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デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

世界を「よく」するためにできる最も重要なこと/2013年の始めに思うこと

冗語
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ヒトはうつろいやすい生き物だ。
今夜も街は明々としたイルミネーションに彩られ、道行く人の心を和ませるのだろう。震災直後には「節電」が声高に叫ばれ、電気をムダづかいする人間には罵倒と糾弾が寄せられていた。私たちは、のど元をすぎれば熱さを忘れるようにできている。


ヒトは気分で動く。これだけ生活習慣病の恐怖が語られていながら、コンビニは人々の空腹を満たすための食糧で満たされている。VHSビデオの、テレビ電話の、インターネットの普及をうながしたのはアダルト産業だ。Twitterで炎上物件を見かけたら、寄ってたかって叩きつぶさずにはいられない。自分よりもかんたんな仕事で高いカネを受け取っている人を見かけたら、嫉妬の炎を燃やさずにはいられない。
ヒトは欲深く、思慮が浅く、反省しない生き物だ。
だから、頭のいい人たちは世を憂う。
一言目に「いまの世界はダメである」といい、
二言目に「世界はこうあるべきだ」という。
そして三言目に、理想を実現する方法を語り始める。
強いリーダーを求めたり、仮想敵に呪詛をぶつけたり、愚かな民衆に反省をうながしたりする。似たような場面を、飽きるほど目にしてきた。


私は、あまり頭がよくない。
だから、仮に「いまの世界はダメである」と分かっていたとしても、「世界はこうあるべきだ」とは叫べない。せいぜい「世界はこうなるだろう」と予想するのが関の山で、理想の世界を掲げることなどできない。「いまの世界」という全体の分析をしながら、ひとりの人間としての個別の理想を掲げるのが精一杯だ。
頭のいい人たちは言葉が上手いから、耳にした瞬間は私たちもその気になる。その人の言葉にしたがえば、まちがいなく世界が変わるような気分になる。だけど、しばらく経つと熱が冷めてしまう。頭のいい人の理想がなかなか実現しないことにしびれを切らし、“愚かな”私たちは別の新しい“頭のいい人”を求め始める。
ヒトはうつろいやすいのだ。
1年前のあなたを思い出してほしい。いまのあなたとは“違う部分”がたくさんあるだろう。いまのあなたは、1年前のあなたとは違うだろう。いい変化をしているだろうか、それとも立ち止まっているだろうか。
人はうつろいやすい。いい変化のことを、成長と呼ぶ。
それは、わずかな成長かもしれない。つまらない変化かも知れない。
たとえば1年前の私は、「標高」と「海抜」の違いを知らなかった。インドネシア共和国の標語が「多様性の中の統一(Bhinneka tunggal ika)」であることを知らなかった。バンカーヒルの戦いで「敵の目の白い部分が見えるまで撃つな」という指令が下されたことを知らなかった。誰かにとって常識的なものごとを、1年前の私は知らなかった。
私はあまり頭がよくない。けれど1年前よりはマシになった。
社会とは、ヒトの集合である。中国人がいっせいにジャンプすればブラジルで地震が起きる――というジョークがあるように、一人ひとりはわずかな影響力しか持たなくても、それが累積すれば大きな変化に発展する。たしかに私ひとりが1年前よりマシになったところで、世界にはなんの影響もないだろう。しかし私たち一人ひとりが1年前よりマシになれば、社会はまちがいなく1年前よりマシになる。あなたが変われば、世界は変わる。ただ、結果が出るまでに時間がかかるだけなのだ。
今年はどんな新しいものごとを学べるだろう。
今年はどんな新しい経験ができるだろう。
1年後の私たちは、いまより“マシ”になっているだろうか。



新年、明けましておめでとうございます。
いい1年にしよう。








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