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あなたはなぜいつまでも「ブサイク」なのか/美女と山本五十六

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東京から関西方面に転勤してきた友人(♂)が嘆いていた。いわく「関西には可愛い女の子があまりいない」のだとか。失礼千万なヤツである。「おめーヒトのこと言える顔してねーだろ!」と言い返してやった。
しかし確かに関西の女の子は、東京にくらべていまいちアカ抜けない子が多い――ような気がする。それはそれで素朴で可愛らしいと私は思うのだけど、友人の目には「ダサい」としか映らなかったようだ。


一般に、都会に出るほど人々のファッションは洗練され、田舎に行くほど素朴になると言われている。その原因は、都市部と郊外との情報格差にあると言われてきた。都会では最新の流行をキャッチできるけれど、田舎ではそうはいかない。だからオシャレをしたいなら都会に出るしかない――と。


しかし、である。


現在は情報のフラット化が進む時代だ。
雑誌に頼らなくても東京の人々の様子を知ることはできるし(facebook万歳!)、欲しいものがあればアマゾンでワンクリックだ。そもそも大手ブランドは日本全国の百貨店にテナントしており、リソースという観点で決定的な差は無い。(たしかに“東京じゃないと買えないもの”が無いわけじゃない。けれど手に入らない“数点の”アイテムが大きな差になるとは考えづらい)
では、なぜ情報化の進んだ現代でも「東京はアカ抜けている」と言われるのだろうか。
誤解を恐れずに言えば、なぜ「関西の女の子はダサい」のだろう。



やってみせ、言って聞かせて、させて見せ、ほめてやらねば、人は動かじ



これは旧日本帝国海軍元帥・山本五十六の超有名なセリフだが、ヒトの美醜についてもたぶん同じことが当てはまる。
SNSやテレビで「アカ抜けた人を見る」ことが「やってみせ」に相当するし、「雑誌やファッションサイトのTipsを読む」ことが「言って聞かせて」に該当する。と、いうことは、「させてみて」に当てはまるのは服飾店での試着や化粧の試用だ。
いまの時代、ここまでは東京と関西とで大きな差はない。



違いがあるとすれば最後の一つ:「褒めてやらねば」の部分だ。



数年前に京都に出てきた私は、関西の男たちがぜんぜん女の子を褒めないことに驚かされた。というか、全体的に女性の扱い方が雑だ。たとえば重い荷物を持たせないとか、ドアを開けてあげて先に通すとか、レジに同時に並びそうになったら女性を優先するとか――そういう日常レベルでの行動の一つひとつに気遣いが足りていない。
一般的に「関西では男尊女卑が強い」と言われている。実際にこちらに出てくるまでは都市伝説だと思っていたけれど、俺は男だえらいんだみたいな空気・雰囲気を肌で感じる。関西の男たちは、なんつーか、まぁ、あきれるほど無神経だ。



その真骨頂とも言えるのが、女子に対する「いじり」だろう。



京都に出てきて間もない頃、居酒屋で隣になった学生集団の会話を耳にして、私はビールジョッキを落としそうになった。ブス、デブ、【自主規制】、【検閲削除】――。とてもここには書けないような罵詈雑言が、その場の女性たちに向けられていた。きっとケンカに違いない、さぞかしひどい修羅場になっているのだろう――と、恐るおそる目を向けて、私はさらにのけぞった。和やかな飲み会の光景が広がっていたからだ。男たちはさも楽しげにケタケタと笑っているし、女の子たちも「なんやねん!」とツッコミ返しつつ苦笑いを浮かべている。
私は愕然としながらその光景を眺めていた。なんやねん、これ。。。
後日、この時の学生集団の「いじり」はとくにヒドイものだったと分かった。普通は女性陣をいじるにしても、もう少しマイルドな言葉が並ぶ。とはいえ「いじり」であればどんな暴言でも許されるという風潮は、やはりあまり気持ちのいいものではない。関西の女たちは心が広いね。つーか、なんだよ「お前は顔が交通事故」って。そんな発言をするてめーの根性がリコール対象だ




        ◆




「関西の女の子は東京に比べてダサい」――もしもこれが本当だとしたら、その理由はここにある。自分に似合う服装やメイクは、褒められながら学んでいくものだ。男たちが褒めないから、女の子たちは可愛くなれないのだ。
情報にもリソースにも大差がない以上、ほかに原因を見つけられない。
で、これはなにも女の子に限った話ではない。男だって同じで、褒めてくれる女の子が身近にいないと、どんどんダサくなっていく。だから全国のカノジョのみなさん、カレシをイケメンに育てるのはあなたの役目です。あなたがどれだけカレのことを褒められるかにかかっています。


また、「関西の男は女の子を褒めない」と書いたけれど、これはあくまでも一般的な傾向としての話だ。なかにはきちんと女の子を褒める男もいるし、そういう男たちの集まったコミュニティも存在している。逆もまた真なりで、東京だからといってすべてのコミュニティで女の子がお姫様扱いされるわけではない。異性の外見を褒める頻度は、その人の属する集団によってまちまちだ。
その点、いわゆる「リア充」のグループでは「男女が褒め合う」というサイクルがうまく回っているのだろう。
京都でいえば三条大橋の下で夜ごと大騒ぎしている若者たち。ああいうリア充の集団にはイケメンと美人が揃っていて、なんだかすごく華やかな雰囲気に包まれている。あのコミュニティでは「○○ちゃん綺麗だね」「××くんカッコイイよ」と、ごく自然にお互いを褒めているのだろう。想像したらなぜか腹が立ってきたけど気にしないことにする。
華やかな人が集まってリア充になるのではない。リア充たちは華やかになっていくのだ。




つまり、あなたが本当にキレイに/カッコよくなりたいのなら、あなたを褒めてくれるコミュニティに属するべきだ。




あなたの身近な異性を思い浮べてほしい。
あなたが髪型を変えたときに、その人はちゃんと気づいてくれるだろうか。新しい靴を買ったときに、それを褒めてくれるだろうか。そういう部分で鈍感な人ばかりなら、新しい友だちを作って、人間関係の輪を広げてみたほうがいいだろう。
まして、あなたを侮辱するような人たちばかりなら、そんなヤツらとは関係を切ったほうがいい。さっさと見限ってしまえ。汚い言葉は、あなたの顔も心も汚してしまう。あなたがいつまでもブサイクなのは、友だちに恵まれていないだけだ。付き合う相手を選べば、誰だって自分の魅力を引き出せる。




       ◆ ◆ ◆




たとえ笑いを取るためとはいえ、女の子に向かって「ブス!」と言える神経が信じられない。これは個人的な嗜好だけど、女の子の表情って、いじられたときの苦笑いよりも、褒められたときの照れ照れした顔のほうが可愛いと思うんだよなぁ。
こないだ関西の友だちとバーベキューパーティーをしたときも、めぐみさん(仮名・25歳・彼氏持ち)の扱いが酷くて閉口した。まわりの男たちは冗談のつもりかも知れないが、ブスだなんだとずいぶんな言われようだった。横で聞いていた私は、ガマンしきれずについ口を挟んでしまった。




「あのなー、女の子に向かってそんなセリフはねえだろ。女の子ってのは褒めなくちゃダメだよ。それこそ褒め殺しにするぐらいじゃなくちゃ」
「ええねん、褒めたら調子乗るで」
「ほめるトコなんか無いやろー?」
東京人の私からすれば、なにゆうてんねんって感じだ。
「ほめるトコなんて、いくらでも見つけられるぜ? ほら、まずは今日のサンダル! きらきらしたストーンがついてて可愛いだろ。それにアップにした髪型もイイネ! 涼しげで夏っぽい! ていうか、そもそもめぐみって名前が可愛いよねー。いやいや、そんな謙遜する必要ないから。つーか、めぐたんって呼んでいい? ほら照れるなって! 可愛いじゃん、めぐたん! 最初は恥ずかしいかもしれないけど、すぐに慣れるよ。ほらほらwww めぐたんwww めぐたんwww ワッショイwww ワッショ――」




「すいません話しかけないでもらえますか? あとそれ以上近づかないで















今回のエントリーはわりと「いい話」っぽいことを書いたはずなのにオチで台無しだよorz





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