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▽プロローグ
▽第1話「フライド・コカトリス」
▽第2話「ガバメント・オブリゲーション」
▽第3話「リテラシー」
▽第4話「ウェル・シェイプト・カップ」
▽第5話「プライス・オブ・ライフ」
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黒エルフ「どう?約束は果たしたわ」 女騎士「ああ…どう感謝したらいいか…」 黒エルフ「別に。できて当然のことをしたまでよ」 女騎士「しかしお前は、商売に絶対はないと──」
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黒エルフ「言ったでしょう、全力を尽くすって。正しい帳簿さえあれば、あたしは世界だって救ってみせる」
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▼再び、銀行家の邸宅──。 銀行家「そうでしたか。リードタイムを短く、機会損失を減らして…」 女騎士「もちろん、1種類の商品に依存するのはリスクも大きい」 銀行家「たとえばミノタウロスのように入荷できなくなったら危険ですね。鳥肉は病気に弱いと聞いています」
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女騎士「経営が安定したら、リスクを分散するために肉の種類を増やしたほうがいいかもしれない。あの肉屋が鳥肉を選んだのは最善の一手だとは思う。しかし、唯一の手ではないだろう」 銀行家「それでも、女騎士さんには感謝しています。…銀行業をしていると、時々うしろめたさを感じるのです」
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女騎士「うしろめたさ?」 銀行家「精霊教会の教えでは、お金を貸して利子で儲けるのは悪徳とされています。家業を継ぐまで、私も同じ考えでした。…けれど今は違います。お金を貸すことで、誰かを豊かにできると思うのです。恫喝や暴力でカネを回収することが銀行の仕事だとは思いたくないのです」
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銀行家「困っている人に手をさしのべて、ともに豊かになる方法を探ること。それが銀行業の本分だと思っています。今回、女騎士さんは私の理想を実現してくれました。感謝しています」 女騎士「いいや、私は本当に何も…」 銀行家「感謝のしるしに贈り物をしたいのですが、よろしいですか?」
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女騎士「その包みは…!」 銀行家「はい!帝都の老練工房に作らせた品です。女騎士さんを驚かせたくて、何を注文したのかは秘密にしていました」 女騎士「…まさか指輪ではあるまいな」 銀行家「指輪?」 女騎士「いや、何でもない。こっちの話だ」
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女騎士「…これは?」 銀行家「はるか南方の『華国』で使われている計算器具です。『そろばん』と言います」 女騎士「アバカスのようなものか」 銀行家「ただのそろばんではありませんよ。特別な材料と術式を使った、『絶対に計算を間違えないそろばん』です。ぜひ、女騎士さんにお渡ししたい」
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女騎士「ありがとう」 銀行家「喜んでいただけて光栄です!」 女騎士「だが、この『そろばん』を受け取るわけにはいかない」 銀行家「?」 女騎士「この品の持ち主として、私よりもふさわしい人がいるからだ」 銀行家「はて?どなたでしょう」
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女騎士「もういいぞ、部屋に入ってくれ!」 女騎士「紹介しよう。こちらが私の友人の──」
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▼帝都──。 財務大臣「国王さま!まだ起きておいでだったのですか?」 ショタ王「ぼくは王さまだぞ、子供扱いするな!」 財務大臣「いいえ、ちょうどようございました。国王さまに折り入ってご相談があります。魔国との戦争の件でして…」 ショタ王「ふむ、いいだろう。聞かせてくれ」
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財務大臣「勇者どのが魔国に潜伏して、はやふた月が経とうとしています。連絡は途絶えたまま、安否は分かりません」 ショタ王「知ってるよ。魔王を倒す準備をしているんだろ?」 財務大臣「もしかしたら潜伏がバレて、敵の手にかかったのやもしれません」 ショタ王「あはは!まさか勇者さんが?」
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財務大臣「お言葉ですが国王さま、魔族たちの狡猾さはご存じのはず。いかに勇者どのと言えど、卑劣きわまりない罠を仕掛けられたら…」 ショタ王「……」 財務大臣「このまま勇者どのに任せきりにしていては、魔国の横暴を許し、副都の悪夢が再来するやもしれません」 ショタ王「おのれ、魔国め…」
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財務大臣「そこでご相談なのですが…今こそ大軍を組織して、魔国に攻め入るべきではありませんか?」 ショタ王「勇者さまは?」 財務大臣「勇者どのが生きておられたとして…我らの軍が敵の注意を引きつければ、魔国内で活動しやすくなるはずです!」 ショタ王「なるほど!では、今すぐ準備せよ!」
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財務大臣「そのお言葉を待っておりました。つきましては、こちらの書類にご署名をお願いいたします」 ショタ王「任せておけ!署名などすぐに済ませて…」 ショタ王「……」 財務大臣「どうなさいました?」 ショタ王「これは、国債の発行許可のようだな」 財務大臣「さようでございますが…?」
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ショタ王「乳母が言っておったぞ。今の人間国は借金まみれだと。治世のために…軍備や街道の整備に使うカネよりも、国債の利息払いに充てるカネのほうが多いというのは本当か?」 財務大臣「国王さま!軍を動かすには人が必要です。そして人を動かすにはカネが必要なのです。どうか国債の発行許可を」
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ショタ王「質問に答えろ!借金の返済でこの国が火の車というのは本当なのか?」 財務大臣「そ、それは…」 ショタ王「そうだ、帳簿だ!商売人や銀行家は『帳簿』というものをつけてカネを管理すると聞く。この国の帳簿をぼくに見せろ!」 財務大臣「…恐れながら、それはできかねます」
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財務大臣「精霊教会の教えにもあるとおり、カネは卑しく、穢れた存在です。国王さまのように高貴な身分の方がカネのことなど考えてはなりません」 ショタ王「それは…そうかも、だが…」 財務大臣「不安になるお気持ちはお察しいたします。しかし、ならば戦争に勝てばいいのです」 ショタ王「!」
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財務大臣「魔国を討ち滅ぼし、あの広大な領土を手に入れれば、借金などすぐに返せます」 財務大臣「心中お察しいたします。しかし借金があるかぎり、魔国に勝利するしかありません。勝利するまで、この戦争はやめられないのです」 財務大臣「…さあ、国債の発行許可にどうかご署名を」
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ショタ王「…わ、分かった。勝てばいいのだな。勝つために必要な出費なのだな」 財務大臣「もちろんでございます」 ショタ王 サラサラ… ショタ王「受け取れ!」
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財務大臣「ありがたき幸せにぞんじます」 ショタ王「なあ、財務大臣。やっぱりぼくは、この国の帳簿を…」 財務大臣「いけません。カネに気を取られていては、勝てる戦争も勝てなくなります」 財務大臣「どんなに正しい帳簿でも、世界を救うことはできませんよ──」
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『女騎士、経理になる。』 フライド・コカトリス編 ▼▼▼おしまい▼▼▼
— Rootport(※減量中) (@rootport) 2015, 7月 17
※『女騎士、経理になる。』がコミカライズされました!
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