デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

インプットがすべて/知的な生き方をするには?

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最近、研究者のブログが面白い。
とくに尊敬しているのは「蝉コロン」さんで、最新の科学論文を面白おかしく噛み砕いて紹介してくださる。ああいう知的な生き方には憧れる。ブログランキングサイトTophatenarによるとブックマーク総数が弊ブログと肉薄しているため、私は勝手にライバル視している。ツイッター等でもたびたびラブコールを送っているのだけど反応なし。向こうからすれば私なんて歯牙にもかからないのだ――と膝をがっくりと落とし、こぶしを地面に打ち付ける日々だ。知的な生き方を目指して痴態をさらしている。閑話休題


蝉コロン
http://d.hatena.ne.jp/semi_colon/


ともかく、科学的知識は人類の共有財産だ。
であるからには、あらゆる人が簡単にその知見を入手できなければならない。この「簡単に」というのがクセ者で、専門知識を噛み砕いて説明できる人材は、じつはあまり多くない。専門外の人からすると、難しくて退屈なモノに見えてしまう。ご本人がどこまで意識なさっているかは分からないけれど、蝉コロンさんのブログの社会的意義はめちゃくちゃ大きいのだ。
大学研究者でブログをやっていらっしゃる方はたくさんいる。有名なところでは「5号館のつぶやき」さんとか、「生駒日記」さんだろうか。ペーパー出すだけが科学者の仕事じゃなくて、理系知識を身近なものにすることも大切な活動だと(僭越ながら)私は思うのです。


おすすめブログがいっぱい

むしブロ+
http://d.hatena.ne.jp/horikawad/
※あふれるクマムシ愛におなかいっぱいになれる。



砂漠のリアルムシキング
http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno/
※砂漠の昆虫戦士




       ◆




あれは高校一年生の、いちばん最初の「生物」の授業だった。
この授業を担当していたのは「モトヤン」というあだ名の先生で、それはそれは特徴的な外見をしていた。どういう外見なのかはご想像にお任せする。モトヤン先生は手ぶらでフラフラと教室に入ると、何も書かれていない黒板をバンッと叩いた。
突然のことに、私たち生徒はぽかんと口を開ける。
黒板をなでながらモトヤンは続けた。
「この黒板が、この宇宙にあるすべての知識だとする」
いつもなら私語を慎まない女子軍勢も(なんだなんだ)と教壇に目を向ける。
モトヤンはおもむろにチョークを取ると、黒板の真ん中あたりにこぶし大の円を書いた。
「これが、私たち人類の持っているすべての知識だ」
大きな黒板に対して、あまりにも小さな円だ。解っていることよりも、まだ解らないことのほうが多いんだよ――とモトヤンは続け、円のなかに小さな点を打った。小指の先にも満たないような、小さな小さな点。
「これが、君たちが今から3年間で学ぶ知識だ。生物だけじゃない、国語、英語、数学に社会。あらゆる科目の知識を足しても、この程度にしかならない。君たちが学ぶのは、過去に他の誰かが見つけた知識だ。だけど――」
モトヤンは私たちの方に向き直り、生徒一人ひとりの顔を見つめた。
「勉強を続ければ、この点を大きくしていける。“ここから先は分からない”という境界線までたどり着ける。まだ誰も知らないこの世界の真実に、手を伸ばせるんだ」
いま思えば厨二病全開のセリフだ。けれどモトヤンは恥じるそぶりなど見せず、堂々と言い切った。
「だから、勉強しなさい」




       ◆




知的に生きるというコトは、たぶん、自らの無知を認識することだ。
研究者たちは、日常的に「まだ誰も知らない暗闇」に手を伸ばしている。だから誰よりも自分の無知、人類の無知を認識している。研究者たちが謙虚で、なおかつ飛びっきり知的なのは、そういう生き方をしているからだ。
今さら研究者にはなれないけれど、彼らのそういう謙虚さは学びたい。新しい知識に感動できるのは、無知を自覚している人だけだ。そして無知への自覚は、アウトプットの質を大きく左右する。自分の知識が万全だと思っている人は、その知識を切り売りするしかない。いつかは貯金がなくなって、何もアウトプットできなくなる。
蝉コロンさんの記事が面白いのは、新鮮な知識に裏打ちされているからだ。ツイッターで「アルファ」と呼ばれる人たちのつぶやきが注目されるのは、新鮮な出会いに支えられているからだ。新鮮な情報に貪欲な人たちだから、新鮮なアウトプットができる。
だから私も、無知を自覚しよう。
たくさん感動して、たくさん驚いて、人生を楽しむために。
インプットがすべてだ。



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※究極の答えは42。