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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

ブログは何文字で書けばいいのか?

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ブログの記事は、どれぐらいの長さが適切だろう。
短すぎれば内容が薄くなるし、長すぎれば読者は読むのをやめてしまう。たくさんの人に読んでもらえるのは、何文字ぐらいだろう。
結論から言えば、ブログは好きな長さで書けばいい。
ただし、できれば2,600字以内が望ましい。それ以上の長さになる場合は内容をいくつかのパートに分け、1パートあたり1,300字程度で書くのが望ましいと思われる。
今回の記事では、その理由を説明しよう。



     ◆



日本人の読書スピードは、毎分400字〜600字ほどだと言われている。また、テレビCMが10分〜15分おきに挿入されるのは、日本人の集中力がその程度の時間しか持続しないからだと聞いたことがある。
ここから、ブログの記事に適切な原稿の文字数を算出できる。
大多数に向けて投げるときは、ハードルの低い側にあわせるべきだ。したがって、400字 × 10分間 = 4,000字が、読者が集中力を失わずに読み切れる原稿の長さになりそうだ。つまり4,000字以内で書けば、もっともたくさんの読者を獲得できるはずだ。



この仮定を検証するため、伝説の大人気ブログ『Chikirinの日記』を調べてみた。知らない人(なんているのか?)のために解説すると、月間200万PV超のバケモノ級のブログだ。
ただし、最近書かれた記事を調べてもあまり意味がないだろう。
というのも、ブログのアクセス数には正のフィードバックがかかるからだ。固定読者が増えれば拡散されやすくなり、さらに固定読者が増えていく。しかし、いま私たちが知りたいのは記事1本あたりのPV数を最大化する方法であって、流行るブログの作り方ではない。充分な固定読者を獲得した最近の記事ではなく、歴代の人気記事を調べたほうが、より適切な文字数を推測できるだろう。
そこで、はてなブックマーク数が多い順上位10位の各記事の字数を調べてみた。

Chikirinの日記─人気記事一覧


なんで全員にリーダーシップを求めるの?(19字)
ブクマ数:2178 USERS
字数:2948字

10年以上のローンはだめです(14字)
ブクマ数:1414 USERS
字数:2907字

将来有望な若者の将来価値を毀損する、大きなワナ(23字)
ブクマ数:1326 USERS
字数:2680字

強みを活かすというアホらしい発想(16字)
ブクマ数:1172 USERS
字数:2231字

アフリカが発展しない理由(12字)
ブクマ数:1171 USERS
字数:2800字

未完の「能力リスト」(10字)
ブクマ数:1090 USERS
字数:1521字

ギリギリまで「まとめに入らない」能力(18字)
ブクマ数:1078 USERS
字数:2368字

“検察が逮捕したい人”一覧(13字)
ブクマ数:1058 USERS
字数:2392字

正社員ポジションはどこへ?(13字)
ブクマ数:1024 USERS
字数:2636字

新)4つの労働者階級(10字)
ブクマ数:1018 USERS
字数:3690字



※字数:書き出しの1文字目から文末の「そんじゃーね」までをWordにコピペして測定。スペース及びAmazonアフィリエイトに記載される著者名、出版社名等も含む。また、添付画像内の文字数は含まない。
※各リンク末尾のカッコ書きはタイトルの字数。
※ブクマ数は2014/2/20時点のもの。





ひさしぶりに読み返したが、やはりちきりんさんの記事は面白い。この歯切れの良さが人気の秘訣だろう。平均字数は2,617.3字。「4,000字以内」という仮説よりも、だいぶ短い。
なぜだろう?
おそらく、ブログは読書ではないからだ。
たとえば静かな部屋で、椅子に座ってページをめくる。それが読書だ。毎分400字〜600字という読書スピードは、本に集中できる環境で計測したものだと思われる。
一方、ブログはそういう読まれ方をしない。
たとえば会社の昼休みに、いつ上司から声をかけられるか分からない状況で読む。あるいは通勤途中の電車で、降りる駅を間違えないよう注意しながら読む。ふつうの本よりも集中できない環境でブログは読まれる。だから読むスピードがぐっと落ちてしまうのだろう。
ところで映画字幕は「1秒間に4文字」が基本になるという。
これはかなりあいまいな基準で、作品の質や字幕翻訳者によって大幅に違うらしい。とはいえ「1秒間に4文字」ならば1分間で240字だ。字幕は映像と一緒に読まれるため、文字に集中できない。だから読むスピードが遅くなってしまうのだと考えられる。
1分間に240字。これを人間の集中力が続く10分間に当てはめれば2,400字だ。『Chikirinの日記』の人気記事の長さに、かなり近い数字だ。
つまり、読むスピードからいえば、ブログの記事は書籍よりも映画字幕に近い。スマホの普及によって、この傾向はますます強くなるだろう。場所や時間を選ばず、何かをしながら読まれる場合が増えるはずだ。
バケモノ級のブログ『Chikirinの日記』の記事は、約2,600字で書かれていた。つまり現実には、読むスピードは毎分240字よりも少し早いか、集中力は10分間よりも少し長持ちするか、その両方だろう。
ブログの記事は、2,600字以内で書くのが望ましい。



     ◆



この基準は、どんなブログにも当てはまるのだろうか。
私は「2,600字以内で書かなければならない」なんて窮屈な主張をするつもりはない。『Chikirinの日記』の真似をしても、うまくいくとは限らない。ちきりんさんは2人も必要ないからだ。
問題はもっと長い記事を書きたいときに、どうやって書けばいいのかだ。
記事の歯切れの良さは、論理の緻密さとトレードオフだ。記事が短ければ、そのぶん切り捨てるものも多くなり、論理の飛躍が目立つようになる。記事の穴を減らすには、ある程度の字数が必要だ。
また短い記事では、著者の思考を追いかけて試行錯誤を一緒に楽しむこともできない。 2,600字では冒頭で示した「結論」にかんたんな論拠をつけるのが精一杯だ。著者と一緒に「仮説 → 検証」の流れを追体験するには、あまりにも短すぎる。
そこで僭越ながら、このブログ『デマこいてんじゃねえ!』の人気記事を調べることにした。アクセス数は『Chikirinの日記』には遠く及ばないが、人気上位10記事のはてなブックマーク数は負けずとも劣らずだ。
(※ただし「はてなブックマーク数≠アクセス数」ということに注意してほしい)

『デマこいてんじゃねえ!』の人気記事一覧

かしこい人のニュース読解法/議論の苦手な人は何ができていないのか(32字)
ブクマ数:3582 USERS
字数:5715字

行きつけのスタバのマネージャーがすごかったという話(25字)
ブクマ数:1838 USERS
字数:3348字

生涯所得を数千万円変える“本当の”情報格差/若者よ書を求め街へ出よ?(34字)
ブクマ数:1756 USERS
字数:5653字

「そんなの知らないよ」と彼女は(15字)
ブクマ数:1717 USERS
字数:7377字

文章を「書ける人」と「書けない人」のちがい(21字)
ブクマ数:1479 USERS
字数:3450字

論理的思考を鍛える5つの反論のパターン/「きのこVSたけのこ」論争に終止符を!(39字)
ブクマ数:1157 USERS
字数:7105字

「いい文章」を書くための3つのルール/まずはパソコンを閉じましょう?(34字)
ブクマ数:1124 USERS
字数:5163字

あなたは本当にオタクですか?/オタクとサブカル、ヤンキーと体育会系(33字)
ブクマ数:1112 USERS
字数:6801字

「楽しい!」を仕事にしよう。/知的労働の急激な陳腐化とゲーム化する「仕事」(37字)
ブクマ数:1106 USERS
字数:5481字

普段ウイスキーを飲まない人にお勧めのシングルモルト(25字)
ブクマ数:1038 USERS
字数:5695字



このブログ『デマこいてんじゃねえ!』の人気記事10本を調べたところ、平均5,578.8字だった。ちきりんさんの約2倍だ。
このブログは長文の記事が多いため、途中で投げ出してしまう読者も少なくない。Twitter等で「もっと簡潔にまとめてほしい」とコメントされることもしばしばだ。しかし同時に、相当な数の読者が記事の最後まで読んでくださっているはずだ。でなければ、このブログがこれほど拡散されるはずはないし、PV数も今ほど伸びないだろう。
長い記事をどうやって最後まで読んでもらうのか。
今回は私の工夫を2つ紹介したい。1つは「謎」、もう1つは「プロットポイント」だ。
以前にも書いたが、いい文章には「謎」が必須だ。
読者が小説のページをめくるのは、めくった先に知りたいことが書いてあるからだ。読者がページをスクロールするも同じだ。冒頭に示された「謎」の答えが知りたいから、続きを読んでくれるのだ。
たとえばこの記事は、「ブログの適切な長さはどれぐらいか?」という謎を解き明かそうとしている。「かしこい人のニュース読解法とはどのようなものか?」「スタバのマネージャーはどうすごかったのか?」……どんな記事を書くときでも、きっかけになる「謎」を用意するよう私は心がけている。
しかし「謎」と「答え」が離れすぎていると、読者は飽きてしまう。どんな謎を追いかけて読んでいたのか忘れてしまうからだ。では、謎と答えの距離はどれぐらいが適切だろう? そのヒントが「プロットポイント」という考え方だ。
プロットポイントとは、映画脚本の用語だ。
どんな映画も4つのパートから成り立っている。なぜそうなっているかと言えば理由は色々あるらしいのだが、今回は観客を飽きさせないためだと理解すれば充分だろう。とにかく映画は4つのパートに分かれているし、各パートの変わり目にはプロットポイントと呼ばれる事件が起きる。
たとえば『タイタニック』の場合:映画が始まってから1/4が過ぎたところで、船から飛び降りようとしたローズをジャックが救う。2/4が過ぎたところで、タイタニック号が氷山にぶつかる。3/4が過ぎたところで、ローズは救命ボートを降りてジャックを助けにいく。4つのパートの変わり目に、物語を動かす大事件が起きている。これをプロットポイントと呼ぶ。
映画の最初の1/4は登場人物や舞台の設定だ。次の1/4でストーリーが動き始める。ちょうど半分が過ぎたときに、いちばん重要な事件が起きる。次の1/4でクライマックスまでの流れが作られる。そして最後の1/4で、クライマックスと物語の結末が描かれる。
この発想は、ブログ記事の執筆にも活かせるはずだ。
まず最初の1/4で記事の内容をおおむね明かす。この記事が何についてどんなことを言おうとしているのか読者に伝えるのだ。次の1/4で議論を深めていく。そして真ん中まで読み進めると、その記事でいちばん大きな論点が明らかになる。次の1/4は、その論点について議論を深める。最後の1/4で結論を示して、議論の今後の展望が示唆する。
私の記事は、おおむねそういう構成で書かれている。
そして各パートの長さが、「謎」と「答え」の適切な距離になる。冒頭で示した「謎」に、最初の1/4で仮の「答え」を出してしまう。しかし、これはあくまでも仮のものだ。その「答え」を踏み台に新しい謎を提示して、読者の興味をくすぐればいい。
このブログの人気記事は約5,500字だった。
1/4にすれば、約1,300字だ。
これが「謎」と「答え」の適切な距離だと考えられる。読むスピードが毎分240字だとすれば、5分間〜6分間で読了できる長さだ。これはアニメ『サザエさん』のエピソード1つぶんよりも短く、幼児でも集中力が持続する時間だ。大人のブログ読者なら、ほとんどストレスを感じずに読めるはずだ。
謎と答えの適切な距離が分かれば、どんな長さの記事も書けるようになる。仮に1万字超の記事を書く場合でも、1,300字ごとに読者を満足させるポイントを置けばいい。提示した「謎」に対して1,300字以内で一旦「答え」を与える。その答えを火口にして、さらに大きな「謎」を提示する。1,300字ごとに謎と答えのサイクルを回せばいいはずだ。



     ◆



まとめよう。

・ブログは映画字幕と同じぐらいのスピード(毎分240字と少し)で読まれる。
・読者の集中力は10分間と少ししか持続しない。
・したがってブログの記事は2,600字以内で書くのが望ましい。
・もっと長い記事を書く場合は、内容をパート分けする。
・各パートは1,300字程度にして、「謎」と「答え」のサイクルを回す。


ニュースサイト等では、PV数を水増しするためにページ分けされた記事をよく見かける。PV目当てに文字数を増やすことが悪いことだとは思わない。大切なのは、記事が冗長にならず、読者を飽きさせない引き締まった構成で書かれていることだ。
なにより、そういう長い記事がPV数を水増しすることはあっても、ほんとうのアクセス数には貢献しないだろう。
ただアクセス数が欲しいなら、記事は短いほうがいい。
読者は断言されたがっているし、分かりやすい結論だけを示されたがっている。言い換えれば、洗脳されたがっている。理屈を追いかけるのは苦痛だからだ。しかし、読者のそういう習性につけこむのは詐欺的だと私は思う。たとえ読者を取りこぼすことになっても、私と一緒に考えてくれる人、私の間違いを正してくれる人に記事を届けたい。
だから、このブログの記事は長いのだ。







※参考

あなたの読書スピードと、日本人平均値の関係
QT「日本人の3人に2人は、読書スピードは400文字〜800文字/分の範囲にあることが分かっています。平均読書スピードは毎分600文字」

ヒトの集中力が持続する限界時間はどれくらいなの?
QT「同時通訳のなかでも、サミットや学会などで通訳を務める『会議通訳』の世界では、集中力の持続は15分が限界といわれている」

集中力の持続時間の平均
QT「『サザエさん』は30分で3話、OP・ED・CMを除けば1話あたり7分から8分。対象となる幼児期の子供たちが集中力を切らすことなく見られる長さ」

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※なお、この記事は「最後までブログの記事を読んでもらう方法」の続編として書いた。ブログの書き手なら誰もが抱く「本文の長さはどれぐらいがいいか?」という疑問に答えようとした。