していたと仮定したほうが、より正確なのではなかろうか。
たぶんこういう発想から、有給休暇引当金という制度が生まれたんじゃないかな。教えてエロい人。
この制度が導入されれば、企業は率先して有給休暇の消化をうながすはずだ。未消化で残ると、その分の未払費用を計上しなければならない。費用は利益を圧迫し、財務状況を悪くする。決算書の見栄えを良くするため、経営者たちは有休消化をうながさざるをえない。


◆2.総労働時間の開示の義務付け◆
現在の制度では、社員数の開示が義務付けられている。企業規模が分かるだけでなく、その企業の生産性を見積もることができるからだ。その企業の当期純利益を人数で割れば、社員一人当たりがどれだけの儲けを生み出しているか分かる。(ちなみに任天堂は、一人当たり1億円ぐらいの儲けを生み出している。なにそれこわい)
そこからもう一歩踏み込んで、社員の総労働時間を開示するようにしたらどうだろうか。
同じぐらいの社員数で、同じぐらいの儲けを出している会社が2つあるとする。現在の制度では、どちらの会社の生産性も同じに見える。だけど、もしも片方は月100時間の残業を当たり前としている会社で、もう片方は1日5時間勤務の会社だとしたら、どうだろう。2社の生産性には埋めがたい溝があるはずだ。あくまでもこれは極端な例だけど、企業の生産性をより正確に把握したいのならば、人数を開示するだけでは不十分だ。社員の労働時間も表示させるべきだ。
労働時間を表示させれば、資本家はより生産性の高い企業へと投資できる。私たち労働者にとっては、ブラック企業を避けることができる。自社の生産性を高く見せるため、企業は時間外労働を減らそうと努力するだろう。
そして何より労働時間の開示を義務付けると、サービス残業が強烈に抑制される。サービス残業は「開示資料に載らない労働時間」だからだ。サビ残をさせると、それは開示すべき数字を改竄したことになる。つまり、粉飾だ。
サービス残業を監視しているのは、現在では労基署だけだ。しかし、総労働時間の開示を義務付けた場合、監査法人や投資家など、さまざまな視点からのチェックを受けることになる。この制度を導入すれば、無賃労働は激減する。


◆これらの制度は実現可能か◆
現在、日本ではIFRS国際会計基準)への移行準備が進められている。有給休暇引当金は、近い将来、実際に適用されるだろう。また労働時間の開示も、難しくはないはずだ。どんな企業でも社員の労働時間を把握しているはずだし、それを有価証券報告書に載せるだけでいい。
これら2つの制度が導入された場合、企業は有休を消化させざるをえなくなる。また、サービス残業を無くさざるをえなくなる。もしかしたら、この制度の導入によって潰れる企業もでてくるかも知れない。
ハローワークに相談すると「中小企業ならサービス残業なんて当たり前だよ?」と言われるらしい。違法で当たり前という回答を、あなたはどう思うだろうか。ファーストフード店に入って「この店では違法な食品添加物を使ったメニューしかありません」と言われたら、どう思うだろう。本屋に並んでいるのが違法なエロ本だけ、みたいな状況だ。来いよアグネス!
本来なら潰れて当然の企業が、労働者の無賃労働によって生き永らえてきた。そういう企業こそ「ゾンビ会社」と呼ぶにふさわしい。「会社」という名前の人間はいない。会社とはあくまでも概念的なものでしかない。役員からバイトまで、そこには人間しかいない。何のために企業が存在するのか、企業の社会的な存在意義とは何なのか。閉塞感に満ちた時代だからこそ、考え直すべきではないだろうか。


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