インターネットで遊んでいたら、こんなコメントを見かけました。
「○○新聞の誤報だ、印象操作だ」と言っていた人ほど政府に対して「裏切られた!」と怒っても良さそうなのに……というコメントです。残念ながら、そんなことになるはずありませんよ。
わりと有名な逸話で、「予言の外れたカルト教団の話」があります。指導者が予言していた世界が滅亡するはずの日に、滅亡しなかったんですよね。じゃあ信者たちが信仰心を失ったかというと、そんなことはなくて、ますます指導者への信仰を深め、熱心に布教活動をするようになった――。彼らの頭の中では、都合の良い理屈を見つけてきて、無理やり辻褄を合わせてしまったんです。
勘違いされたくないのですが、「誤報だ」と言っていた人たちがカルト信者のようだと批判したいのではありません。人間には、そういう心の働きがあるということが言いたい。
何かを信じていれば、それに対する情熱とか、かけた時間とか、膨大なサンクコストが発生します。それらすべてが無駄になるぐらいなら、何とか理屈を探して過去の自分を正当化したい。認めたい。それが、人間としてごく自然な心の働きだと思うのです。ごく正常な精神のあり方だと思います。
だからむしろ、今回のように報道が正しかったときに「誤報だって言ってたやつぅー? 息してるぅー?www」みたいにメシウマ状態になるほうがクズみがあるんじゃないかと思います。「誤報だ」と信じていた人に対して必要なのは、癒やしと承認ではないでしょうか。なぜなら彼らは、ごく普通の善良な日本人だったのですから。
人間は、すぐに敵と味方を作ろうとする生き物です。だからこそ、こういうときに相手をバカにする態度はよくない。結局、敵だと思われて、相手はますます自らの価値観やコミュニティに閉じ籠もるようになるでしょう。
こういう場合に必要なのは、何よりもまず「私はあなたの敵ではありません」と表明することだと思います。同じように信じて騙された仲間だよ、と手を差し伸べることだと思います。
私は誰とも敵対したいとは思っていません。
何よりも、あなたの敵になりたくありません。
今回は誤報ではなく報道のほうが正しかった(※少なくとも真相に近かった)わけですが、別にこれを受けてあなたの価値観や支持政党を変える必要はないと思います。
ただ、「誤報だ!」と決めつけて情報発信していた著名人やインターネットアカウントからは、少し距離を取ったほうがいいかもしれません。なぜなら彼らは、世の中を敵と味方に二分して考えがちだからです。彼らの言葉はあなたの心の中にある敵意や憎悪をくすぐって、あなたを攻撃的な性格に変えてしまうでしょう。本来のあなたは優しく誠実な人間であるはずなのに。
まずは一週間ぐらい、そういう人たちのアカウントを視界に入らないようにしてみてはいかがでしょうか。ブロックまでする必要はありません。ほんの数日間、ミュート設定にするだけで充分です。きっと、今までにないぐらい心穏やかな一週間を過ごせるはずですよ。
同じ国で生まれ育った友人として、あなたの心の平安を願っています。