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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

『オーバーロード』と『レイアース』とRPG

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 洗濯が終わるまでヒマなので、『オーバーロード』と『魔法騎士レイアース』とJRPGの話をしよう。

 

脳筋ヒロイン

 最近、基礎教養だと思ってアニメ『魔法騎士レイアース』を見ている。第7話まで消化したけど、さすがに面白い。これをリアルタイムに見ていたら、きっと狂ったようにハマっていたと思う。

 今になって『レイアース』を見ると感じるのは、「こいつら脳筋すぎる!」だ。

 3人中2人が前衛、残りの1人はアーチャー。杖やロッドを装備するやつはいない。使う魔法はほぼ攻撃魔法。とにかく攻撃的なパーティだ。

 

 なぜ、少女たち3人はこんなにも攻撃一辺倒のパーティなのだろう?

 たぶん、それはJRPGの歴史と関係がある。

 その昔、RPGはゲーム機で遊ぶものではなかった。紙とペン、サイコロを使って遊ぶものだった。いわゆるテーブルトークRPGの時代だ。

 ボードゲーム『マンション・オブ・マッドネス』等を遊んだ人なら分かるだろうが、テーブルトークRPGでは「役割分担」が非常に重要だ。頭の悪いキャラクターがパズルに挑戦するとロクなことにならないし、射撃の下手なキャラクターが銃を持っていても宝の持ち腐れになる。キャラクターごとの得意・不得意に応じて、それぞれの役割を演じる(ロールプレイする)ことが大切だった。

 コンピューターで遊ぶRPGでも、たとえば『ウィザードリィ』などはテーブルトークRPGの影響を色濃く受けている。盗賊をパーティに入れておかないと宝箱をうまく空けられない。ダンジョンを深く潜るほど新しい状態異常(石化とか)が登場し、特定の職業でしかそれを解除できなかったりする。

 ところが、現代まで続くJRPGの伝統は『ドラゴンクエスト』の影響を強く受けている。そして初代『ドラゴンクエスト』は主人公1人が戦うゲームだったのだ。パーティ制ではないので仲間との役割分担は必要なく(というか不可能で)、主人公1人ですべての問題を解決できるゲームだった。

 ドラクエの伝統を受け継いだ結果、JRPGは役割分担の要素が薄いまま発展していった。

 本家のドラクエシリーズは「酒場で必要な職業の仲間をリクルートする」というテーブルトークRPG型に進化していく。一方、ファイナルファンタジーシリーズは、パーティに入れられる仲間が最初から決まっており、1人のキャラクターが幅広い職業に対応できる仕組みに進化していった。前者はアメリカ企業型、後者は日本企業型の採用制度だと言える。

 

 JRPGでは役割分担の要素が薄い。その結果、何が起こるか?

 戦闘が単調になるのだ。

 

 戦闘中に役割分担をする必要はなく、できるだけレベルをあげて最高火力で殲滅するのが唯一の戦略になる。この単調さを解決するために、魔法に「属性」を加えたり(※水属性の攻撃は火属性の敵に強いとか)、あるいはテイルズシリーズのように思い切ってアクションゲームにしてしまうというアイディアが採用されるようになった。

 

 このようなJRPGの世界観に影響されているため、『魔法騎士レイアース』のヒロイン3人は脳筋パーティなのだろう。レベルを上げて物理で殴りそうな3人である。

 

 役割分担の重要性が希薄になったJRPGに対して、海外のRPGではあまりそうならなかった。らしい。とくにオンラインゲーム(いわゆるMMORPG)は、多数の人間が同時にプレイするという点でテーブルトークRPGによく似ている。その結果、役割分担の重要性が薄まらなかった。

 MMORPGによくあるのは「アタッカー/タンク/ヒーラー」の役割分担だ。

 まずアタッカーはパーティ内で最大火力を叩き出せるキャラクターだ。たとえば攻撃魔法の得意な魔法使いをイメージするといいだろう。高い攻撃力の反面、防御力は紙装甲だったりする。

 そこで「タンク」が必要になる。高い防御力・耐久力を活かして敵を引きつけ、攻撃が後衛に届かないようにする役割だ。

 そして「ヒーラー」はいわずもがな。タンクのHPや魔法使いのMPを回復し、戦線を維持する役割。兵站役である。

 さらに役割分担を複雑にするために、攻撃の「属性」が採用されているケースが多い。また、バフ・デバフの重要性が高いことも特徴と言えるかもしれない。味方キャラクターのステータスを一時的にあげるものがバフ、敵のステータスを下げるものがデバフだ。『ポケモン』でいう「かげぶんしん」や「なきごえ」だ。

 

オーバーロード (1) (カドカワコミックス・エース)

オーバーロード (1) (カドカワコミックス・エース)

 

 

 ところで『オーバーロード』というアニメが面白い。

 2010年からWEB上で連載されていた小説で、書籍化、コミカライズを経て、今年の7月からアニメが放映されている。こちらもゲームの世界を舞台にしたお話なのだが、MMORPGの影響が色濃くて楽しい。

 キャラクターの役割分担は強く、バフ・デバフが非常に重要な世界観になっている。全員ほぼ攻撃役だった『レイアース』とは対照的だ。『オーバーロード』の「ゲームっぽさ」は、『まおゆう』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に比べると、さらにJRPGから離れたものになっている。

 大きなくくりで言えば、『オーバーロード』も『レイアース』も同じ異世界モノだ。しかし、背景にしている文脈(=影響を受けたゲーム)の違いがハッキリと現れていて、とても興味深い。

 

 

レイアースの役割分担とラブライブ

 では、『レイアース』の3人に役割分担は無かったのだろうか? ゲーム的にいえば、たしかに全員が攻撃役だ。風ちゃんが少しだけ補助魔法を使うだけだ。しかし作劇上では、明確な役割分担がなされている。

 私は便宜上、この役割分担を「子父母」型と呼んでいる。女性3人を主人公にする場合に、とても安定する役割分担のようだ。(※もしかしたら脚本の研究家で、もっとふさわしい名前をつけている人がいるかも。ご存じの方がいたらぜひご指南いただきたく)

「子」役のキャラクターは、自分の信念に従って物語を前に動かす役だ。明るく元気で、ときに男勝りな性格の人物がこの役を演じることが多い。

「父」役のキャラクターは、社会規範や常識に従って行動し、「子」の暴走をいさめる役だ。ボケに対するツッコミ役になりがち。性格は、クールやツンデレになる場合が多い。

「母」役のキャラクターは、「子」と「父」の衝突を和ませる役だ。おっとりしたお姉さんタイプがこの役を演じることが多い。物事の本質をずばりとつくセリフを言ったりする。

レイアース』に当てはめると、光が「子」、海が「父」、風が「母」だ。

 

魔法騎士レイアース(1)

魔法騎士レイアース(1)

 

 

 

 これは最近の作品──たとえば『ラブライブ』にも当てはまる。

ラブライブ』は、アイドルユニット「μ's」の9人のお話だ。この9人は、子父母型の3人×3組で構成されている。

 まず主人公たち2年生組でいえば、穂乃果が「子」、海未が「父」、ことりが「母」だ。1年生組は凜が「子」、真姫が「父」、花陽が「母」になる。3年生組はちょっと判断が難しい。希は間違いなく「母」だろうが、にこと絵里のどちらに「子」「父」を割り振るかで悩む。絵里は一見すると「父」型のキャラクターに見える。しかし物語上は率先して廃校決定を覆そうと行動する等、「子」役のような動きを見せる。

 

 

 

「子父母」型の役割分担が当てはまる作品は多い。

 たとえば『アイドルマスターシンデレラガールズ』なら、未央が「子」、凛が「父」、卯月が「母」だといえる。アニメ第20話以降では、凜が別のアイドルユニットへと抜擢されて大波乱の物語になる。父親が家庭放棄した結果、子供も「自分のやりたいこと」に目覚めてしまい、残された母親が1人どん底に落ち込むお話……と、見ることもできる。

 同時期にアニメ化された作品なら、『それが声優!』がこの役割分担を利用している。萌咲いちごが「子」、一ノ瀬双葉が「父」、小花鈴が「母」だ。「子」役はポジティブ思考をすることが多く、「父」役はネガティブな考えを持ちがち。作中でプロデューサーから「話があるんだ」と声をかけられたときに、いちごは「褒められる!」、双葉は「叱られる!」、鈴は「お菓子もらえる」と反応する。これは子父母型のキャラクターの典型的な反応と言っていい。

 古い作品でいうと、『キャッツアイ』の場合は「子父母」型はあまり明白ではない。しかし、ボーイッシュな妹は「子」型に近いし、包容力のある姉は「母」型に似ている。子父母型の萌芽が見られると言えるだろう。ちなみに三姉妹では末っ子がいちばん可愛い異論は認めない。

 ことほどさように、『レイアース』のキャラクターの役割分担は「ド定番」だ。

 女性3人を主人公にすえて物語を組み立てる場合、何も考えずに「子父母」型にぶち込めば、それなりに見栄えのするお話になりそうだ。「女3人いればかしましい」と言うが、その通り、3人のキャラクターがわいわい喋っているだけでお話になってしまうのだ。ファンが二次創作を妄想しやすいという利点もある。

 二次創作の妄想のしやすさといえば、『アイドルマスターシンデレラガールズ』は本編TVアニメをシリアスなお話にしたことで、むしろ成功したと感じている。

 正直なところ不思議だったのだ。『きんモザ』や『ごちうさ』のような日常系を求めているファンも多いはずなのに、なぜ、そういうファンを切り捨てるような重たいストーリーにしたのだろう、と。

 けれど、Twitterピクシブを眺めれば、日常系4コマの二次創作があふれている。『デレマス』は本編を重たいお話にしたことで、欲求不満になったファンの創作意欲が爆発、SNSで二次創作が拡散されるようになった。CGMを利用したプロモーションとしては成功と言っていいだろう。結果論かもしれないけど。

 

 今の時代は、『レイアース』のころよりも、さらに二次創作のハードルが低くなった。SNSを介してコンテンツをプロモーションするには、これまで以上に「妄想のしやすさ」「妄想したくなる仕組み」に気を配るといいかもしれない。

 

 と、洗濯が終わった。まだ言いたいことはあるけれど、ここで筆を置こう。

オーバーロード』についてあまり語れなくて心残り。 

 

 

 

 ※追記:ゲームやマンガアニメに詳しいおじさまが集まりつつあって怖い。ごめんなさい、知識が足りないのは分かっています。どうか優しくご教授ください><

 

ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版スターター・セット

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マンション・オブ・マッドネス 完全日本語版

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