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▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
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王立商会「さっそくだが、我々の商館に来てもらおう」 老練工房「商会長さまに為替手形をお渡ししねえとな」 女騎士「そ、そうだった。はしゃぎすぎてしまったのだ…」 人夫「かわせてがた…って何です?」 女騎士「ふふふ。その程度なら私にも説明できるぞ!」
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女騎士「為替手形とは、自分の負債をほかの誰かに支払ってもらうときに使う書類なのだ」 女騎士「たとえば港街商会は、老練工房から工芸品を仕入れて、王立商会に海産物の加工品を販売している。だけど、この取引を現金で決済するのは危険だろう?」 pic.twitter.com/XOc5Ypucc8
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人夫「現金が危険なのは…盗賊に襲われるからです?」 女騎士「その通りだ。現金を運ぶと、旅の途中でヒャッハーされる危険がある。ならば港街商会の代わりに、王立商会が老練工房に代金を支払えばいいはずだ」 pic.twitter.com/K6Se4W9uyl
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女騎士「もう少し詳しく話すと、港街商会は王立商会に売掛金がある。王立商会から見れば、港街商会に買掛金があることになる」 女騎士「また、港街商会は老練工房に買掛金がある。老練工房から見れば、港街商会に売掛金があることになる」 pic.twitter.com/i9JcbHS6aN
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女騎士「港街商会の視点で考えれば、『王立商会に老練工房への支払いをしてもらう』ことは、『王立商会への売掛金』を使って『老練工房への買掛金』を支払うことになる」 人夫「そんなことができるんで?」 女騎士「そのための為替手形だ」 pic.twitter.com/VM1D7hDZsL
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女騎士「出発前に銀行家さんがサインしていた書類…あれが為替手形だ。期日までに王立商会が老練工房に支払いをすると書かれている」 女騎士「為替手形を振り出す者を『振出人』、支払義務を負う者を『名宛人』、支払を受ける者を『指図人』と呼ぶぞ」 pic.twitter.com/O6yyaxrF7K
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▼商館──。 商会長「うむ、たしかに…」 工房長「…為替手形を受け取りました」 老練工房「なあ、ねえちゃんは『複式簿記』ってのを覚えているんだろう?為替手形はどうやって帳簿につけるんだ?」 女騎士「ふふふ。しかたない、教えてやろう///」 王立商会「ふん、魔国の知識など…」
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女騎士「まずは為替手形を振り出したときの……今回なら港街商会の仕訳はこうなる」 女騎士「王立商会への売掛金を減らして、同じ金額だけ老練工房への買掛金を減らすのだ」 pic.twitter.com/0eUJ2SkrwD
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女騎士「続いて、為替手形の名宛人になった場合の仕訳だ。今回なら、王立商会の帳簿にはこういう仕訳が記入される」 女騎士「港街商会への買掛金を減らして、代わりに、老練工房宛ての『支払手形』を増やす」 pic.twitter.com/t2zqdRdzO7
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女騎士「最後に、為替手形の指図人になったときの仕訳だ」 老練工房「つまり、うちの帳簿に記載する仕訳だな」 女騎士「港街商会への売掛金を減らして、代わりに、王立商会宛ての受取手形を増やせばいい」 pic.twitter.com/Env3pAdhEA
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老練工房「さすがは会計のプロフェッショナルだ!」 女騎士「いや、これは…」 王立商会「…魔国でそれなりに勉強したことは認めましょう」 商会長「すばらしい知識の持ち主でいらっしゃる」 工房長「まさに文武両道、才色兼備ですね!」 女騎士(簿記3級レベルなのだが…)
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工房長「うちの職人たちにも全力で腕をふるうように言いましょう。知識を披露していただいたお礼です。銀行家さんからのご注文には、最高の品でお応えします」 女騎士「うむ、ありがたい」 工房長「完成にはあと3週間ほどかかります。それまで帝都でごゆっくりしてください」 女騎士「3週間!?」
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女騎士「それは困る!月末までに港町に戻らねばならんのだ!」 工房長「せっかくですから、帝都観光を楽しまれては…?」 老練工房「じつは工房長、この姉さんは…(ごにょごにょ)…という訳なんですよ」 工房長「なるほど。銀行家さんのことを考えると夜も眠れない、と」 女騎士「そうなのだ!」
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工房長「しかし参りましたね。材料が今すぐ手に入っても完成には1週間はかかります」 女騎士「そんなレアな材料なのか?」 工房長「いいえ、冒険者ギルドで買えます。ただし、現金でしか取引に応じてもらえないのです。そして現金の入金予定は2週間先までありません…」 女騎士「どんな材料だ?」
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工房長「三本足ガエルの皮と、蛇龍ザルティスの牙ですね」 女騎士「ううむ、ドロップ率から考えると…私が討伐に向かっても入手には2~3週間かかってしまうな。冒険者ギルドで買うしかなさそうだ」 女騎士「ていうか、銀行家さんは何を注文したのだ?」 工房長「守秘義務です。お教えできません」
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女騎士「待てよ、現金があれば材料が買えるのなら…先ほどの『手形』を銀行で現金化すればいい!帝都にも銀行はあるのだろう?」 工房長「はい、ありますが…」 老練工房「手形を買い取るときに、手数料をちょろまかすというウワサでね」 女騎士「大丈夫だ。私が同行して金額を確認しよう」
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▼帝都の銀行──。 窓口「いらっしゃいませ」 老練工房「すみません、『手形』を買い取ってもらいたいのですが…」 窓口「はい、手形の現金化ですね」 窓口(くふふ、いいカモが来た!一般庶民は会計に弱いからな…) 窓口(実際よりも安い金額を渡して、差額は私のポケットに入れてやろう!)
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