デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

新入社員に送る、社畜にならないための4つの習慣。

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社会人になると「やるべきこと」に忙殺されて、「やりたいこと」ができなくなる。その状況が3ヶ月間ほど続くと、立派な社畜ができあがる。自分の「やりたいこと」が何だったのか、分からなくなるからだ。会社からの要求を自己の欲求と同一化せざるをえなくなり、サービス残業もいとわない企業奴隷が育つ。
社畜にならない秘訣は、タスクを効率よく終わらせることだ。「やるべきこと」をおろそかにせず「やりたいこと」もやりとげる。それができれば、あなたは自分を見失わず、本来のあなたのままでいられるだろう。


企業に使い潰される労働者になるな。自由な個人であれ。
自由を失わないために身につけるべき4つの習慣を紹介したい。




1.「やりたいこと」「やるべきこと」をぜんぶ書き出せ。
自分の学生時代をふり返ると、思いつくままに「やりたいこと」をやっていた。サークルを運営したり、インカレ活動にいそしんだり、バイトに精を出したり──。「意識高い」とまではいかないものの、それなりに活動的な学生だったと思う。
しかし会社員になると「やるべきこと」が降り掛かってきて、「やりたいこと」に手が付かなくなる。朝から晩まで働きづめで、帰宅したらベッドに直行。土日は昼過ぎに目が覚めて、なんとなくインターネットを眺めているうちに休日が終わってしまう。
そんな灰色の会社員生活を避けるためには、「やりたいこと」と「やるべきこと」をすべて把握しておかなければならない。
だから、書き出すのだ。
メモ帳に「やりたいこと」と「やるべきこと」を箇条書きにしていく。思いつくままに、ぜんぶ書き出す。実現可能性は考えなくていい。「カネがないから……」とか「時間がないから……」という理由で、やりたいことを諦めるべきではない。カネや時間は作れるが、忘れた夢は取り戻せない。
この作業はできるだけ心の余裕があるときに、じっくり時間をかけてやるといいだろう。発想を豊かにして、思いつくままに「やりたいこと」をリストアップするのだ。もうこれ以上やりたいことを思いつかない──、というレベルまで書き出したら、次のステップだ。
「やるべきこと」と「やりたいこと」に優先順位をつけていく。
それが終わったら、あとは優先順位の高い順にこなしていけばいい。


この作業は、紙のメモ帳よりもパソコン等を使ったほうがいいだろう。優先順位を入れ替えや、タスクの追加・削除がかんたんだからだ。パソコンに最初からインストールされているメモ帳でも充分だが、便利なツールもたくさんある。いずれも私の学生時代には無かったサービスだ。



できるポケット+ Evernote 改訂版 できるポケット+シリーズ

できるポケット+ Evernote 改訂版 できるポケット+シリーズ

Evernote

Evernote

Evernote
私の親世代の人から聞いた話だ。その人は若いころ、やりたいことを紙に箇条書きにしてトイレの壁に張っていたという。いつでも目にする場所にリストを置くことで、やりたいことを忘れないようにしたのだ。スマホやパソコンからいつでも・どこでもアクセスできるEvernoteは、現代におけるトイレの壁だ。



Wunderlist: To-Do List & Tasks

Wunderlist: To-Do List & Tasks

Wunderlist
タスク管理系のアプリで使い勝手がよかったのは、これ。視覚的に分かりやすく、直感的に操作できるのがいい。Evernoteと同様に人気アプリなので、すでに使っている人も多いかも。




2.〆切を決めろ。残日数を数えろ。
やりたいこと、やるべきことをリストアップした。優先順位もつけた。次にすべきは〆切の設定だ。
とくに優先順位の高いタスクについて、すべてに〆切日を決めよう。いつかやりたいと考えているかぎり、その夢はいつまでも実現しない。「この日までにやる」と決めてしまったほうがいい。
やりたいことをやり遂げるには、普通のカレンダーはあまり適していない。月ごと、週ごとで区切られてしまうため、〆切までの残日数が視覚的に分かりづらいからだ。



上図は、とあるプロジェクトで私が使っている予定表だ。日付を縦一列に並べたカレンダーを用いることで、〆切日までの残日数を把握しやすくなる。Google Docsの万能さには平伏する。スケジュール管理から会計処理、飲み会代の清算まで行える。私はもうGoogle Docsなしでは生きていけないカラダになってしまった。
※もしもGoogle Docs以外で〆切管理に適したツールがあれば、ぜひ教えてほしい。



重要なのは、〆切を守れなかったときにどうするかだ。
今週はできなかったから、来週にしよう──。こんな風に漫然と先送りにしていると、いつまで経っても「やりたいこと」に手が付かない。なぜ〆切に間に合わなかったのか、きちんと原因を考えるべきだ。
〆切を守れない理由は、3つしかない。
必要な作業時間が取れなかったか、作業に想定以上の時間がかかったのか、あるいはその両方だ。
作業時間が取れなかったのであれば、その時間を作れるようにスケジュールを工夫すべきだ。また作業時間が想定よりも長引いたのであれば、見積もりが甘かった──自分の処理能力を過信していた──ことになる。現実を見据えたうえで、所要時間を再考すべきだ。
〆切の精度が高まれば、それだけスケジュール管理が正確になる。計画的に時間を余らせることができるようになり、「やりたいこと」をやりとげやすくなる。




3.共有しろ。
私の学生時代には、情報共有といえばメーリングリストだった。mixiはクローズドな友人関係で遊ぶためのSNSで、仕事にも遊びにも使える連絡手段は今ほど充実していなかった。情報共有に関しては、学校を卒業したばかりの新入社員のほうが私よりも詳しいかもしれない。
「やりたいこと」を自分1人で完結できるとは限らない。知人・友人を巻き込んで何かをする場合、情報共有が欠かせない。



できるポケット+ サイボウズLive (できるポケット+)

できるポケット+ サイボウズLive (できるポケット+)

サイボウズLive
何かプロジェクトを進めるには、最低でも3パターンの情報共有が必要だ。コミュニケーション、スケジュール管理、そしてデータの共有だ。LINEで会議した内容をGoogleカレンダーに書き込んで、firestrageでデータを共有する……といったやり方もあるだろう。しかしサイボウズLiveを使えば、3つの情報共有をたった1つのサービスで完結できる。
プロジェクト管理のサービスは星の数ほどあるが、やはりサイボウズの便利さは頭1つ飛び抜けていると思う。なんというか、かゆいところにきちんと手が届くのだ。



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Dropbox
情報共有といえばドロボ、と言われるぐらい一般化したクラウド・サービス。とにかく使い方がかんたんなのが特長だ。削除してしまったデータをしばらく保存しておいてくれるのもありがたい。
こういうクラウド・サービスは、1人で何かをやり遂げるのにも有効だ。たとえば知人の兼業ライトノベル作家にはDropboxに原稿を保存している人がいる。通勤電車の中でスマホを使って小説を執筆しているらしい。



調整さん
飲み会やMTGの日時を決めるなら調整さんがおすすめ。幹事の負担を大幅に減らしてくれる。



繰り返しになるが、これら情報共有の手段は私が学生のころには存在しなかった。学校を卒業したばかりの新入社員のほうが詳しいかもしれない。オススメのサービスがあれば、ぜひ教えてほしい。




4.簿記を取れ。
会社に務めているだけで、経済的自立を果たしたと思っていないだろうか?
カネを払ってくれるのが親から会社に変わっただけでは、経済的自立とは言えない。現在、日本の就労者のうち8割以上が被雇用者、つまり企業に依存しなければ食べていけない人々だ。サラリー以外に収入手段を持たない人は、会社からどんなにブラックな要求を突きつけられても甘受するしかない。社畜にならず、自由な個人であり続けるために、経済的自立は必須だ。



※出典:国土交通省、「働き方」について(pdf)


そもそも近現代の学校教育は、18世紀・産業革命期のイギリスで均質な工場労働者を育てるために始まった。
教師の言いつけが絶対なのは、工場の現場監督の命令が絶対だからだ。チャイムにあわせて席に付くのは、将来、勤務時間を守れる労働者になるためだ。小中学校のころを思い出してほしい。自分の事業を持っている先生はいただろうか。商売のやり方を教えてくれる授業はあっただろうか。現在の学校教育システムは、経済的に自立した個人の育成を目的としていない。
明治時代には、日本でも小学校で簿記を教えていたらしい。ところが戦後、なぜか簿記は学校教育から姿を消す。自活の手段を知らない子供たちは喜んで企業戦士への道を選んだ。学校教育が結果を出すには数十年かかるが、終戦から30年後の70年代には「モーレツ社員」が流行語になった。
勘違いされたくないのだが、私は無闇に独立開業を勧めているわけではない。
ただ、収入源を分散すべきだと訴えているのだ。
なぜブラック企業がのさばるのか。希望を無視した配属や、サービス残業が横行するのか。それは「そんなん言うならやめます」と労働者が言えないからだ。なぜ会社をクビになっただけで線路に飛び込む人がいるのか。会社勤め以外の生き方を知らないからだ。誰も教えてくれないからだ。
このブログではバカの一つ覚えのように「小学校で簿記を教えるべきだ」と主張している。経済的自立を果たすには会計学の知識が欠かせない。そして簿記は会計学の入り口だ。簿記を知らずに経済的自立を目指すのは、アルファベットを知らずにアメリカに留学するようなものだ。


知識ゼロから学ぶ簿記のきほん/おこづかい帳と簿記はなにが違うのか


サクッとうかる日商2級商業簿記テキスト(改訂六版) (サクッとうかるシリーズ)

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10年経てばビジネスマナーは変わる。ExcelやWordの仕様も変わっているだろう。しかし簿記には数百年の歴史があり、一度覚えてしまえば生涯に渡って使える。会社員として働くうえでも役に立つ。簿記を学んで損することはない。



     ◆



私は「意識高い系」の人が嫌いだ。
頑張っている自分に酔っているだけで、鼻持ちならないからだ。
出している成果が同じなら、当然、頑張っていない人のほうが優秀である。アウトプットが同じなら、ラクしている人のほうがすごいのだ。日本人はもっとラクをすべきだし、もっとボンクラになるべきだと思う。同調圧力で努力を押し付ける「意識高い系」の人は滅びればいい、たとえば口から納豆のニオイが消えない呪いにかかる程度の不幸な目にあえばいいと私は思う。
にもかかわらず、今回の記事はなんだか意識が高い感じになってしまった。
1.「やりたいこと」「やるべきこと」をぜんぶ書き出せ。
2.〆切を決めろ。残日数を数えろ。
3.共有しろ。
4.簿記を取れ。
安っぽい自己啓発セミナーみたいな内容に、我ながら目眩がする。これらを実行するにはそれなりの労力が必要だし、努力を他人に押し付けるという点で「意識高い系」そのものだ。
だからこそ、習慣化することが肝要だ。
やりたいことを思いついたら、すぐにタスクリストに加える。いつまでにやるか〆切を設定する。大事なことは共有する。カネが動くときは仕訳を切る。毎日それを繰り返して、面倒くささを感じなくなるまで習慣化すればいい。努力せずとも歯磨きができるように、習慣化した行動には労力を感じない。努力なんかするな。



豊かさとは、よりわずかな生産活動で、より多様な消費活動を楽しめることを言う。どんな仕事をするかは自由だ。どんな消費をするかも自由だ。しかし仕事のせいで消費活動ができないのなら、どれほど給与がよくても豊かな生活とはいえない。
「やりたいこと」ができない生活は、豊かではない。
私たちは、もっと豊かになっていい。






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街場の憂国論 (犀の教室)

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