わけあって止まっていたアニメ『新世界より』をようやく見終わった。
出会いと別離と和解。
罪と罰と赦し。
そして、原罪。
物語の基本的な要素を大盛り全部載せにしたみたいなお話だと感じた。
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しかし、こういう物語を見ると「創作って何だろう?」と思わずにいられない。
物語の基本的な要素は大昔の神話の時代には出揃っていて、あとは時代に合わせたマイナーチェンジを繰り返してきた。『新世界より』も例外ではない。
何かを『オリジナル』と呼ぶやつは、十中八九、元ネタを知らないだけなんだ。
――ジョナサン・レセム
なお、原作者の貴志祐介さんやアニメスタッフの創造性を否定する意図はない。もっとメタな次元の話をしているのだ。これだけ創造性豊かな才能が集まって作られたものが、構造的に似通ってしまうのはなぜだろうか? たぶん人間の本性とか本質みたいなものに関わっているのだろう。こういう物語を面白がるように、私たちはできている。
ただし、物語の基本に忠実だからと言って、必ず面白いとも限らない。
基本から大きく外れた作品だからと言って、つまらなくなるわけでもない。
たとえばフィリップ・K・ディックの作品ならば、物語として理路整然としている『高い城の男』や『逆まわりの世界』よりも、物語としてぐちゃぐちゃな『ユービック』のほうが面白かった(※個人的感想)。
『逆まわりの世界』と『ユービック』には、どちらも「時間退行」というよく似た現象が登場する。
『逆まわりの世界』のほうがキャラ立てがきちんとしており、時間軸は明快で、誰が・何をしようしているのか分かりやすい。ディック作品ではしばしば何が現実なのか分からなくなっていくが、そのディックらしからぬほど「きちんとした物語」だ。
比較すると『ユービック』はキャラ立てが浅く、せっかくの超能力戦隊があまり活かされていない。展開もやや唐突で、伏線→回収の流れが乱れている。一言でいってゴチャゴチャした作品だ。けれど理路整然とした『逆まわりの世界』よりも、『ユービック』のほうが蠱惑的な魅力に満ちているのだ。
とはいえ『ユービック』は、やはり希有な例だろう。
物語には基本的な要素や基本形と呼べる構造があって、それらに従って書かれたもののほうが平均的に面白い。人の心を動かすメカニズムが組み込まれた物語になりやすい。
『世界の中心で愛をさけぶ』なんてまさにそれじゃないか? と思う。
セカチューが大流行していたころ、事情通の読書マニアからは批判されて総叩きにあっていた。しかし、あれは小説から無駄な要素をとことん排除して、「感情を動かすメカニズム」に純化させた作品なのだ。だから、たくさんの人を泣かせることができた。
もちろん『新世界より』は、セカチューとは比べものにならないほど作り込まれた物語だ。アニメ版では全25話、濃密な映像体験だった。セリフもいい。心に響く言葉が多かった。
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※そういう意味では、物語を放棄した「日常系」ってやっぱりすげーアバンギャルドだったのかなって思う。『きんいろモザイク』とかヤバいじゃん。物語ってよりも電子ドラッグに近い。ダウナー系の。見てるとふんわり気持ちよくなっていくわけよ。ドラッグだから物語は必要ないわけよ。