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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

読んでないとヤバイ(?)ってレベルの名作SF小説10選

冗語
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こんな記事が話題になっていた:



『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』の意味を解説
http://anond.hatelabo.jp/20130510125852



たしかに、超有名だけど読んでいない作品って意外とたくさんある。
とくにSF小説の場合、誰かに助言を求めてもアドバイザーの“好み”が偏りがちだ。ほんとうは『涼宮ハルヒ』を読みたいはずの人に、円城塔をすすめるという悲劇がおきかねない。「SF」の定義は人によってまちまちで、しかも、その人の年代や読書経験によって「お気に入り作家」が大きく偏る。SF作家は星新一だけではないのだ。
そこで今回の記事では、私の考えるオールタイム・ベストSF小説10作を紹介したい。
それこそ読んでて当然ってレベルの10冊なので、好きな人からしたらふつうすぎるラインナップかも。



【1】『海底二万マイル』ジュール・ヴェルヌ

海底二万里 (創元SF文庫)

海底二万里 (創元SF文庫)

ジュール・ヴェルヌはSF小説の創始者だと見なされている。そして、映画原作者の元祖でもある。(※世界初のストーリー映画『月世界旅行』は、彼の作品を土台にしたものだった)『十五少年漂流記』の胸のときめくような冒険譚もいいが、『海底二万マイル』の孤独で沈痛な雰囲気も味わい深い。




【2】『タイム・マシン』H.G.ウェルズ

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

タイムトラベル、透明人間、時間加速、ディザスター・パニック、宇宙からの侵略者……。現在の映画やマンガに登場するSF的なアイディアの大部分は、ウェルズの時代には出揃っていた。マニアックなSF愛好家たちは別として、一般人が「SF」として認識するアイディアの多くは、19世紀末には生み出されていたのだ。ウェルズの作品は、いま読んでも古さを感じないどころか、めまいがするほど新鮮な想像力に満ちている。




【3】『一九八四年』ジョージ・オーウェル

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

20世紀前半のSF小説は雑誌連載が主な発表の場であり、内容も軽くて読みやすい荒唐無稽な物語が好まれていたらしい。バローズの『火星のプリンセス』シリーズや、たくさんのスペース・オペラが生み出された。ところが20世紀半ばを過ぎると、ただの娯楽にとどまらない、示唆に富んだ作品が書かれるようになる。
ジョージ・オーウェル『一九八四年』は、そういう社会的なSFの走りだ。世界観の見せ方がとにかく上手く、緻密な心理描写のおかげで作品世界へと没頭できる。本作は「全体主義国家の恐ろしさを描いた」と評されることが多いが、オーウェルが描いたのは恐怖ではなく、むしろ「自由」のすばらしさだと私は思う。




【4】『われはロボット』アイザック・アシモフ

アシモフは「SF御三家」の一人で、小説だけでなくノンフィクションやエッセイをたくさん残している。『ファウンデーション』シリーズが有名だが、「ちょっとSFを読んでみようかな?」と思ってる人には気軽におすすめできない。あまりにも長大だからだ。
21世紀のいま、世界中の戦場で無人戦闘機が華々しい戦果をあげている。無人戦闘機は一種のロボットだし、戦果とはつまり人を殺しているということだ。「ロボット三原則」を掲げたアシモフが生きていたら、なにを考えるだろうか。




【5】『幼年期の終わりアーサー・C・クラーク

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

「SF御三家」の一人で、科学雑誌に論文を投稿してしまうぐらい科学に精通していた。キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』の小説版が有名だが、元になるアイディアは『幼年期の終わり』に凝縮されている。




【6】『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

「SF御三家」の一人で、機動戦士ガンダムの元ネタを書いた人(※『宇宙の戦士』)ハインラインの作品は、日本では『夏への扉』のほうが人気が高いらしい。主人公が村上春樹系のうだつの上がらない男で、ネコと少女が出てくるからだ。ロリコンどもめ。
ところが世界的な人気は『月は無慈悲な夜の女王』のほうが高いという。月面植民地が地球から独立して国家を作る:このストーリーは現代人に普遍的な感動をもたらすのかも知れない。とにかくハインラインの教養深さには舌を巻く。科学知識だけでなく、歴史、経済、政治、社会……ありとあらゆる分野の知識がなければ、こんな作品は書けないはずだ。




【7】『華氏451度』レイ・ブラッドベリ

華氏451度 ハヤカワ文庫SF

華氏451度 ハヤカワ文庫SF

SF御三家にはブラッドベリを加えて四天王にするのがいいんじゃないか……と思うのだが、どうなんだろう。教えて、えらい人!
SF小説を語るうえで、ブラッドベリを外すことはできない。著作数が多く、与えた影響も計り知れない。入門編として読むなら『華氏451度』だろう。『火星年代記』も捨てがたいけれど、「火星人」というアイディアが現在ではちょっと色あせて見える。ちなみに去年(2012年)までご存命だった。




【8】『ユービック』フィリップ・K・ディック

ディックは、ハリウッドで映画化された回数がいちばん多いSF作家だ。上述の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』も、映画『ブレードランナー』の原作になった。(というか、この映画がヒットしたから原作小説を知った……という人も多いはずだ)
ディックの作品はぜんぶオススメしたいのだが、一本だけ選ぶなら『ユービック』を私は推したい。前半はやや退屈な展開が続くが、後半はノンストップ。次から次に主人公に降りかかる災難をどうやって退けるのか、ぐいぐいと引き込まれてしまう。ラストのオチまで完璧で、初めて読んだときは「やられた!」と叫んでしまった。
ディックの最高傑作は『流れよわが涙、と警官は言った』でも『高い城の男』でもなく、『ユービック』だと私は思う。




【9】『星を継ぐもの』ジェイムス・P・ホーガン

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

「これこそがSFだ!」と言いたくなる超傑作。
あらすじ:「月面で赤い宇宙服を着た遺体が発見された。ところが、その遺体はどの月面基地の所属でも、どの地球国家の所属でもなかった。彼の死亡推定時刻は、四万年前だった——」
この謎の死体について、科学者たちが喧々諤々の大論争を繰り広げる。作中で「仮説 → 検証」が何度も繰り返され、科学的な思考法で謎の答えに迫っていく。SFはサイエンス・フィクションの略だが、本作ほどきちんとサイエンスしてる作品は珍しいのではないか。
酒好きの私としては、続編『ガニメデの優しい巨人』に登場する架空のカクテル「ガニメアン・タイム・ボム」を飲んでみたい。




【10】『ニューロマンサーウィリアム・ギブスン

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

サイバーパンクというジャンルを成立させた人。1980年代の作品だが、当時はまだおもちゃレベルのコンピューターしかなかったはずだ。にもかかわらず、これほどイメージ豊かなネットワーク社会と仮想現実を描いたギブスンは天才以外の何者でもない。
SF小説だけでなく、たくさんの映画やマンガ、テレビゲームなどに影響を与えた。読みながら映画『マトリックス』等のシーンが脳内再生されること間違いなしだ。




     ◆ ◆ ◆




以上、おすすめのSF小説を10本あげてみた。
SF小説と一言でいっても、SFの発想がほかのジャンルと混ざることも珍しくない。たとえばスティーブン・キングは「ホラー作家」と見なされることが多いが、超能力などSFのアイディアをうまく取り込んでいる。




キャリー (新潮文庫)

キャリー (新潮文庫)

※キャリーはまた映画化されるらしい。『KICK ASS』の可愛らしい姿が印象的だったクロエ・モレッツが主演だ。ロリコンどもめ。




今回の記事は、かなり無理をして10本に絞り込んでいる。ハーラン・エリスンとかダン・シモンズを盛り込みたいけど、じゃあ誰を抜くの?みたいな。日本の作家もできれば加えたかった。というわけで異論反論、大歓迎だ。「あの作品がないぞ!」「あの作家の名前が無いなんてにわか者め!」というみなさんのご意見で、コメント欄がおすすめSF小説の目録になれば幸いである。





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女騎士、経理になる。  (1) (バーズコミックス)

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失敗すれば即終了! 日本の若者がとるべき生存戦略

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