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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

ゲームにシナリオは必要か?

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ゲームの「シナリオ不要論」があるらしい
『パズドラ』にせよ『モンスト』にせよ、シナリオらしいシナリオは無い。にもかかわらず爆発的なヒットを飛ばしている。だからユーザーはゲームにシナリオを求めていないし、もはやゲームシナリオは無用の長物なのではないか、という説だ。

パズル&ドラゴンズ(Puzzle & Dragons)

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結論からいえば、そんなもんゲームによる
シナリオがなければ『Steins; Gate』のようなゲームは成立しないし、『テトリス』のようなゲームにシナリオはいらない。シナリオが必要かどうかはゲームの種類による。はい、議論終了──。

で、終わるのは寂しいので、ゲームシナリオについてもう少し突っ込んで考えてみたい。







1.ゲームの「報酬」
手始めに、ゲームの「パラダイム」について考えてみよう。
パラダイムとは、物事をとことん抽象化して、概念レベルまで単純化したもののことだ。たとえばテーブルのパラダイムは「脚の上に天板が載っている」ことだ。素材や脚の数、天板の高さが変わっても、私たちはテーブルをテーブルだと認識できる。なぜならどんなに形が変わっても、テーブルのパラダイムは共通だからだ。
では、ゲームのパラダイムとは何だろう?
様々な意見があるだろうが、私は「プレイヤーの行動に報酬を与えるもの」がゲームだと思う。
たとえばテトリス十字キーを動かすと、音ともにブロックが移動する。楽しい。ブロックを横一列に並べると音ともに消える。楽しい。ブロックを四列同時に消すこともできる。爽快だ。ブロックの落ちる速さがだんだん増していき、同時にスコアが増えていく。すごく楽しい
音が鳴ったり、画面のなかのオブジェクトが動いたり──。そんな単純なことでも人間は「楽しさ」を感じる。テトリスでは、こういう小さな楽しさが積み重なって大きな楽しさに発展していく。こういう楽しさや爽快感がプレイヤーに対する「報酬」である。しかも重要な点は、プレイヤーが積極的に行動すればするほど、報酬も大きくなっていくということだ。
「プレイヤーの行動には報酬が与えられる」
このパラダイムはあらゆるゲームに当てはまる。
パズルゲームの報酬は、ブロックやゼリー状の生物を消す爽快感とスコアだ。RPGの報酬は、敵を倒す爽快感とシナリオだ。『Steins; Gate』のようなADVではゲームの冒頭で「謎」が提示され、それに対する「答え」が報酬として機能する。したがってテキストADVはゲームというよりもミステリー小説に近い。
(※逆に、ミステリー小説がゲーム的だとも言える)




普通、ゲームはプレイ時間が長くなるほど報酬が大きくなる。
たとえばブラウザゲームスマホアプリが分かりやすい例だろう。それらのゲームでは「ログインボーナス」があるのが一般的だ。たまにしか遊ばないプレイヤーよりも、毎日遊んでいるプレイヤーのほうがたくさんのアイテムをもらえるようになっている。
もちろん、ただログインするよりも、ゲーム内でちょっとでも行動をしたほうが報酬は大きくなる。『艦これ』で言えば、編成や造船をするだけでも、ログインして何もしないよりは楽しい。遠征に出したほうが楽しいし、出撃したほうがたくさんの報酬をもらえる。ゲーム内での行動が増えるほど、言い換えればゲームを遊ぶ時間が長くなるほど、報酬は増えていく。
これがゲームの報酬を設定するときの第一の軸、「時間の軸」だ。


ゲームの報酬を決めるのは、プレイ時間だけではない。
身も蓋もないが、課金額によっても報酬は変わる。
たとえばmobageの『アイドルマスターシンデレラガールズ』のようなゲームでは、スタミナ回復薬を買えば買うほど、よりたくさんの行動が可能になり、よりたくさんの報酬を得られる。ガチャを回せば回すほど、いい報酬を入手できる可能性が高くなる。課金額が増えれば報酬も増える。当然の話だ。
これがゲームの報酬を設定するときの第二の軸、「課金の軸」だ。
2本の軸ができたので、さっそくマトリクスにまとめてみよう。



まず「プレイ時間も長いし課金額も多いプレイヤー」がいる。ゲームを作る側からすれば、いちばんのお客様だ。こういうプレイヤーをここではS層と呼ぼう。
こういうプレイヤーには、いちばん魅力的な報酬を与えなければいけない。高額のガチャを回して入手した装備品が、無課金で手に入るものより弱くては話にならない。キャラクターを長時間の遠征に出したなら、それだけたくさんの素材や経験値を持ち帰ってこなければダメだ。成功しているゲームのほとんどで、プレイ時間と課金額のどちらも大きくなったときに最大の報酬を得られるようになっている。
逆に、「プレイ時間も課金額も少ないプレイヤー」について考えてみよう。ここではC層と呼ぼう。言うまでもなく、こういうプレイヤーにはあまり報酬が与えられない。
問題は「プレイ時間は短いが課金額の多いプレイヤー」と、「プレイ時間は長いが課金額の少ないプレイヤー」だ。前者をA層、後者をB層と呼ぼう。両者にはほぼ同じ報酬が与えられる場合が多いようだ。
遊ぶ時間はたくさん取れないけど、キャラクターは強くしたい。そういう人は課金ガチャを回して装備品を買ったり、課金によって経験値を稼いだりする。逆もまた真なりだ。課金できるお金はないけれど、地道にプレイ時間を増やすことで報酬を得ようとするプレイヤーがいる。
ブラウザゲームスマホアプリでは、ゲームの値段を決めるのは運営側ではない。そのゲームに毎月10万円をかけてもいいと考えるプレイヤーもいれば、1000円ずつなら払ってもいいと考えているプレイヤーもいる。無料でなければ遊ばないと考えるプレイヤーもいるだろう。アイテム課金型のブラウザゲームスマホアプリは、プレイヤー側がゲームの値段を決めている。
しかも、その値段はプレイヤーごとに違う。A層とB層の報酬に似たようなものが置かれるのはそのためだ。100円しか払いたくないプレイヤーに500円を払わそうとすれば、反感を買うのは当然だ。課金できる金額が人によって違うので、払えないぶんをプレイ時間で補えるようにしてあるのだ。
(※なお、実際にはB層よりもA層のほうがちょっとだけいい報酬を置かれる場合が多いようだ。課金をうながすためだろう)






『パズドラ』や『ラブライブ! スクールフェスティバル』のようなゲームでは、ここに第3の軸が加わる。プレイヤースキルの軸だ。これらのゲームでは、上手い人ほどたくさんの報酬がもらえる。プレイ時間や課金額が同じでも、スキルの高い人のほうがトクをするようになっている。
第3の軸については話がややこしくなりすぎるので、今回は割愛しよう。





2.シナリオは「報酬」たりうるか?
ここまでは「どんな報酬を与えればいいか」の話をしてきた。ではプレイヤーにとって、シナリオは「報酬」たりうるのだろうか?
結論から言えば、シナリオは報酬になりうる。
『Steins; Gate』ではシナリオそのものが「報酬」になっている。また、分かりやすいのはJRPGだろう。たとえば『グランディア』や『ファイナルファンタジーⅩ』のような典型的なJRPGでは、一定の段階までプレイが進行すると「ごほうび」として美麗な映像が流れる。15年くらい前のJRPGではシナリオそのものが報酬になっていたし、それで成功していた。






現在のゲームでも、シナリオは報酬になりうる。
なぜ蜂の巣にされながらもプレイヤーは『コール・オブ・デューティー』のキャンペーンモードをやめられないのか。なぜ『アサシン・クリード』で、AIの敵が暗殺に適した場所に移動するのをじっと待っていられるのか。言うまでもなく、ストーリーの続きが気になるからだ。シナリオが「報酬」になっているからだ。
お話の続きを知りたいと感じるプレイヤーがいる限り、シナリオが報酬になりうることは疑いようがない。パズドラやモンストのようなシナリオ無しのゲームが幅をきかせているスマホアプリの世界でも、『ブレイブフロンティア』や『グランブルーファンタジー』、『チェインクロニクル』のようなシナリオを重視した作品がリリースされ、一定の成功を収めている。『ONE PIECE トレジャークルーズ』では原作の名シーンがFlash動画で再生される。ワンピースのファンにとって、マンガやアニメの物語を思い出すことが報酬になるからだ。
シナリオは報酬になりうる。これ以上の説明は要らないだろう。
問題は、シナリオがどんな時でも報酬になるのか、だ。





3.シナリオの必要性
正直に言って、シナリオを課金報酬にするのは難しくなっていると私は思う。
先述のマトリクスでいえば「A層」に対する報酬として、ゲームのシナリオはあまり適していない。課金の報酬にシナリオを差し出すということは、言い換えれば「ストーリーそのものにお金を払ってもらう」ことを意味している。面白いお話を見たいだけなら、映画やマンガ、小説で充分だ。ゲームである必要はないはずだ。
発売当時の『ファイナルファンタジーⅦ』は、まるで映画のようなゲームだと言われた。『グランディア』や『ファイナルファンタジーⅩ』のころは、美麗なムービーシーンを見せるだけて報酬になった。ストーリーにお金を払ってもらうことができた時代だ。
ところが現在、ハイエンドなゲームでは美麗なムービーシーンそのものを操作できるのが当たり前になった。『LAST OF US』や『WATCH DOGS』のグラフィックの美しさと言ったら! 息を飲むほど綺麗な映像を、自分の手で動かせる。だからムービーシーンを見せるだけでは報酬にはならなくなった。





個人的な感想になってしまうが、『ブレイブフロンティア』や『グランブルーファンタジー』はやや退屈を覚える。シナリオがつまらないわけではない。『グランブルー』のド王道なストーリーは、むしろ私の好みにばっちりハマっている。しかしどうしても、「ゲームをやりたいのであってお話を読みたいわけじゃない」という感触をぬぐい切れないのだ。ただでさえ積ん読している小説がたくさんあるのに、どうしてここで紙芝居を読まないといけないのだろう?と自問自答してしまう。『ONE PIECE トレジャークルーズ』のFlash動画は、原作にあまり思い入れのない私にとってはゲーム進行のさまたげになった。
スマホアプリでは『チェインクロニクル』がこの問題を上手く解決している。紙芝居でストーリーを語るのは他のゲームと同じだが、紙芝居の途中に「選択肢」が登場するのだ。選択した答えによって、ストーリーが大きく分岐するわけではない。話し相手の返答が変わるぐらいだ。しかし、それだけでストーリーへの没入感は大いに高まる。『ファイナルファンタジーⅩ』のムービーシーンが『LAST OF US』で動かせるようになったのと同様に、プレイヤーがシナリオを操作してストーリーに参加できるからだ。プレイヤーがお話そのものを操作できるという点で、『チェンクロ』はタワーディフェンスというよりもテキストADVの派生型といったほうがいいだろう。
ゲームのシナリオは、報酬になりうる。
しかし課金の報酬にはなりにくい。
つまりゲームシナリオは、時間に対する報酬として機能するのだ。
お話の続きが気になることも、世界観が気に入ることも、どちらもプレイ時間を長引かせることにつながる。シナリオがどんなに面白くても、「よし課金しよう」とは思わないかもしれない。しかし、「あと五分だけプレイしてみよう」と思わせることはできる。面白いシナリオなら、絶対にできる。
先述のマトリクスで言えばB層に対する報酬。それがゲームのシナリオだ。
しかも重要な点は、人は急にはA層にはならないことだ。あと五分だけ長く遊んでみようと思えないようなゲームに、カネを払う人はいない。まずは無料で試してみて、面白ければプレイ時間が長くなって──。それから、人はカネを払う。



もちろん世の中は広いので、「どんなゲームにもまず5,000円課金してみる」という人がいる。しかしそういう人でも、あと五分長く遊びたいと思えないゲームにそれ以上の課金はしないだろう。言葉にしないだけで、胸のなかでは「カネ返せ」と思うはずだ。
プレイヤーに、あと五分だけ長くゲームを遊ばせる。
面白いシナリオを準備するのは、その方法の一つだ。




    ◆




ゲームにシナリオは必要だろうか?
冒頭で書いたとおり、シナリオが必要なゲームとそうでないものがある。たとえば『テトリス』のように、あるいは『パズドラ』や『モンスト』のように、ゲームの手触りそのものが面白ければシナリオはいらない。ゲームのシステムだけで、プレイヤーに「もう少し遊んでみよう」と思わせることができるからだ。システムだけでプレイ時間を長引かせることができるゲームなら、シナリオは不要だ。
しかし、だ。
すべてのゲームが『パズドラ』ではないし、『モンスト』でもない。『テトリス』に匹敵するような中毒性の高いゲームは、そうかんたんに生まれない。大半のゲームは、システム面では甲乙つけがたい。システムだけでプレイ時間を長引かせるのは難しい。
ここにシナリオの必要性が生まれる。
システムの中毒性とシナリオの必要性は、たぶん反比例の関係にある。システムの中毒性が極めて高ければ、シナリオは要らない。そこそこの中毒性なら、世界観を見せるだけのシナリオでも充分だ。一方、たとえばテキストを読んで選択肢を選ぶだけのシステムなら、そこに中毒性はない。だからテキストADVではシナリオがもっとも重要な要素になる。
今回の記事ではスマホアプリやブラウザゲーを念頭において、時間と課金額の2軸から報酬を考えてみた。しかし、コンシューマーのゲームソフトでも同じことが当てはまるだろう。
まず体験版を無料で遊ばせる。システムが独特で面白ければ、ストーリーなど無くても「もっと遊んでみたい!」と感じさせて、購入に至らせることができるはずだ。C層からB層、S層へとプレイヤーが育つのだ。
一方、FPSやTPSはあまりにも発売本数が多く、システムでは差別化が計れない。だからシナリオで「もっと遊んでみたい」と思わせる必要がある。コール・オブ・デューティーからキャンペーンモードが無くならないのはそのためだ。








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