デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

最後までブログの記事を読んでもらう方法

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結論から言えば、よく読まれるブログの記事は以下のような構成で書かれている。



この画像だけではなんのこっちゃ分からないので、順番に説明していこう。



       ◆



考えを言葉にしないのは、何も考えていないのと同じだ。誰からも読まれない言葉は、この世に存在していないのと同じだ。なにか考えていることがあるならそれを言葉にすべきだし、言葉にする以上は、たくさんの人に読まれなければ意味がない。では、どうすれば言葉を読んでもらえるだろう。考えを伝えられるだろう。
今回は「記事を最後まで読んでもらう方法」について考察したい。
同じ1PVでも、すぐにブラウザバックされてしまうのと、記事の最後まで読まれるのとでは意味が違う。一行目しか読まれない文章は、はっきり言って無価値だ。私たちは最後まで読まれる記事を目指すべきだ。




1.なぜ最後まで読まれる必要があるのか
なぜ記事を最後まで読ませる必要があるのだろう。思いつくままに言葉を並べるのではなく、読者を文末まで引きつけることに頭を悩ませなければいけないのだろう。ここには、2つの目的がある。
1つは俗な目的で、ブログのアクセス数を伸ばすためだ。記事のタイトルがどんなに良くても、内容がともなわなければアクセス数は増えない。
ブログの記事は、3つの段階でアクセスされる。まず記事の投稿直後には、固定読者が集まる。RSS等で更新に気づいた「ブログのファン」が読みに来てくれる。これが第1段階だ。続いて、固定読者はTwitterで記事を紹介したり、Facebookでイイネ!したり、はてなブックマークをつけたりする。すると、それに気づいた固定読者の知人・友人が集まってくる。これが第2段階だ。最後に、はてなのトップページやGunosy、ニュースサイト、SNSのパワーユーザーなどを経由して見ず知らずの読者が集まってくる。これが第3段階だ。
内容の薄い記事は、第2段階以降に進めない。読者がブックマークをつけたり、Twitterで紹介したりするのは、そうするだけの価値があると判断したからだ。文章の書き手は、読者にそう判断させるだけの高品質な記事を書かなければいけない。退屈で、読者が途中でページを離れてしまうような記事は、誰も紹介しないしブクマもつけない。最後まで読者を飽きさせない記事でなければアクセス数に貢献できない。
そしてもう1つの目的は、「文章を書く」という行為の目的そのものだ。
なぜ文章を書くのだろう。どうしてブログという万人の目に触れうる場所に、自分の書いた記事をさらすのだろう。言うまでもなく、自分の考えや想いを誰かに伝えたいからだ。まったく読まれなくていいのなら、それこそチラシの裏にでも書けばいい。ブログに載せる以上、文章は読まれなければ意味がない。たった1人でも最後まで読み通してくれる読者がいるのなら、その文章には価値がある。
文章は、最後まで読まれなければ意味がない。価値がない。だからこそ、私たちは「最後まで読ませる文章」の書き方を工夫すべきだ。




2.最後まで読ませる方法
ブログに限らず、読者を飽きさせない「いい文章」には3つの特徴がある。

  • 「謎」と「答え」があること
  • 「伏線」→「回収」の流れがあること
  • 「結論」に「驚き」があること

これは小説や随筆、新聞記事、科学論文にいたるまで、あらゆる文章に共通の特徴だ。言語も問わない。これついては以前にも考察したことがある。
「いい文章」を書くための3つのルール/まずはパソコンを閉じましょう?
しかし、この3つの特徴はあまりにも抽象的な概念なので、すぐには役に立たない。今回は、より実践的な方法論について──「文章の構成」について考察したい。ブログの記事を最後まで読ませるための、明日から使えるテンプレートを提供したいと思っている。




3.何をお手本にすべきか
創造性は、熟練した基本のうえに成り立つものだ。武道なら「型」を、スポーツならフォームを、落語なら古典の噺を熟練したうえで、初めてその人の創造性が開花する。文章も同じだ。お手本にすべき「型」を覚えて、それを発展させるのが、いい文章を書く近道だろう。
ブログの場合、お手本には新聞や雑誌の記事がふさわしい。スキマ時間に読まれること、世の中のできごとを察知するために読まれること等、ブログの消費のされ方は新聞や雑誌のそれによく似ている。
新聞や雑誌の記事ありがちな構成は、下図の通りだ。





全体は3つの部分から成り立っている。
すなわち「見出し」「リード」「本文」だ。
まず「見出し」は、ブログでいう記事のタイトルに相当する。記事の内容をワンフレーズで表現したもので、10字前後で書かれる。読者の目をとらえ、記憶に残ることが重要だ。したがって、ウィットの効いた印象深い言葉が選ばれやすい。
続いて「リード」は、記事の内容を要約したものだ。200字程度の場合が多く、どんなに長くても400字程度で書かれる。リードには、読者の興味を引きつけて本文に誘導する役割がある。同時に、時間のない読者はリードしか読まないため、そういう読者も満足させるだけの情報量が求められる。限られた文字数で情報を過不足なく盛り込む手腕が問われる。
そして「本文」は、ニュースの詳細を伝える部分だ。
本文をどのように書くかは、記事の質によって変わる。
たとえば経済・政治のカタいニュースなら、叙事的な文章が好まれる。できごとを淡々と伝える文章だ。事件や事故の第一報にも、そういう文章が使われる。事件に対する「世間の評価」が定まらないうちは、「悲劇」として書くことも「因果応報譚」として書くこともできない。だから感情を排した箇条書きのような文章が選ばれる。
同じ事件でも、捜査が進むとミステリー小説風の記事が書かれるようになる。いわゆるルポルタージュだ。叙情的な語り口を選ぶことで読者の感情移入を誘い、事件を身近に感じさせようとする意図がある。
さらにゴシップ誌になると、より扇情的な文章が選ばれる。針の先ほどのできごとを東京スカイツリー100本ぶんぐらいに面白おかしく書くことで、読者の野次馬根性を満足させる。
記事の書き方は、媒体の質や記者の個性によって変わる。たとえば「首相の靖国神社参拝」は、朝日新聞産経新聞では正反対の書かれ方をする。また文体そのものにも雑誌や新聞ごとに特徴があり、変わったところではしんぶん赤旗は「です・ます」調で書かれている。
新聞や雑誌の記事では、「見出し」「リード」「本文」の構造が崩れることは滅多にない。しかし記事の語り口は千差万別だ。色々な雑誌や新聞に目を通して、自分のブログのお手本にできる「書き方」を見つけるといいだろう。




4.読まれるブログの記事の構成
いよいよブログの記事の構成について説明しよう。これから紹介するテンプレートに従って書けばアクセス数を稼ぎやすくなるはずだ。「釣り」や「炎上」に頼らず、Googleの検索順位を上げてアクセス数をがっぽりいただきたいのなら、次のテンプレートを使うといいだろう。
(※もちろん、あなたがすでに自分流の「型」を持っているブロガーなら話は別だ。むしろ、ぜひその「型」をご教授いただきたい)



基本的な構成は、新聞や雑誌のものを踏襲している。「見出し」としてタイトルがあり、まず「リード」を書いて、それから「本文」を書く。この骨格は変わらない。違うのは、リードの文頭に「つかみ」を書くことと、本文のあとに「アブストラクト」をつけることだ。
タイトルの決め方については以前にも考察した。詳しくはそちらを見てほしい。
ネットの記事をクリックさせる魔法の言葉/いいタイトルをつけるには?
要点をかいつまんで説明すれば、ブログの記事のタイトルは「読者のクリックをうながすこと」が最大の目的になる。読者に対して「あなたの欲しい情報がここにありますよ」と呼びかけるのが、いいタイトルの条件だ。新聞や雑誌の「見出し」に似ているが、言葉の選び方にやや違いがある。どんなに内容がいい記事でも、タイトルが悪ければ読まれない。タイトルの決め方には細心の注意を払いたい。
ブログの冒頭にも、新聞や雑誌と同じように「リード」を書くといい。その記事が何について語るものなのか、その記事を読めばどういう情報を得られるのか、読者に提示するのが「リード」だ。その記事で「いちばん言いたいこと」を短くまとめたものがリードである。
必然的に、リードは記事全体を要約したものになる。本文から要点を抜き取り、200字〜400字程度にまとめればリードが完成する。もしもリードを端的にまとめることができないのなら、その話題はまだ記事にしないほうがいい。書き手の頭のなかで情報が充分に整理されていない証拠だからだ。
リードのうち、とくに最初の部分を「つかみ」と呼びたい。読者がいちばん最初に目にする部分であり、心を掴むワンフレーズを置かなければならない。リードは基本的に本文の要約として書かれるが、この「つかみ」の部分だけは基本から外れてもいい。インパクトのある名台詞を置いたり、思わせぶりな疑問文から始めたり……とにかく好奇心をそそるような言葉を書きたい。
なぜ「つかみ」が必要なのか。理由はおそらく、「見出し」と「タイトル」の違いにある。新聞や雑誌の「見出し」には、読者の興味をそそり、印象づける機能があった。ところがブログの記事の場合、タイトルに求められるのは「クリックを誘うこと」であって、好奇心を刺激したり印象づけたりするのは二の次だ。そのため、リードのいちばん始めの部分でそれをしなければならないのだ。
「つかみ」の字数は50字〜120字程度。1〜2文に収めるといいだろう。これはニュース集約サイトのティザーに収まる長さであり、またTwitter等で拡散するときにも使いやすい字数だ。
続いて「本文」について説明しよう。文字数はリードの約10倍程度。書き方や語り口は、そのブログの趣旨によって変わる。書き手の個性を発揮できる部分でもある。また、本文は3つ〜5つほどのパートに分けられている場合が多い。そして、各パートにはサインポストをつけるのが望ましい。
たとえば、あなたが今読んでいるこの記事の場合、本文は4つのパートから成り立っている。

1.なぜ最後まで読まれる必要があるのか
2.最後まで読ませる方法
3.何をお手本にすべきか
4.読まれるブログの記事の構成

各パートの冒頭には、上記のような小見出しがつけられている。こういう小見出しのことを「サインポスト」と呼ぶ。そのパートが何について語るのかを明示して、読者の理解を助けるのが目的だ。またサインポストをあらかじめ決めておくと、文章の要約がしやすくなり、リードを書きやすくなるというオマケもある。
最後に「アブストラクト」について。これは記事の内容を要約したものであり、リードと同様に200字〜400字ほどで書かれる。読者に対して「自分はどんな記事を読んでいたのか」を再確認させる部分だ。とくに3000字を超えるような長い記事の場合、結末にたどり着くころには冒頭部分を忘れてしまう。そして、何のために記事を読んでいたのか分からなくなってしまう。そんな事態を避けるために「アブストラクト」が必要なのだ。
リードは読者に対して「これからあなたの読む記事にはこんなことが書かれています」と訴える部分だ。一方、アブストラクトは「今まであなたが読んでいたのはこんな記事でした」と思い出させる部分だ。したがって、リードでは読者の興味・関心を引き出すことが目的になり、一方のアブストラクトでは読者に満足感を与えるのが目的になる。
より具体的に言えば、リードには専門用語や特別な言い回しは使わないほうがいい。なるべく一般的で平易な言葉を選ぶことで、読者の関心が離れないように注意するべきだ。一方、アブストラクトを読むころには読者は記事の内容について充分な情報を得ており、専門用語もすんなりと理解できる。したがってリードよりも発展的な内容を書くことができる。
また、心に残る「警句」をアブストラクトに書くのも効果的だ。記事の印象を強めることができる。
情報をただ投げっぱなしにして終わるのではなく、その記事の「いちばん言いたいこと」を要約して再提示する。そうすることで読者は、その記事の価値を判断しやすくなる。そして「いい記事だ」と判断すれば、Twitter等のSNSで拡散したり、はてなブックマークをつけたりしてくれる。記事のアクセス数を増やしたいのならアブストラクトは必須だ。



       ◆



今回は最後まで読んでもらえる「記事の構成」について考察した。同じ1PVでも、すぐにブラウザバックされてしまうのと、文末まで読まれるのとでは価値が違う。誰も読み通すことができないとしたら、その記事は無価値だ。
武道に「型」があるように、文章にもお手本にすべき基本形がある。ブログの場合、新聞や雑誌がお手本にふさわしい。「見出し」「リード」「本文」の3段階があらゆる記事の基本的な骨格だ。これをもとに、今回はブログの記事のテンプレートを紹介した。
「タイトル」でクリックを誘い、「つかみ」で興味を引きつけ、「リード」で内容を要約する。「本文」をいくつかのパートに分けるときは、各パートにサインポストをつける。最後に「アブストラクト」をつけて、記事の内容を再確認させる。このテンプレートに従えば、読みごたえのある記事が仕上がるだろう。



言語の使用は、ヒトをヒトたらしめる行動の1つだ。言語の獲得によって、人類は思考や感情の共有が可能になった。「想いを誰かに伝えたい」これは私たちの原始的な欲求であるはずだ。だから私たちは言葉を書かずにいられない。
言葉は最後まで読まれなければ、想いは伝わらない。
言葉は、最後まできちんと届けたい。






【追記】文末につける要約は、「アブストラクト」よりも「サマリー」って呼んだほうが適切かもしれないなあ……と今更ながら思った。


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