「聞く」と「訊く」のどちらが正しいか? という話題が盛り上がっている。
なぜ広まった?「『訊く』が正しい」という迷信
http://d.hatena.ne.jp/takeda25/20121113/1352799353
「訊く」という表記について
http://d.hatena.ne.jp/kanimaster/20121113/1352815776
で、私は意識的に「訊く」を使っている。
耳に入ってきた音を認識するのと、誰かに何かを尋ねるのとでは、まったく別の行為だからだ。
私の感覚としては、「聞く」と「訊く」は別々の単語だ。wrapとrapの綴りが違うように、同音異義語は綴りを変えて区別するのがよろしかろう、と考えている。
私が「訊く」という表記を使い始めたのは、宮部みゆき先生の小説で見かけてからだ。ミステリーでは、物音を「聞く」ことが事件解決のきっかけになることもあれば、誰かから話を「訊く」ことで真相解明につながることもある。「訊く」と「聞く」の区別がことさら大事なジャンルではないだろうか。
なお、宮部みゆき先生ご自身は、松本清張やスティーブン・キングから強く影響を受けたと言っている。たとえば『クロスファイヤ』は、キング『ファイヤスターター』からたくさんのインスピレーションを得たことがうかがえる。手元に資料のない状態で書き殴っているため確認できないが、清張が「聞く」と「訊く」の使い分けをしていたかどうか、ちょっと気になる。あるいはキングの翻訳をした永井淳や深町眞理子はどうだろう。
文章を書くうえで一番大切なことは、正しい日本語を使うことではない。日本語文化圏に生きる私たち全員に、「正しい表現」を決める権利がある。大事なことは、読んだ人に伝わることだ。その文章を読んだ人が何を感じ、考えるのか。他人の気持ちを想像することだ。
そして文章力を高めるためには、信頼のおける“師匠”を見つけて、その技を盗むのがいちばんだろう。たくさんの読者に支持されている人の文章は、まず間違いなく「伝わる文章」であるはずだ。学ぶべきものがたくさんあるのだ。
それに対して学校の教科書は、学校制度がなければベストセラーにはならない。教科書に「正しい」と書かれている表現が、伝わりやすい表現とは限らない。
伝わる文章の書き方は、教科書よりも作家のほうが詳しい。
※あわせて読みたい
「『若い発想』信仰の最大の犠牲者はお笑い芸人」からはじまる、お笑い評論の話。
http://togetter.com/li/405488
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