東京ゲームショウ2015に行ってきた。
子供のころに比べて、ゲームは「遠い世界」になってしまったような気がする。
かつては、おもちゃ屋の片隅に試遊機が置かれて、近所の小学生が列をなして遊んでいた。ゲームショウではすぐ隣に開発者が紛れ込んでいて、体験版で遊ぶ子供たちの反応を息を飲んで見守っていた。
だけど今では、大作ゲームは5年~10年の発売延期が当たり前。海外の巨大パブリッシャーはハリウッド映画以上にカネをかけて、工業製品としてのゲームを送り出している。スマホアプリでは、いかにユーザーにカネを使わせるかばかりが話題になる。
それが悪いことだとは言わない。
けれど、子供のころに感じたような身近さは無くなった。なんと言うか、ゲームそのものが「雲の上の存在」になったような気がしていた……
……が、すべて気のせいでした。
とくにインディーゲームの世界は超熱い。音楽の世界でいうインディーズバンドのゲーム版だ。趣味から一歩先に踏み出したゲーム好きたちが、App StoreやSteamを舞台に日夜しのぎを削っているらしい。東京ゲームショウに出展している作品はどれも力作だった。なかでも「これは!」と感じた作品を紹介したい。
◆ ◆ ◆
■PLUG & PLAY
スイスのEtter Studioが送るシュールな作品。「キモかわいいキャラクターが動くゲーム」としか説明のしようがない作品だ。せがれいじりのような系統のゲームだ、と思う。意味も目的も不明なまま、ただ画面をタップしているだけでなぜか楽しくなってくる。「ゲームとは何ぞや?」と哲学的な気持ちになれる。
■Pavilion
美しいアートと音楽に没入できるパズルアドベンチャー。モニュメント・バレーが好きな人なら確実にハマると思う。雨の日の午後にコーヒーを飲みながら遊びたいゲームだ。試遊だということを忘れて、じっくりとやり込んでしまった。今回のイチオシ。
Steamville Trailer Tokyo Game Show 2015 ...
■Steamville
先述のPavilionは鐘の音などで主人公を誘導していくゲームなのに対して、こちらは敵を誘導して罠にハメて倒す作品。魔の蒸気に取り憑かれて暴走したロボットを倒すというスチームパンクの世界観が私の嗜好に超ドつぼ。
■The Girl and the Robot
おとぎの世界を舞台に、少女とロボットを操作して魔法の古城から逃げ出すゲーム。少女がいないとロボットは檻から脱出できず、ロボットがいないと少女は敵を倒せない。ロボットと少女を交互に操作して遊ぶ、パズル性の高いアクションゲームだ。なんというか、世界観が可愛くなった『ICO』みたいな作品。
■Dynamix
見ての通りの音ゲー。香港のC4Cat社の作品だ。画面3方向に流れるノーツが特徴で、初見時の「こんなのできるわけねーだろ」感がすごい。どんなゲームでも、できないことができるようになる達成感は大切だ。が、音ゲーはとくその要素が強いジャンルだと思う。音ゲーの醍醐味をめいっぱい楽しめるゲームだろう。
Back to Bed Trailer HQ 2014 - YouTube
■BACK TO BED
夢遊病者をリンゴで導いてベッドまで移動させるというシニカルなゲーム。モニュメントバレーと同系統のゲームだが、あちらはエッシャーの世界だったのに対して、こちらはダリ。悪夢度がやや上がっている。夢遊病患者のボブは、リンゴにぶつかるとなぜかそっぽを向く。彼はmicrosoftの社員なのかもしれない。
Submerged Coming Soon - YouTube
■ミクと水没都市
水浸しになった都市を冒険するアクションアドベンチャー。『バイオショック』の開発陣が携わっていることで話題になった。PC版はSteamで発売中。日本語にも対応している。東京ゲームショウ2015では実際に遊べるので、購入を検討する際の参考にしてみては。
■水没都市
水没つながりでもう一作。
時代はVRだ。今回の東京ゲームショウでも、ヘッドマウントディスプレイを用いた作品が散見された。『水没都市』は、現実の地図をもとに3Dモデルを生成する「シマダシステム」を用いたゲーム。水に沈んだ実在の都市を自由に泳げる。
■GOAtPUnKS
ヤギを操作して山を登る。ただそれだけのゲーム。しかし多人数プレイにしたことで、夢中で熱くなれる作品に仕上がっている。あと一歩で山頂までたどり着く…そんな時にかぎって後から来たやつに背中を蹴り飛ばされて転落する。人生の縮図を味わえるゲームだ。
◆ ◆ ◆
Unityをはじめ、ゲーム制作のツールは充実の一途をたどっている。個人や小資本のディベロッパーでも高品質なゲームを作れる時代になった。何より、東京ゲームショウでは開発者が実際にその場に立って遊び方を教えてくれた。
「ここをこう操作してみてください」
「ね、楽しいでしょう?」
目をキラキラさせて語る彼らの姿は、ゲームが遠い世界のものになったというカン違いを吹き飛ばすには充分だった。経済誌を開けば、ゲーム業界の商業的な栄枯盛衰ばかりが喧伝されている。けれど、ゲーム制作の現場に立っている人たちは、今でも童心を忘れずに面白さを追求しているのだろう。
最近ではゲームで遊ぶ時間をなかなか確保できないが、とても刺激的な経験ができた。インディーゲームの世界には今後も注目していきたい。
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※ちなみに……もしもインディーゲームで「これだけは遊んでおけ」という作品をご存じでしたら、ぜひ教えてください!