デマこい!

「デマこいてんじゃねえ!」というブログの移転先です。管理人Rootportのらくがき帳。

冗語

ホームレスを死なすべきではない理由

なぜ私たちの社会は、ホームレスを生かしておかなければならないのでしょうか? あるいは、なぜ私たちの税金は、生活保護受給者のために使われなければならないのでしょうか? テンプレ的説明は、こうでしょう:「将来のことは分からない。あなた自身だって…

MTG Arenaの俺のデッキを見てくれ!

■俺のデッキを見てくれ! というわけで前回の記事では、ヒストリック環境のメタゲームを考察しました。 この環境でオリジナルデッキを握るなら、あの記事に挙げた約20種類のデッキに勝てる必要があります。少なくとも遭遇率の上位のデッキには、勝率5割超を…

『ショーシャンクの空に』と人間の尊厳

ショーシャンクの空に(字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 「歴史上、最高傑作の映画を1つ選ぶとしたら?」 映画が好きだと自己紹介すると、そんな質問を返されることがあります。 これに対する映画オタクの平均的な回答は: 「えーっと、3つ…

『スパイダーマン』は〝人生の岐路〟の映画である

スパイダーマン (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 『スパイダーマン(2002年)』を再見しました。高校生以来です。 マーベルのヒーロー映画としては、もはや〝古典〟の1つに数えてもいいでしょう。ネタバレ全開で感想を書いていきます。ビタ…

映画『ジョーカー』を観る高校生が羨ましい。

映画「ジョーカー (原題)」US版予告 「暴力は正義感の欠如ではなく、むしろその過剰によって起きる」 これは進化心理学者スティーブン・ピンカーが『暴力の人類史』のなかで述べていることだ[1]。世の中の暴力事件の大半で、犯人は最初から「悪いことをやっ…

フミコフミオさんやっぱりすげえやって話

正直なところ、ちょっと困っている。 途方に暮れていると言ってもいい。 フミコフミオさんの新著『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない』の話である。 ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があき…

ニコ動の好きな動画を紹介したら書籍化されて解説を書くことになった話

「会社で褒められちゃいましたよ~」 担当編集者のJさんはホクホクした笑顔で言った。拙著『会計が動かす世界の歴史』の打ち上げの席である。新宿三丁目の小さな店で、ステーキ肉をつついていた。 「褒められた?」 「こんな書き手をどうやって見つけてきた…

少子化の原因を「価値観の変化」とする危険性

日本の合計特殊出生率が途上国水準の4以上から先進国水準の2前後まで落ちたのは第二次世界大戦の直後であり、本格的な経済発展が始まる前であり、高度成長よりも前だった……という基本的なデータを押さえていないと、少子化の議論はとんちんかんなものになり…

なぜこの世界に同性愛者が存在するのか?

// 同性愛者の存在は謎である。 動物は繁殖して、うまく子孫を残せた者だけが生き残ってきたのではないか? であれば、子孫を残せない同性愛者は進化の過程で淘汰されたはずだ。 したがって同性愛がヒトの〝自然な〟行動だとは、にわかに信じがたい。理解の…

「かませ犬キャラ独身END」が苦手という話

女性向けの恋愛映画や恋愛マンガでたまにある「2人のイケメンのうちヒロインに選ばれなかったほうが彼女への想いを胸に独身を貫くことを誓うEND」が苦手だ。彼にもふさわしいお相手を準備してあげてーッ!と身もだえしてしまう。 進化心理学をかじったあと…

児童虐待はヒトの本能なのか?

誤解を恐れずに言えば、児童虐待はヒトの自然な行動の1つだ。虐待の原因は、いわゆる「現代社会の歪み」なるものではないし、加害者の精神病質でもない。だから虐待を犯した親の過去を調べても、さして実りある情報は得られないだろう。問題の立て方が逆なの…

誤報だと信じていた人へ

インターネットで遊んでいたら、こんなコメントを見かけました。 「○○新聞の誤報だ、印象操作だ」と言っていた人ほど政府に対して「裏切られた!」と怒っても良さそうなのに……というコメントです。残念ながら、そんなことになるはずありませんよ。 わりと有…

アニメ『宝石の国』のちょっとキモい感想

小学五年生のころ、『新世紀エヴァンゲリオン』がクラスで流行った。少なくとも第11使徒イロゥルと戦うあたりまでは、単純にロボットアニメとしてドキドキワクワクできる作品だった。私の教室では男子よりも、少しマセた女子のほうが『エヴァ』にハマってい…

いつか、ニコニコ動画がキズナアイに殺される日。

つい先日、バーチャルYouTuberキズナアイの登録者数が100万人を超えた。 彼女は『ときめきメモリアル』の藤崎詩織や、初音ミク、あるいはちゆ12歳の系譜に連なるバーチャルアイドルの1人だ。特筆すべきは、海外での人気が先行したことだろう。動画のコメン…

禁煙が日本をダメにした(?)

※この記事はJTの提供で書かれていません。 新宿西口の個室居酒屋。時刻は22時。酒が回っていた。 「日本企業では、良いアイディアは喫煙所で生まれたんだと思うよ」 マルボロメンソールライトをくわえながらA氏は言った。大学のOBOGで集まっていた。A氏は…

有名な「あの物語」の続き

// ビジネス書などで、しばしば『三人のレンガ職人』という寓話が紹介されます。 ビジネスパーソンなら誰でも知っていて当然の、あまりにも有名な物語です。 ところで、あのお話に続きがあることをご存じでしたか? まずはストーリーをおさらいしましょう。 …

貧乏になる人の特徴

// ■貧乏になる人の特徴 私には、わりと幅広い所得階層の友人がいる。有名大学出身の経営者や金融マンから、ワーキングプアのフリーターまで、様々な階層の人と付き合っている。そして、貧乏な人ほど「自分には運がない」とぼやく。 ところが、詳しく話を聞…

『けものフレンズ』とソシャゲアニメ成功の鉄則

// アニメ『けものフレンズ』が話題だ。 ソシャゲとアニメのメディアミックスは難しく、成功例が少ない。アニメ化でこれほど話題をさらった作品は過去に例がない。また、アニメ放映開始時点でサービス終了しているという点も前代未聞だ。 では、ソシャゲとア…

廃課金ソシャゲはもういやだ/2017年スマホゲーム業界の課題

// ■2017年、スマホゲーム業界の抱えた矛盾 ソーシャルゲームインフォの長谷部潤氏によれば、2016年には「これまでとは全く異なる性質を持ったユーザ層が、スマホゲーム市場に台頭し始め」たという[1]。 2015年までは、イノベーター理論でいうイノベーターや…

お金こそが奴隷を解放したという話

// 現代を生きる私たちは、しばしば「お金に支配されている」と感じる。 お金は、本来なら人間の暮らしを豊かにするために発明されたはずだ。にもかかわらず、お金があるせいで格差が生まれ、人々が苦しめられていると感じてしまう。 さらには、お金を稼ぐこ…

大人なら知っておきたい「世界史」を映画で学ぶ

// 学校の歴史の授業がつまらないのは、2つの理由がある。 第一に、事実の羅列に終始しがちなこと。その時代を生きた人々のドラマを感じることはできないし、「人間社会はどのような仕組みで動くのか」という体系的なメカニズムを学ぶこともできない。 第二…

「自由」は少子化の原因か?

// 日本においては、結婚が遅くなったことが少子化に大きな影響を与えている。そして、結婚が遅くなった理由は「ライフスタイルが多様化したから」と説明されることがある。 論理的には、この命題は正しい。 しかし、少子化を解決するうえでは何の役にも立た…

「8時間労働」は適切な長さか

// 社畜のみなさん、お疲れさま。 今日のあなたの労働時間は何時間だっただろう? ある人は定時退社をキメたことを誇るかもしれない。またある人は、長時間労働を自慢げに語るかもしれない。私たちは、勤勉は美徳だと教え込まれて育つ。身を削って働いていれ…

『ファインディング・ニモ』でお話作りを学ぶ

// 『ファインディング・ニモ』は、脚本の教科書に必ず登場する映画の1つだ。安心・安定のディズニー&ピクサー映画。現代的な「お話作り」の基本がすべて詰め込まれているような作品だ。映画としても文句なしで面白いので、お話を書くことが好きな人は観て…

イギリスのEU離脱とグレート・リセット願望

// 1944年7月、アメリカ・ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズに連合国の代表が集まり、第二次大戦後の世界について議論した。米ドルが国際的な基軸通貨に選ばれたのはこの時だ。当時、偉大なる経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、米ドルではなく、…

ニッチを束ねて市場を作れ/Amazonに勝つ方法

今さらながらクリス・アンダーソン『ロングテール』を読んだ。正直なところ、あまり目新しさは感じなかった。内容が陳腐だからではない、本書の予言がほぼ的中したからだ。小売業界にとってAmazonの登場がいかに革新的だったか。そして、業界をどのように変…

本日発売!『女騎士、経理になる。』ができるまで

// イラストレーターたちの間では、作業工程を公開しあう文化があるらしい。 アマチュア同士はもちろん、プロの「神絵師」がノウハウを伝授してくれる場合もある。こういう協力・共創の関係が、日本の豊かな二次元イラスト文化の源泉かもしれない。 mazikano…

デキる人はみんな使ってる思考の枠組み/ティンバーゲンの4つの「なぜ?」

// 議論をしていて、「あれ?」と感じることはないだろうか。 たとえば「A説があるから、B説は間違いだ」と主張する人がいる。ところが、A説のどのような点がB説よりも優れているのか説明しようとしないし、そもそもA説とB説が同時に成立する可能性も…

ごはんに「ありがとう」と言うと腐らない、だって?

// なぜか科学と道徳は混同されがちだ。 先日、Facebookで「ごはんにありがとうと言う実験」がシェアされてきた。密閉容器2つにごはんを入れて、片方には毎日「ありがとう」と声をかけたそうだ。声をかけなかったごはんはドロドロに腐敗したが、声をかけたご…

ハリウッドのアクション映画と脚本革命

私は映画の感想を書き溜める習慣がある。 その中から、今回は5本の映画の感想をブログに転載したい。 『北北西に進路を取れ』 『リーサル・ウェポン』 『ビバリーヒルズ・コップ』 『クリムゾンタイド』 『ボーン・スプレマシー』 以上の5本だ。 北北西に進…