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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

違法行為を見つけたときに考えるべきこと。

冗語
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年末年始の話だ。
コミケで販売された同人誌が翌日には違法アップロードされ、コミケ会場での販売部数よりも多くダウンロードされてしまったという。この事態にショックを受けた作者が断筆を宣言し、話題になった。
誰かの創作意欲を潰すなんて違法アップロード許すまじ──。私が見た範囲では違法行為へのバッシングが多く、ここに秘められたチャンスや商機について触れたものは少なかった。
たとえ違法であれ「ダウンロードされた」という事実は、作者が価値あるモノを作っている証拠だ。もしも作品が無価値なら、たとえ無料だろうと誰もダウンロードしない。違法アップロードに使われたサイトやツールをうまく利用すれば、次回以降のコミケで販売部数を伸ばすことができる──少なくとも、その可能性がある。
もちろん私は、違法アップロードを擁護するつもりはない。ただ、目の前の好機を見逃して筆を折ってしまうのは、あまりにももったいないと思うのだ。



     ◆



イギリスのヘヴィメタルバンド「アイアン・メイデン」は、長年、楽曲の違法ダウンロードに悩まされていた。詳しく調べてみると、彼らの曲がたくさん違法ダウンロードされているのは南米だと分かった。そこで彼らは違法行為の撲滅を目指すのではなく、南米でライブツアーをすることにした。結果、大成功。莫大な収益を得られた。
また、こんな話を聞いたこともある。
数十年前のベトナムでは、リーバイス・ジーンズのニセモノが大量に出回っていたそうだ。本物と見まがうほど品質の良いジーンズだったという。日本企業なら海賊版の撲滅に乗り出しそうなところだが、リーバイス本社はニセモノ工場を自社に吸収し、アジアでの生産拠点にしてしまったらしい。(※ただしこの話はソースを見つけられなかったので信憑性は低い。ただの都市伝説かもしれない)
さらに歴史を遡ろう。
17世紀のスコットランド、農民たちは麦に対する重税から逃れるために密造酒を作っていた。それが現在のウイスキーの原点だ。もしも「違法だから」という理由でスコットランド人が酒造りをやめていたら、いまの私たちはとろけるような美酒を味わえなかった。
新しいアイディアや価値は、しばしば既存の常識やルールからはみ出したところに生まれる。だから、もしも違法なモノが流行るとしたら、ただ目くじらを立てるだけではなく、そこにチャンスを探すべきだ。流行った理由をきちんと考えれば、新しい価値の源泉が見つかるはずだ。



なぜ違法アップロードされた同人誌は、たくさんダウンロードされたのだろう。
無料だったからだろうか?
多くのクリエイターが個人ホームページに無料作品を掲載しているが、よほどの人気作家でもないかぎりダウンロード数は微々たるものだ。なぜなら、個人ホームページはそもそもPV数が少ないからだ。
コミケの来場者数は1日あたり約18万人だったという。だが、自分のスペースの前を通りすがった人は何人いるだろう。大手の壁サークルでも数万人だろうし、小さな島中スペースなら1万人程度、同人誌の表紙に注目してくれた人はせいぜい数千人ぐらいではないだろうか。(※もしもきちんと調べたデータがあればどなたか教えてください)
ところが「数千PV」という数字は、ネット上では珍しくない。
ちょっと人気のあるサイトなら1時間もかからずに達成できる数字だ。つまり、違法アップロードされた同人誌がたくさんダウンロードされた理由は明らかだ。違法アップロードに使われたサイトやツールの利用者数が、コミケ会場よりも多かっただけだ。
ネット上においてPV数は力であり、金銭的な取引の対象になる。たとえばバナー広告の場合、1PV=0.1円だと言われているらしい。月間100万PVのページにバナー広告を出そうとすれば約10万円かかるそうだ。ソースはYahoo!知恵袋だ。
ところがトラフィックの多い違法サイトをうまく利用すれば、ふつうなら何万円もかかるような広告を無料で行えるはずだ。違法ダウンロードを見て筆を折るなんてとんでもない。目の前に転がっているチャンスを、みすみす見逃しているだけだ。



     ◆



繰り返しになるが、私は違法アップロードを擁護するつもりはない。違法行為を奨励する意図もない。ただ、違法アップロードを理由に創作意欲を奪われるのは、あまりにももったいないと言いたい。
無価値な作品は、たとえ無料だろうと誰も欲しがらない。違法だとしても「ダウンロードされた」という事実は、価値ある作品だという証拠だ。作者が新しいものを生み出す力の持ち主だという証拠だ。
違法アップロードをする人間は、新しいものを生み出しているわけではない。誰かに作ってもらったものを、ただコピーしているだけだ。
創意工夫を重ねないかぎり、コピーはオリジナルに勝てない。そして創意工夫を重ねたコピーは、もはや新たなオリジナルであって、コピーとは呼べない。アイアン・メイデンの違法コピー楽曲は、しかしライブという圧倒的にオリジナルな体験には勝てなかった。コピーはオリジナルに勝てない。
ただのコピーは、絶対にオリジナルを超えられない。
自分がオリジナルであることに、胸を張っていいと思う。







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