デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

創作

『砂埃に浮かぶ孤島』

『砂埃に浮かぶ孤島』 Rootport 著 頭から尿をかけられた。 わざわざ脚立を持ち出して、男はファスナーを下した。ほかの男たちがゲラゲラと笑う。椅子に縛りつけられたまま、明はじっと部屋の奥をにらみつけていた。こめかみの切り傷に生ぬるい液体がしみた…

『バブリィ・おやつ・デリバティブ』

本作は『知識ゼロから学ぶ簿記のきほん』のスピンオフです。 「先生!」とケイリちゃんは手をあげた。「おやつを三〇〇円まで持って行ける権利を、証券化してもいいですか?」 五年生の全員が体育館に集まっていた。 先生たちは気が早い。まだ九月になったば…

『ギムレットには早すぎて(4)』

「ギムレットには早すぎて(1)」 「ギムレットには早すぎて(2)」 「ギムレットには早すぎて(3)」 ■現在校正中につき、非公開■

『ギムレットには早すぎて(3)』

初:「ギムレットには早すぎて(1)」 前:「ギムレットには早すぎて(2)」 次:「ギムレットには早すぎて(4)」 【3】 「いつになったら、息子を返していただけるんですか」 彼女の頬はげっそりと痩けていたが、口ぶりはしっかりしていた。嵐のあと――…

『ギムレットには早すぎて(2)』

前:「ギムレットには早すぎて(1)」 次:「ギムレットには早すぎて(3)」 【2】 日没と同時に降り出した雨は、深夜になっても止む気配がなかった。 雲の上で誰かが雑巾を絞っているような、ぽたぽたと歯切れの悪い降り方だ。どうせなら、ガソリンスタ…

『ギムレットには早すぎて(1)』

【1】 夜の電話は、悪い知らせだ。 三十年もこの仕事をしていれば、その程度の勘は働く。眼を開けると、カーテンの隙間から漏れた光が天井に縞模様を描いていた。携帯電話の赤と緑が点滅している。バイブレーションのくぐもった音が、枕元で急き立てる。液…

知識ゼロから学ぶ簿記のきほん(4)/カオル先輩のこたえ

※中高生・就活生・簿記を勉強しないまま大人になってしまった社会人の方に向けた記事です! ※間違い等お気づきの点があればご教授ください。 第1回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん/おこづかい帳と簿記はなにが違うのか 前回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん…

知識ゼロから学ぶ簿記のきほん(3)/売掛金のゆくえ

※中高生・就活生・簿記を勉強しないまま大人になってしまった社会人の方に向けた記事です! ※間違い等お気づきの点があればご教授ください。 第1回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん/おこづかい帳と簿記はなにが違うのか 前回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん…

知識ゼロから学ぶ簿記のきほん(2)/掛け取引ってなんだ!?

※中高生・就活生・簿記を勉強しないまま大人になってしまった社会人の方に向けた記事です! ※間違い等お気づきの点があればご教授ください。 前回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん/おこづかい帳と簿記はなにが違うのか 次回:知識ゼロから学ぶ簿記のきほん(…

『雨のふる日は』

『雨のふる日は』 ――おぉー、ひさしぶり! ううん、へーき。あたしも今ついたトコだよ。とりあえず注文だけしちゃおうか。あたしは……カフェラテでいいや。アヤは? うん……わかった、カプチーノね。――すいませーん、注文お願いします! 雨、だいぶ強くなって…

知識ゼロから学ぶ簿記のきほん/おこづかい帳と簿記はなにが違うのか

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); ※中高生・就活生・簿記を勉強しないまま大人になってしまった社会人の方に向けた記事です! ※間違い等お気づきの点があればご教授ください。 前編的なもの:知識ゼロから学ぶオリンパス事件/損失隠しの…

狼少年をころしたら/おとぎ話のリテラシー

※一部に残虐描写があります。 『狼少年をころしたら』 かみそりのような三日月の輝く夜でした。 村の酒場にどなり声が響きます。 「――デマこいてんじゃねえ!」 椅子が倒れ、ゴブレットが宙を舞いました。ワインを頭から浴びて、男の子は言い返します。 「嘘…

『空のかなたで菩提樹が』

――――我々はただ願うのみ。 我々は、ただ祈るのみ。 一 ◆ 現在(1) 最後の夜だった。 彼はしきりとワインを勧めた。きっと、酔わせたかったのだ。脳みそがぼうっとしているうちに、言いたくないセリフをすべて聞かせてしまおう――そういう魂胆だったのだ。 …

『日燃鳥』

ひもす・どり【日燃鳥】 ①カラスの異称。 ②転じて、火が消えて炭になった様子のたとえ。 ◆ 小学生の頃、教祖になったことがある。 信者はたったの四人、小さな小さな新興宗教だ。当時は霊能力ブームで、テレビでは心霊番組が毎日のように放送されていた。ま…

少女とSF/『マルドゥック・スクランブル』に見る「戦闘美少女」の合理性

戦闘美少女といえば、冲方丁さんだ。 あんまり読んだことがないので知らないのだけど、世間そういう事になっているらしい。『マルドゥック・スクランブル』を読んで、「なぜ少女なのか?」という疑問にまた別の答えが見えてきた。 以前のエントリーでは消費…

小説の設計図(1)/「感動」の正体を探る

――二つ折りの恋文が、花の番地を探している。/J.ルナール『博物誌』 小説とは、いったいどんな芸術なのか。それを考察することで、小説の書き方を探ろうというシリーズの第一回目です。(全四回を予定) 今回は、「感動」の正体について考えていきます。 書…

小説の「語り口」を分類する/言葉が作る読者との距離感(?)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 某・小説投稿サイトにて「一人称・三人称」に関する考察を書き込んだ。すでに流れてしまい、その書き込みはもう閲覧できない。参加者の一人から、「もう一度おなじ内容を書いてくれ」との依頼をいただい…

駄作小説からの脱出する(?)ツールを作ってみたよ/インパクトのあるシーンの基本法則

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 小説で大切なのは、書き出しだという。ミステリーなら「冒頭数ページ以内に人を殺せ」と言われるし、ボーイ・ミーツ・ガールなら「最初のページからヒロインを登場させろ」なんて言われている。まあ、ワ…

ストーリー作りの練習問題/自分用メモ

榎本憲男さん(@chimumu)がツイッターでつぶやいていた練習問題 1.「失業だかなんだかとにかく一時的に暇になった主人公に“簡単な仕事だから”という探偵まがいの仕事が舞い込む。当然、簡単なわけはなく、ものすごいことに巻き込まれて行き、最後は世界観…

駄作小説はいかにして作られるか(2)/欠落する「謎→真相」の流れと人物の行動

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 「1200字で小説を書きなさい」という仕事をもらったとする。400字詰めの原稿用紙なら3枚。あなたなら、どんな作品を書くだろう。 素人はこれぐらいの長さの作品をよく書く。学校の文芸部が作ってい…

『ショーシャンクの空に』と『まおゆう』との共通点/ヒーローは小ぢんまりとした事から始める

三幕構成の弱点は、それが「映画のシナリオ」を目的としている点だ。小説の執筆方法に当てはめようとしても、そのままでは上手くいかない。小説と映画との一番の違いは、挫折率にある。よほど退屈な映画でない限り途中退席はしない。が、小説はちょっとでも…

映画『ザ・グリード』で学ぶお話の作り方

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 三幕構成に従えば必ず面白くなる、というわけではない。 しかし面白い物語には、必ず三幕構成の構造がある。 映画『ザ・グリード』を見ながら、改めてそう思った。 ザ・グリード [DVD]出版社/メーカー: …

8つのステップで書く小説/サルでも書ける短編小説篇

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 《短編小説の書き方/実践》 前回の更新では、『とある科学の超電磁砲』の二次創作を行った。「暴力表現が酷すぎる」「萌えが足りない」などの問題を抱えているものの、「目標設定→達成」の流れや、「伏…

藤子・F・不二雄のコトバ

よく「漫画家になりたいなら漫画以外の遊びや恋愛に興じろ」だとか「人並の人生経験に乏しい人は物書きには向いていない」だとか言われますが、私の持っている漫画観は全く逆です。 人はゼロからストーリーを作ろうとする時に「思い出の冷蔵庫」を開けてしま…

そのお話、小説にする価値あるの?/「面白さ」の二面性

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 「面白さは人それぞれ」という言葉、ひじょーに厄介だ。 やっぱり物語を書く以上、読者に「面白い!」と叫んでもらえる作品を書きたい。 確かに、どんな作品を「面白い」と感じるのか個人差がある。けれ…

長編小説を書くための三つの道具

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 小説は敷居の高いメディアだ。 映画やアニメ、マンガの手軽さには敵わない。エンターテインメントに限れば、そういう手軽なメディアのほうが面白いに決まっている。 ならば小説は、どうすれば他のメディ…

駄作小説はいかにして作られるか/読者と作者との埋められない溝

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 《駄作小説はいかにして作られるか/読者と作者との埋められない溝》2010/01/28 書いても書いても、駄作しか生み出せない。友達に読んでもらっても「あ、うん、面白かったよ……ハハハ……」と愛想笑いを返…