デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

新入社員に嫌われる人の特徴

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1.人生訓を垂れる。
新入社員に対して、人生訓を垂れるべきではない。
あなたの教訓は、十中八九、退屈だからだ。
教訓とは人生のノウハウのことをいう。これには大きく分けて3種類ある。
まず、どんな時代のどんな人にでも当てはまる人類共通のノウハウ。たとえば子供のあやし方や、体調が悪いときの対策がこれにあたる。誰が聞いてもそれなりに役に立つので、退屈にはなりづらい。
また人類共通とまではいかないが、ある時代のある分野の人には普遍的に当てはまるノウハウがある。そういう人生訓も、場合によっては退屈にならない可能性がある。
たとえば貨幣制度のある時代を生きている限り、金融機関の活用法は役に立つ知識だ。また一部のビジネスマナーなども、このタイプの教訓と言っていいだろう。しかし時代が変われば話は別だ。たとえばバブル時代に青春を謳歌した人の恋愛ノウハウは、新入社員にとって退屈きわまりないものだろう。なぜなら時代が違いすぎるからだ。
最後に、ある人の個人的な経験にしか当てはまらないノウハウがある。
このタイプの人生訓は、いつ誰が聞いても退屈である。新入社員はまだ緊張しているので、表面的には目を輝かせて耳を傾けてくれるかもしれない。しかし内心では、年下に偉そうに講釈を垂れる人物の底の浅さを見抜いているはずだ。個人的経験にもとづく人生訓は、他の人にとってはクソの役にも立たない。
問題は、これら3つの人生訓を見分けるのが難しいことだ。
聞いている相手はすぐに気づくのだが、喋っている本人には区別がつかない。1つの人生訓のなかに、3つの要素が混ざり合っていることもある。だから人生訓を説教するのは避けたほうが無難なのだ。
人は誰でも「人生を通じて発見した真理」を語りたい欲求を持っている。そういうものはブログに書けばいいのであって、立場が下の人間に向かって無理やり聞かせるものではない。


だから、みんなブログ書こうぜ。





2.ダサいことをする。
将来、この人みたいになりたい──。
そう思える先輩社員がいるのなら、あなたは幸せだ。
仕事とは収入を得る手段のみならず、社会参加の喜びや、自己実現のチャンスを与えてくれるものだ。だからこそ「この人と一緒に働きたい」と感じられる先輩社員がいなければ、仕事は色あせたものになる。将来の目標にできるような先輩社員がいなければ、仕事はただカネを得るだけの行為になり下がる。業務へのモチベーションが下がり、技能を習得する意欲もそがれるだろう。これは本人にとっても会社にとっても、社会全体にとっても損失である。
だから先輩社員はカッコよくなければいけないのだ。
後輩社員に惚れられるような人物でなければならないのだ。
これは先日書いた「意識高い系」が嫌いだという話につながる。有言実行とは行動する前に目標を明かすことを言うのであって、何かをした後に自分の努力を自慢することではない。「俺はこんなに頑張った」「だからみんなも頑張れ」と意識高い系の人は言う。が、これはすさまじくダサい。なぜなら、努力したことそのものを褒めてもらいたがっているからだ。小学生か。


「若作りうつ」社会 (講談社現代新書)

「若作りうつ」社会 (講談社現代新書)


シロクマ先生こと精神科医の熊代亨先生は、『「若作りうつ」社会』という著作で、現代人の精神性はマンションで暮らす核家族の濃密な母子関係のなかで育まれるのではないかと指摘している。
高度成長期以降に登場したニュータウン型の核家族では、父親は仕事のため不在がちになり、また地域のご隠居などの多様な年代の人と接する機会にも乏しい。そういう生活空間では、どうしても母子の関係が濃密になり、母親の価値観が強く子供に刷り込まれるというのだ。現在では男女を問わず「カワイイ」に価値を置く人が増えた。が、その背後には母親からの影響があると熊代先生は指摘している。
同じことが「意識高い系」にも言える。
努力を褒めてくれるのは、母親である。仕事の成果だけでは承認を満たすことができず、努力にまで他人からの承認を求める。これは母親に対する子供の欲求そのものだ。「俺はこんなに努力している」と誇る意識高い系の人が目に付くようになった背後にも、母子関係が濃密になった社会状況があるのかもしれない。
沈黙は金、雄弁は銀だ。努力は語るものではないし、表面上は何も苦労していないようにふるまうほうがカッコいい。クジャクの羽根はハデなほうがモテるが、これは生命力の強さを示しているから──外敵に見つかりやすい姿をしているにも関わらず生存できることがカッコいいからだと言われている。「俺はこんなに敵に襲われやすい姿だけど、別に苦労とかしていませんよ?」と虚勢を張っているわけだ。私たちはもっとカッコつけるべきだし、クジャクの虚勢を見習うべきだ。
仕事は、まず収入の手段だ。
そして社会参加の手段であり、自己実現の手段でもある。
だからこそ新入社員は「この人のようになりたい」と思える先輩を探すべきだし、もしもあなたが先輩の立場ならば、後輩から惚れられるような人物になるべきだ。




3.話を聞かない。
どんな名言・金言を語り聞かせても、相手の心を掴めるとは限らない。しかしヒトは自分の話を聞いてもらえると、あっさりと心を許してしまう。教化は懺悔室の中で行われるのだ。


行きつけのスタバのマネージャーがすごかったという話


上記は、このブログでも飛び抜けてロングセラーな記事だ。投稿から2年以上たっているにも関わらず、今でもアクセス数が落ちない。おそらく繰り返し読まれ、シェアされているからだろう。
記事の内容は、スタバのマネージャーがバイトを面接する様子をレポートしたものだ。そのマネージャーは店の運営方針や目標意識を語り聞かせるのではなく、適切な質問を投げて、アルバイトに喋らせまくっていた。相手の話を傾聴することで、その人の心を陥落させていた。
自分の話ばかりをして、相手の話を聞かない人は嫌われる。
これは、わりと普遍的な対人関係の法則だろう。
しかし新入社員たちは素朴で純粋だ。先輩の話を聞かなければならないと信じているので、表面上はありがたく拝聴しているふりをしてしまう。だから先輩たちも、つい偉そうに自分の話をしてしまうのだ。
立場の弱い相手と会話するときほど、できるだけ相手の話を聞くようにするべきだ。自分ばかりが喋りすぎていないか注意を払うといいだろう。




新入社員に嫌われたくないのなら、人生訓を垂れるのは避けたほうがいい。カッコよく見えるように虚勢を張ったほうがいいし、できるだけ相手に興味を持って話を聞くといい。
とはいえ、新入社員に好かれる必要があるとは限らない。嫌われても構わないと開き直ったうえで人間関係を構築する選択肢もあるだろう。
しかし私の個人的嗜好から言えば、先輩には魅力的な人物であって欲しい。
底の浅い教訓で人間性の薄っぺらさを見せないで欲しい。努力しているそぶりも見せず、涼しい顔ですさまじい成果を出して欲しい。この人と一緒に働きたい、この人のようになりたいと思わせて欲しい。困ったときに話を聞いてくれる。悩んだときに頼りにできる。そんな人であって欲しい。
就職すれば1日の1/3以上を職場で過ごすのだ。どうせなら、一緒に働くことがしあわせだと感じられる人間関係を作りたい。




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